相続放棄しても管理責任は残る?同居の親亡き後の負動産をどうすべきか?

独自のノウハウにより入居者がいる古いアパートや借地・底地、再建築不可など、他の不動産会社が取り扱いづらい“お困り物件”を解決に導いてきた不動産・用地開発のスペシャリスト、株式会社エスエイアシストがお届けする“お困り物件”コラム、第39回目は「不動産の相続放棄後の管理責任」です。
突然ですが、同居している親御さんと住む実家が、何かしらの問題を抱えている「負」動産だったとき、相続に困ることがあります。そんなとき、頭をよぎるのが受け継がないという選択肢。
でも実は2023年4月に民法が改正され、相続放棄に関するルールが変わったことをご存知でしょうか?それまでの法律では、「相続放棄後の管理責任の対象者が曖昧」との指摘があり、この法改正で責任者が明確にされることになりました。そのポイントは「同居」です。亡くなった被相続人が同居親族だった場合、相続放棄しても管理責任が残ってしまうことから逃れられないかもしれません!
今回の記事では、不動産の相続放棄後の管理責任とは何なのか、その法改正がどう影響するのか、そして、同居の親亡き後の「負」動産をどう活用すべきかについて、できる限り分かりやすく解説していきます。ぜひ最後まで読んでいって下さいね!

お困り物件買取事業

相続放棄しても管理責任は残る?

親が亡くなり、遺産相続の話が持ち上がり、その遺産が万が一利活用が難しい「負」の資産だった場合、「相続放棄」を考慮する人は多いのではないでしょうか?一方で、実際の相続放棄の意味とリスクを正しく理解している人は、意外と少ないものだったりします。

「相続放棄」とは、文字通り、被相続人(亡くなった人)の相続遺産を受け取る権利を放棄することを意味しています。遺産には、預金や有価証券などのプラスの遺産もあれば、借金や税金といった義務などのマイナスの遺産もあります。「プラマイマイナスなら受け継ぎたくない!」ともし考えるなら、その全てを放棄しようとなるワケです。それは、相続が開始されてから(権利を知ってから)3ヶ月以内に家庭裁判所に申し出ることで、正式に相続放棄の手続きを行うことができます。ですので、法的には意思表明だけ(口頭で伝えるのみ)では不十分であることに注意が必要!

そのメリットとしては、プラスというよりマイナスの遺産、高額な借金などを受け継ぐリスクを回避できることです。しかし、デメリットも少なくはなくて、プラスの遺産はもちろん、放棄した遺産がのちに価値が上がったとしても、それを取り戻すことは叶いません。そしてそれによって家族間の感情的な摩擦の原因となることも!いわゆる「相続」ならぬ「争続」ですね。

また、相続放棄したとしても、被相続人の遺産の管理や保存に関する義務や責任、いわゆる「管理責任」は残ります。その管理を怠った結果、他者に何らかの損害が生じた場合、放棄者に対して賠償責任が発生する可能性があります。
今回の記事では、利活用が難しい「負」動産に焦点を合わせているワケですが、放棄して実家を出たのちに、空き家となった家の管理を怠ったことで老朽化が進み、それによって倒壊や周辺環境を悪化などさせることがあれば、当然その責任を追求されることとなります!

2023年4月の民法940条の法改正とは?

その相続放棄による管理責任について、2023年4月の民法改正で気になる変更がありました。

「旧」民法940条第1項:相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない。

要は「相続人は相続放棄しても次の相続人が決まるまで、問題が起こらないように管理してよー!」と言っているワケです。

この法律の問題点は以下の3つ。
①これまで管理に関与していなかった相続人が管理責任を負うべきか?
一つ目として、例えば「相続人が一人のみ」もしくは「相続人が全員相続放棄したのちの最後の一人」となった相続人が、万が一、管理が著しく難しい状況にあったり、これまで長期間にわたってその財産に関わっていなかったり…、ってことがあります。にも関わらず、管理責任を負わせるのは、過剰な負荷なのかもしれません。
②管理責任はいつまでの期間負うのか明らかでない
2つ目として、管理責任を負ったとして、その責任を免れるためには「具体的にどうすればいいのか?」「いつまでの期間負うのか?」といったものが明らかではありません。相続人にしてみれば、「先が見えない闇…」なので、結果的に放置してしまう原因とも言えます。
③財産の利用や処分する権限がないのに「管理」という表現は適切か?
3つ目として、相続放棄した相続人が、財産の利用や処分する権限を持つことを意味する「管理」では、表現として意味が通らず適切なのか?という問題があります。

これらを踏まえて、2023年4月の民法改正では以下のように変わりました。

「改」民法第940条第1項:相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は第952条第1項の相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない。

要は「現に占有する相続人は、相続放棄しても次の相続人(ないし相続財産清算人)が決まるまで、問題が起こらないように現状を保存してよー!」と言っています。

「負」動産において、このことから分かることは以下の3つ。
・その物件を現に占有している(同居)相続人だけに責任を継続して負わせる
・保存義務(ほぼ管理責任と同義)は別の相続人または相続財産清算人(後述します)に対して当該物件を引き渡すまでの間とする
・管理責任(義務)から、次の相続者に引き渡すまでの「保存(義務)」を目的とする

管理責任を免れるための手続きとは?

ということで、曖昧な表現だとされていた内容から、「責任者・期間・責任の定義」について、具体的な表現で明記されたことになります。空き家問題が叫ばれる昨今、その利活用をスムーズにしていきたいという国の思惑が見え隠れしますね!

複数の相続人が存在していたとしても、あなたの同居の親が被相続人という場合、あなたがその家や土地を「現に占有」しているとみなされるため、管理(保存)責任を負わざるを得ない状況です。とは言え、もし他の相続人が相続放棄の手続きをしなければ、その責任はその相続人になるということです。

では、ここまでお話した通り、「現に占有」していて相続放棄したとき(かつその他の相続人全員が相続放棄したとき)、その管理(保存)責任を免れるためには、家庭裁判所に「相続財産清算人」を申し立てることになります。
家庭裁判所に専任された相続財産清算人は、被相続人の債権者に対し債務の精算や、不動産なら売却活動を行い、その後残った財産を国庫に帰属させていきます。
また、その手続きには各種書類を揃える手間と、相続財産清算人への報酬に充てられる20〜100万円程度の「予納金」を支払う必要があります。

ちなみに、「現に占有」する相続人が居らず、その他相続人全てが相続放棄した場合は、債権者などの利害関係者や検察官が、家庭裁判所に相続財産清算人の申し立てを行います。

同居の親亡き後の負動産をどうすべきか?

ここまで踏まえて、あなたはどうするのでしょうか?親が亡くなるその日まで同居して生きてこられた、あなた。他の兄弟や親族が相続放棄するなか、親の積み上げてきた遺産を相続放棄してしまうことに、「親亡き後の不動産を含めた遺産をどうすべきか…?親の思いをどう捉えるべきか…?」迷いが出てきてもおかしくはないと思います。
ですので!最後に「負」動産であっても、相続放棄はせずに相続遺産を少しでもプラスにする方法について、深掘りしていきます。

その方法は以下の通り。
①相続土地国庫帰属制度により「負」動産だけ手放す
はじめに、「相続した土地を手放したい人のための選択肢を増やし、土地の利用を円滑にすること」を目的に、2023年4月にはじまった、相続した「負」動産を有償で国に引き取ってもらう新制度。
ただし、その条件は非常に厳しく、中でも…、
・土地は更地にしなくてはならない
・権利関係がクリアにしなくてはならない
・土地の境界が法的にはっきりさせなくてはならない
・地形や残置物、訴訟トラブルなどによる管理困難にはならない
といったものがあり、それには多額の費用や時間と労力がかかります。
申請から国庫へ帰属までの期間は半年〜1年程度。さらに国に納付する負担金もあります。
②不動産取引サイトを活用して「負」動産だけ手放す
次に、インターネットを通じて、不動産取引サイトを活用します。いわゆる売り手と買い手をマッチングするサービスです。運営方法はサイト毎によって条件は様々ですが、資金の持ち出しが少なく、場合によってはプラスになるかも!
ただし、内見や諸連絡といった手間、個人情報をサイト内にアップしなくてはならないことも多く、その上買い手は見つかりにくいので、活動は半年〜2年といった長期にわたります。
③古戸建て物件として「負」動産を賃貸運営する
さらに、例え「負」動産と言えども、自らのバイタリティで最低限のリフォームを自ら行い、古戸建て物件として賃貸運営する方法もあります。状態にも寄りますが、ファミリー層などに一定のニーズが見込めれば、その価値を見い出せます!
ただし、賃貸運営も自ら行うリフォームも、そう簡単なものではありません。日々の勉強や手間暇をかけるには、片手間では到底収益を望めないかもしれません。
④不動産業者を活用して「負」動産だけ手放す
最後に、不動産業者さんを活用して「負」動産だけ手放す方法です。その方法は二通り。「売却の仲介をしてもらう」か「直接買い取ってもらう」か、です。
不動産仲介業者さんに「負」動産の売却活動をしてもらう場合、市場相場通りの売却が可能かもしれません。ただし、不動産取引サイトを活用する場合と同様で、手間と時間がかかる可能性は高い上、仲介手数料が発生します。まして、不動産売却益から十分は手数料が引っ張れないと判断されれば、取り引きを断られることもあり得ます!
一方、不動産買取業者さんにおいても、「負」動産を買い取った上で、付加価値を付けて転売するにあたり、十分な売買差益が見込めないと判断され、同様に断られることも考えられます。ただ、この点は業者選びがキモになります!土地活用や用地開発に長けた不動産買取業者さんを見つけられれば、買い取りに応じてもらえる場合もあります。

手前どもも、そんな不動産買取業者の一つです。相続前でも後でも、ご相談はいつでもお受けしています!

まとめ

と、ここまで、「不動産の相続放棄後の管理責任とは何なのか」「2023年4月の民法改正がどう影響するのか」「同居の親亡き後の負動産をどう活用すべきか」について、お話ししてきました。

親が亡くなり、その遺産が万が一利活用が難しい「負」の資産だった場合、「相続放棄」を考慮する人が多くいます。「相続放棄」とは、文字通り、被相続人(亡くなった人)の相続遺産の全てを受け取る権利を放棄することで、相続が開始されてから(権利を知ってから)3ヶ月以内に家庭裁判所に相続放棄の申し出と手続きを行います。

そのメリットとしては、マイナスの遺産を受け継ぐリスクを回避できます。しかし、デメリットとしては、放棄した遺産をのちに取り戻すことはできませんし、それによって家族間の感情的な摩擦の原因となることもあります。

また、相続放棄したとしても、被相続人の遺産の「管理責任」は残り、その管理を怠った結果、賠償責任が発生する可能性があります。
その相続放棄による管理責任について、2023年4月の民法改正がありました。

「旧」民法940条第1項では、「現に占有する相続人は、相続放棄しても次の相続人が決まるまで、問題が起こらないように、管理しなければならない」とし、その問題点は以下の3つありました。
①これまで管理に関与していなかった相続人が管理責任を負うべきか?
②管理責任はいつまでの期間負うのか明らかでない
③財産の利用や処分する権限がないのに「管理」という表現は適切か?

これらを踏まえて、2023年4月の民法改正では、「現に占有する相続人は相続放棄したとしても、次の相続人(ないし相続財産清算人)が決まるまで、問題が起こらないように現状を保存しなければならない」とし、これまで曖昧な表現だとされていた内容を「責任者・期間・責任の定義」について、具体的な表現で明記されました。

相続遺産のうち「負」動産において、このことから分かることは以下の3つ。
・その物件に同居する相続人だけに責任を継続して負わせる
・保存義務(ほぼ管理責任と同義)は別の相続人または相続財産清算人(後述します)に対して当該物件を引き渡すまでの間とする
・「管理責任(義務)」から、次の相続者に引き渡すまでの「保存(義務)」を目的とする

被相続人と同居の場合、その家や土地を「現に占有」しているとみなされるため、管理(保存)責任を負います。ただ、他の相続人が相続放棄の手続きをしなければ、責任はその相続人になります。

では、同居により「現に占有」していて相続放棄したとき、その管理(保存)責任を免れるためには、家庭裁判所に「相続財産清算人」の申し立てをします。被相続人の債権者に対し債務の精算をしてもらい、その後残った財産を国庫に帰属させます。また、その報酬に充てられる20〜100万円程度の「予納金」を支払う必要があります。

ここまで踏まえて、親の遺産の相続放棄に迷いが出てきたなら、「負」動産であっても相続放棄はせずに、少しでもプラスにする方法を取ります。
①相続土地国庫帰属制度により「負」動産だけ手放す
「相続した土地を手放したい人のための選択肢を増やし、相続した「負」動産を有償で国に引き取ってもらう新制度。
ただし、その条件は非常に厳しく、多額の費用や時間と労力がかかります。
申請から国庫へ帰属までの期間は半年〜1年程度。さらに国に納付する負担金もあります。
②不動産取引サイトを活用して「負」動産だけ手放す
不動産取引サイトを活用し、売り手と買い手をマッチングするサービスを受けます。資金の持ち出しが少なく、場合によってはプラスになるかも!
ただし、内見や諸連絡といった手間がかかり、個人情報をサイト内にアップしなくてはなりません。買い手は見つかりにくく、活動は半年〜2年といった長期にわたります。
③古戸建て物件として「負」動産を賃貸運営する
最低限のリフォームを自ら行い、古戸建て物件として賃貸運営する方法です。ファミリー層などに一定のニーズが見込めれば、その価値を見い出せます!
ただし、賃貸運営も自ら行うリフォームも、そう簡単なものではありませんし、片手間では到底収益を望めないかもしれません。
④不動産業者を活用して「負」動産だけ手放す
不動産業者さんを活用しますが、その方法は二通り。
・不動産仲介業者さんに売却活動をしてもらう場合、市場相場通りの売却が可能かもしれません。ただし、手間と時間がかかる可能性は高い上、仲介手数料が発生します。まして、取り引きを断られることもあり得ます!
・不動産買取業者さんにおいても、十分な売買差益が見込めないと判断されれば、同様に断られることも考えられます。ただし、土地活用や用地開発に長けた不動産買取業者さんを見つけられれば、買い取りに応じてもらえる場合もあります。

私たちエスエイアシストも、そんな不動産買取業者の一つです。これまで入居者がいる古いアパートや借地・底地、再建築不可など、困ってしまう“訳あり物件”を数々と解決してきた実績があり、土地活用や用地開発に長けていると自負があります。もし、ほかの不動産会社で断られてしまったとしても、まずはご相談だけでも、ぜひ一度エスエイアシストにご連絡ください!お待ちしています。

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