独自のノウハウにより入居者がいる古いアパートや借地・底地、再建築不可など、他の不動産会社が取り扱いづらい“お困り物件”を解決に導いてきた不動産・用地開発のスペシャリスト、株式会社エスエイアシストがお届けする“お困り物件”コラム、第86回目は「位置指定道路を含む不動産の売却」です。
「位置指定道路に接する不動産を売却したいけど、何に気をつければよいのか分からない…」と困っている方はいませんか?位置指定道路は特有の注意点が多く、法的な知識が必要になることも少なくありません。それだけに、不動産市場で売却しようにも、その扱いの難しさから買い手さんから敬遠されがちな物件と言えます。対応を間違えてしまうと、トラブルに発展することもあるので気をつけなければなりません。そんな中、令和5年4月の法改正によってルールが明確化され、手続きがスムーズになった側面もあることも知っておきたいところ。
この記事では、位置指定道路の特徴といった基礎知識から法改正の影響、トラブルの回避の方法、不動産売却時に気をつける点まで、詳しく解説します。ぜひ最後まで読んでもらい、不安を解消していただけると幸いです!
位置指定道路の役割と特徴とは?
はじめに、「位置指定道路」の仕組みと特徴は何かを理解しておきましょう。位置指定道路とは、「建築基準法42条1項5号に基づいて特定行政庁が認定した私道」のこと。この認定を受けると、私道でありながら建築基準法上の「道路」と見なされ、以下のような役割を果たします。
①建物を建てるための接道義務を果たす
ひとつに、建物を建てるための「接道義務」を果たす目的があります。接道義務とは、「建物の敷地(土地)が建築基準法上の幅員4m以上の道路に2m以上接しなければならない」というもので、これが果たせないと新たな建物をその土地に建てることが出来なくなります。
②周辺の安全性や利便性などの向上
もうひとつに、緊急車両の通行を可能にしたり、ライフライン設備の整備をしやすくしたりなど、周辺の安全性や利便性などの向上に役立てるようになります。
これによって、公道に接しておらず、個人や法人が所有する私道にしか接していない土地でも、ライフライン設備の整った建物を建てることができるようになります。そんな位置指定道路に認定されるためには基準があり、
・幅員が原則4m以上であること
・舗装(アスファルトなど)されていること
・雨水の排水設備を有すること
・道路の接続部分や屈曲部分に隅切り(土地の角を取る)を造ること
といったものがあります。
位置指定道路の問題点!
また、同じように見える位置指定道路であっても、中身は様々なケースがあります。
①現行法に適合するか?
まず、法的に問題がないものなのか、現行法に適合しているかは重要です。
・完全な位置指定道路:現行法に適合しており問題なし
・不完全な位置指定道路:旧基準で認定されたもので現行法に適合せず、再建築が制限される可能性あり
万が一後者の場合、不動産市場での評価が低くなってしまい売却価格下落のリスクが高くなりますし、もしくは買い手さんが見つからないケースも出てきます。
②所有者は誰か?
つぎに、位置指定道路の所有者さんは、基本的には土地の登記を行った人であり、
・土地の地主
・不動産会社(法人)
・複数人の共有名義
といったケースが考えられます。
③所有パターンはどれか?
さらには、所有パターンも様々で、
・複数人で均等に権利をもっていて共有している
・一部の所有者が単独(もしくは複数)で所有している(私道に所有権を持たない人もいる)
・土地に隣接している私道をそれぞれ所有している
・土地に隣接せずに飛び地でそれそれ所有している
・私道の所有者は全く別にいる
といったケースがあります。
位置指定道路の管理は誰がする?
このように、位置指定道路は権利関係が複雑に絡んでいるため、その維持管理を誰が担うのかが非常に分かりにくいものとなります。以下にポイントをまとめます。
①固定資産税は誰が払う?
位置指定道路の固定資産税は、原則として道路の所有者さんが負担することになります。個人所有なら個人が、共同所有なら共有持分に応じて支払うものです。私道の先は行き止まりであり、特定の人しか通らないのであれば、この形。ただ、抜け道であったりして不特定多数が通行するような公衆用道路として認められる場合は、非課税になる可能性があります。
②私道掘削やライフライン設備の負担は誰がする?
また、私道を掘り返して(私道掘削)して上下水道やガスといったライフライン設備を整備することがあります。その設置や維持管理は、基本的に道路の所有者さんです。ただ、私道を所有していなくても、接道する敷地に建物を建てるなど、個別で掘削工事が必要であれば、その当事者さんが負担することになります。
③位置指定道路の通行権は誰にある?
そして、位置指定道路の通行権は、基本的にその道路を利用する必要がある居住者さんに認められますが、先述の公衆用道路であればその限りではなく、固定資産税を非課税になっている観点から、通行を拒否することはできないものとされています。
位置指定道路で起こり得るトラブルとは?
そんな位置指定道路では、以下のようなトラブルが発生する可能性があります。
①通行権に関するトラブル
・道路所有者により通行制限される
・通行料を請求される
・公衆用道路ゆえの交通トラブル
②ライフライン設備設置時のトラブル
・掘削工事の承諾が得られない
・工事費用負担を巡る争い
③維持管理のトラブル
・ライフライン設備の修繕費用の分担を巡る争い
・除雪や清掃などの日常管理のトラブル
・路上駐車や私物の放置、騒音など
④再建築時のトラブル
・不完全位置指定道路の再建築不可
・重機や資材の搬入時のトラブル
⑤所有権移転時のトラブル
・道路の共有持分の譲渡が進まない
・権利継承などの書類に署名や印が貰えない
令和5年4月の法改正が位置指定道路に与える影響とは?
これらのトラブルの中でも、特にインフラ設備の設置時のトラブルを軽減されることが期待される法改正が、令和5年4月に施行されました。主な変更点は以下の通り。
①設備設置権の明文化
まず、「設備設置権」の明文化がなされました。他人が所有する土地や私道にライフライン設備を設置するための権利。設置が「生活に必要不可欠」であり、他に代替手段がない場合に行使可能です。その際には、対象の所有者さんに事前通知をすれば工事可能であるので、言い換えると通知をすれば承諾書が不要になったとも捉えることができます。
②設備使用権の明文化
つぎに、他人が所有する既存の設備を利用する権利である「設備使用権」が明文化されました。具体的な権利範囲と利用条件が明確になり、継続的な供給が必要な設備が対象となります。行使できる範囲は、必要最小限に限定されており、他の所有者さんの利用を妨げないことが条件ですが、設備使用権が法的に保護されたことで、買い手さんの心理的不安が軽減されます。
③設備設置権への償金に関する明文化
また、設備設置権を行使した際に発生する償金について、基準が明確化されました。これにより金銭的なトラブルが予防されるとともに、設備設置に伴う費用負担が公正になることが期待されています。具体的に言うと、
・一時的な土地利用に対する償金
・工事後の利用制限される場合の損失補償
などがあります。
④掘削承諾書の不要の明文化
さらに法改正前では、私道を掘削する際には所有者さんや共有者全員の承諾書が必要で、これが大きなハードルになっていましたが、以下の条件を満たせば承諾書が不要になりました。
・必要最低限の範囲での掘削であること
・設備設置により周辺住民に生活の大きな支障を与えないこと
・掘削後に適切な原状回復を行うこと
・対象者に合意形成を行い事前通知を行うこと
この変更により、掘削工事の遅延やコストが改善されますが、現状の現場レベルでは「法的には問題なくても心理的なトラブル回避のために、掘削承諾書を作成することがよりマストである」とされています。
⑤不明者・未回答者に対する措置の明文化
さいごに、共有者さんの中に所在不明や未回答がある場合、これまでは工事が進まず、事実上の頓挫となるケースがありました。法改正により、対応策が明文化されました。
・所在不明者には行政への届け出することで工事可能
・未回答者へは一定期間の通知後に未回答を同意とみなすことが可能
これらにより令和5年4月の法改正が位置指定道路に与える影響として、次のようなメリットが生まれました。
・買主の安心感向上し購入検討されやすく
・償金ルールの整備によりトラブルを予防
・手続きが簡素化して取引を迅速に進められる
位置指定道路に接する不動産の売却をするには?
では、位置指定道路に接する不動産を売却する際は、以下の点を準備していきます。
・事前調査の徹底:位置指定道路の法的状況や所有権と通行権の明確化
・共有者との協議:権利関係や管理責任についての合意形成
・重要事項説明の準備:位置指定道路に関する情報を整理し買主の納得感ある説明
・買主への丁寧な説明:位置指定道路の特性や潜在的なリスクを説明
・必要書類の準備:位置指定道路の権利関係書類や図面、認定書類などを確認
・専門家への相談:不動産業者や弁護士などに相談し適切なサポートを受ける
・価格設定の工夫:位置指定道路の影響を考慮した適切な価格設定
・買主との事前合意:将来的な維持管理や通行権に関する取り決めを行う
これらを徹底することで、不動産仲介によって相場通りの売却価格を目指すのが理想と言えるでしょう。しかし、位置指定道路に接する不動産は、一般の買い手さんには敬遠されることは少なくありません。そのため、不動産買取を利用するのも一つの方法です。
不動産買取を利用するのなら、一般に相場通りの売却価格にはなり得ませんが、以下のようなメリットがあることは、知っていて損はありません!
①煩雑な手続きを代行
・共有者間の調整:共有者全員とのコミュニーケーションコストを大幅軽減する
・法的手続きサポート:複雑な権利関係が伴う手続きを専門知識によって代行する
・必要書類の整理:売却に必要な書類や資料の準備と整理をする
②問題を抱えていても可
・再建築不可への対応:不完全位置指定道路による再建築不可物件にも対応する
・共有持分の問題:他の共有者との合意をスムーズに得る
・トラブルへの対応力:想定されるトラブルに先回りして対応する
③短期間に売却できる
・直接取引で即現金化:買取業者との直接取引で不動産を即現金化する
・短期間で売却:仲介では売却活動が長期化する可能性があるのに対し手間なく短期売却できる
・現況のまま売却:修繕といった工事不要で現況のまま引き取ってくれる
ということで、買取業者さんを上手に活用することで、位置指定道路に接する不動産の売却をスムーズに進めることが可能です。状況に応じて、最適な方法を選んでください!
まとめ
この記事では、位置指定道路の特徴といった基礎知識から法改正の影響、トラブルの回避の方法、不動産売却時に気をつける点まで、詳しく解説していきました。
「位置指定道路」とは、「建築基準法42条1項5号に基づいて特定行政庁が認定した私道」のこと。私道でありながら建築基準法上の「道路」と見なされ、以下のような役割を果たします。
①建物を建てるための接道義務を果たす
②周辺の安全性や利便性などの向上
これによって、私道にしか接していない土地でも建物を建てることができるようになります。位置指定道路の認定基準は、
・幅員が原則4m以上であること
・舗装(アスファルトなど)されていること
・雨水の排水設備を有すること
・道路の接続部分や屈曲部分に隅切り(土地の角を取る)を造ること
といったものがあります。
同じように見える位置指定道路であってもは様々なケースがあり、
①現行法に適合するか?
②所有者は誰か?
③所有パターンはどれか?
位置指定道路は権利関係が複雑で維持管理を誰が担うのかが分かりにくいものです。
①固定資産税は誰が払う?
②私道掘削やライフライン設備の負担は誰がする?
③位置指定道路の通行権は誰にある?
そんな位置指定道路では、以下のようなトラブルが発生する可能性があります。
①通行権に関するトラブル
②ライフライン設備設置時のトラブル
③維持管理のトラブル
④再建築時のトラブル
⑤所有権移転時のトラブル
これらのトラブルを軽減されることが期待される法改正が、令和5年4月に施行されました。主な変更点は以下の通り。
①設備設置権の明文化
②設備使用権の明文化
③設備設置権への償金に関する明文化
④掘削承諾書の不要の明文化
⑤不明者・未回答者に対する措置の明文化
これらにより令和5年4月の法改正が位置指定道路に与えたメリットは以下。
・買主の安心感向上し購入検討されやすく
・償金ルールの整備によりトラブルを予防
・手続きが簡素化して取引を迅速に進められる
位置指定道路に接する不動産を売却する際は、以下の点を準備していきます。
・事前調査の徹底
・共有者との協議
・重要事項説明の準備
・買主への丁寧な説明
・必要書類の準備
・専門家への相談
・価格設定の工夫
・買主との事前合意
これらを徹底し、不動産仲介によって売却を目指すのが理想ですが、位置指定道路に接する不動産は、一般の買い手さんには敬遠されるため、不動産買取を利用するのも一つの方法で、以下のようなメリットがあります。
①煩雑な手続きを代行
②問題を抱えていても可
③短期間に売却できる
ということで、私たちエスエイアシストも不動産買取業者のひとつです。入居者がいる古いアパートや借地・底地、再建築不可など、困ってしまう“訳あり物件”のご相談を数々と解決してきた実績があります。他の共有者さんとの間で悩むことがあれば、無理をすることなく、ぜひ一度エスエイアシストにご相談ください!お待ちしています。