独自のノウハウにより入居者がいる古いアパートや借地・底地、再建築不可など、他の不動産会社が取り扱いづらい“お困り物件”を解決に導いてきた不動産・用地開発のスペシャリスト、株式会社エスエイアシストがお届けする“お困り物件”コラム、第51回目は「私道持分なしの不動産トラブル」です。
親の代から住み続けるこの自宅。「家の前の私道に所有権はない、と聞かされていた…けれど何が問題?」なのか気にされていませんか?所有している不動産の目の前が私道だったとして、もし「私道持分なし」の場合、売却や建て替え時に大きな問題になることがあります。私道とは、公道ではなく個人や法人などが所有・管理する道路のこと。これに所有権を持ち合わせてないのですから、今後通行や利用に関してトラブルが発生するかもしれません!
この記事では、そもそも「私道持分なし」とはどういった状況なのか?生じ得る問題点や法的背景、そしてそんな状況でもトラブルを回避し、不動産を安心して売却する方法を解説します。転ばぬ先の杖!前もって準備することで、いつかの不動産売却を安心して取引するためにも、ぜひ最後まで読んでみてくださいね。
そもそも私道って何?
そもそも「私道」とは、公道(国や自治体が管理する道路)ではなく、個人(もしくは複数人)や法人が所有する道路のこと。その私道の利用にあたっては、所有者さんの許可が必要な場合があり、維持管理に対する責任は所有者さんにあります。もし自宅の不動産を売却したいと考えたとき、この私道の所有権や通行・掘削権が交渉の大きなポイントになることがあります。
私道に関して、建物が建つ土地の建築基準法における前面道路の種類には、以下のようなものがあります。
①42条1項3号(既存道路)
まずはコチラ。42条1項3号(既存道路)とは、建築基準法施行以前から存在する幅員4m以上の道路です。私道または公道に付帯する私道部分と規定されていて、所有者は官民どちらもあり得ます。
②42条1項5号(位置指定道路)
次に、42条1項5号(位置指定道路)があります。住宅を建てることを目的に、土地の所有者さん(個人、もしくは複数人)が特定行政庁から、幅員4m以上ある道路位置指定を受けた私道となります。政令で定められた基準に、適合していることを認められた、ということですね。
③43条2項(2項道路・みなし道路)
最後に、いわゆる「みなし道路」とも呼ばれる2項道路です。これは、幅員4m未満の道路に対して、建て替え時には道路の幅員を広げる(道路境界線からセットバックする)ことを約束した道路です。
まずは、ご自宅の前の私道は、建築基準法上ではどんな道なのかを理解します!
私道持分とはどういうこと?
では、私道における持分とはどういうことなんでしょうか?簡単に言えば、「私道に接する土地の所有者さん複数人それぞれが、私道の一部に対して持つ権利」のことです。この持分は、私道の利用、維持管理に関わる権利と責任を示しています。おのおのの持分は、土地の登記簿にも記載されていて、権利の範囲は明確です。
そんな私道持分には、内容に応じて以下の2つに分類できます。
①共有持分
ひとつに、私道を複数人で共有して所有することを、「共有持分」といいます。私道が複数の土地所有者さんたちによって利用されるとき、持分は通常、各所有者さんの土地面積や利用度に応じて按分されます。
共有持分の特徴は、その私道内の事象に対して、全ての所有者さんにおいて権利と責任が発生するということ。そのため、私道の利用や維持管理に関する決定において、意見の不一致が生じるおそれがありますし、修繕費用の分担や利用方法についての合意に至らないケースも出てきます。
②分筆持分
一方、「分筆持分」とは、私道が個々の所有者さんに分けられ、それぞれの区分が明確にされている状態を指します。私道をキッチリ分割して登記されるため、各所有者さんは自身の区分に対して、完全な権利と責任を持つワケです。
分筆持分の特徴は、各所有者さんが自身の区分に独立した権利を持っていること。ただ、他の所有者さんの区分に影響が与えるような変更や利用を行う場合、その合意を得なくてはなりません。
また、分筆の場合、接している部分に必ず所有権があるワケではなく、離れた部分が割り当てられていることもあるので、注意が必要です。
付け加えると、そこに一人の所有者さんが、その私道の全てを持っている場合があります。地主さんだったり、開発分譲した法人だったり、といった具合です。
「私道持分なし!」で発生するトラブルとは?
さあ、ここからが本題です!
「私道持分なし!」とは、自宅の目の前の私道(土地)に所有権をもっていない状態を指します。そんな私道に対する持分がない状態では、不動産の売却や利用において、様々なトラブルが発生する可能性があります。特に、長年住んでいた家を売却しようとした際に、突然のトラブルに直面することも少なくありません!
ここでは、私道持分なしの状況で起こり得るトラブルを紹介します。
①目の前の土地に所有権があるとは限らない!
ここは厳密に言えば「私道持分無し」ということではありませんが、先述したとおり、たとえ「持分あり」としても、目の前の土地に所有権があるとは限らない!ということがあります。悲観的に言えば、以降に挙げる「持分なし」トラブルが同様に起こる可能性があります。
②通行には許可がいる!
理屈上は所有者さんの許可なく通行するには許可が必要です。万が一、土地所有者さんとの関係が悪化するようなことがあれば、厳しく規制されるかもしれません。たとえ自宅前であってもです。さすがに徒歩を禁止されることは、倫理上ないのかもしれませんが、自動車等が入れなくなることは、十分に考えられます。
③私道トラブルには行政も介入しない!
また、私道内でのトラブルには、警察や自治体といった行政は介入できません。たとえば、私道所有者さんが家の目の前に駐車をして、生活や工事などに支障がでたとします。本来法律上、「道路上の場所を自動車の保管場所にしてはならない」とあっても、私道内では警察が取り締まることはできません。
④掘削承諾が取れない!
さらに、上下水道の工事のために、私道を掘削する承諾が得られないことも!通常、正当な理由がないのにも関わらず、ライフライン工事の承諾を拒むことはできないものなのです。が、高額な承諾料を請求される、もしくは工事を妨害される、といったことはあり得ます。また、所有者さんの所在が確認できないことも…。ただ、2023年4月の民法改正で、掘削工事をする権利が明確化されたため、実施しやすくなったことは付け加えておきます。
⑤住宅ローンが通りにくい!
最後に、私道持分のない不動産では、金融機関の住宅ローンの承認が通りにくいということがあります。担保価値が低く評価されるからです。これは、実際に売却活動をした際に、一括購入できる買主さんは稀であるため、家が売れないことになります。それは、ご自身が建て替えをするにしても影響は大きいものです。
トラブルを回避し不動産を安心売却をする方法!
そんなこんなで、不動産を売却する際、「私道持分なし!」という状況は、想像以上に多くのトラブルを引き起こす可能性があります。とは言え、事前に適切な対策を講じることで、これらのトラブルを回避し、スムーズに不動産を安心売却することができます。たとえすぐに売却しないにせよ、建て替えの検討をするにせよ、場合によっては、多くの時間を費やすかも知れない以上、早く着手しておくことが肝要!ですね。
①私道の状況を把握する!
まず第一歩として、現在の私道の状況を把握することが重要です。これには自治体や法務局での確認作業が必要になります。
・建物が法的な要件を満たしているか(接道義務・境界確定など)確認する
・私道に既存のトラブル(隣人のマナー違反・不法占拠)を把握する
・私道の所有者が誰であるか明確にする
・道路の種類(位置指定道路・みなし道路)を確認する
②私道持分を取得する!
その上で、可能であれば私道の持分を取得することで、将来的なトラブルを回避できます。持分があることで、通行権や必要な掘削工事などに関して、安心して対応できるようになります。ただし、分筆持分の場合は所有者さん全員の合意が必要となるので、持分取得は困難になるかもしれません。
③通行・掘削承諾書を取得する!
どうしても私道持分を取得が難しい場合は、少なくとも通行権や掘削に関する承諾書の取得を目指します。その一方で、先にも少し触れましたが、2023年4月の民法改正により、他の所有者さんの土地に、掘削工事によってライフライン設備を設置する権利が、明確に示されました。
それによると…、
・他者の所有する私道を掘削するには、事前にその内容を通知する
・他者の土地への損害が最も少ない方法に限定する
・当該所有者の所在が不明のときは勝手な掘削はできない
・掘削承諾料を必ずしも支払うことはない
・他者の所有物を勝手に移動するなどの自己救済は禁止する
と解釈できます。
ですので、権利は権利として追い風にはなりますが、やっぱり相互の話し合いを重ね、双方の納得の上の「通行・掘削承諾書」を取得することは大切です。
承諾書には「所有者が変わっても引き継ぐ旨の条項」を加えれば、不動産売却時の安心感は格段にアップします!
④不動産買取への売却が良!
もし、私道所有者さんとの関係が悪くて、思うように話が進まないのであれば、直接不動産買取業者さんへの売却が良いかもしれません。今回のような私道持分なしの不動産の取り扱いに慣れた業者さんであれば、迅速に対応してくれるハズです!
まとめ
この記事では、「私道持分なし」とは何なのか?生じ得る問題点や法的背景、そしてそんな状況でもトラブルを回避し、不動産を安心して売却する方法を解説してきました。
「私道」とは、公道(国や自治体が管理する道路)ではなく、個人(もしくは複数人)や法人が所有する道路のこと。その私道の利用にあたっては、所有者さんの許可が必要であり、維持管理に対する責任は所有者さんにあります。
私道の種類には、以下のようなものがあります。
①42条1項3号(既存道路)
②42条1項5号(位置指定道路)
③43条2項(2項道路・みなし道路)
「私道持分」とは「私道に接する土地の所有者さん複数人それぞれが、私道の一部に対して持つ権利」のことです。
そんな私道持分には、内容に応じて以下の2つに分類できます。
①共有持分
私道を複数人で共有して所有すること。各所有者さんの土地面積や利用度に応じて按分され、権利と責任が発生するため、私道の利用や維持管理に関する意見の不一致が生じるおそれがあります。
②分筆持分
私道が個々の所有者さんに分けられ、区分が明確。各所有者さんは自身の区分に対して、完全に独立した権利と責任を持ちます。ただ、他の区分に影響が与えるような変更や利用を行う場合、その合意を得なくてはなりません。また、接している部分に必ず所有権があるワケではなく、離れた部分が割り当てられていることもあるので、注意。
付け加えると、一人の所有者さんが、その私道の全てを持っている場合もあります。
「私道持分なし!」とは、自宅の目の前の私道(土地)に所有権をもっていない状態を指します。不動産の売却や利用において、様々なトラブルが発生する可能性があります。
私道持分なしの状況で起こり得るトラブル。
①(私道持分ありでも)目の前の土地に所有権があるとは限らない!
②通行には許可がいる!
③私道トラブルには行政も介入しない!
④掘削承諾が取れない!
⑤住宅ローンが通りにくい!
不動産を売却する際、「私道持分なし!」という状況でも、事前に適切な対策を講じることで、これらのトラブルを回避し、スムーズに不動産を安心売却することができます。たとえすぐに売却しないにせよ、早く着手しておくことが肝要!
①私道の状況を把握する!
・建物が法的な要件を満たしているか(接道義務・境界確定など)確認する
・私道に既存のトラブル(隣人のマナー違反・不法占拠)を把握する
・私道の所有者が誰であるか明確にする
・道路の種類(位置指定道路・みなし道路)を確認する
②私道持分を取得する!
可能であれば私道の持分を取得することで、将来的なトラブルを回避できます。
③通行・掘削承諾書を取得する!
どうしても私道持分を取得が難しい場合は、少なくとも通行権や掘削に関する承諾書の取得を目指します。その一方で、2023年4月の民法改正により、他の所有者さんの土地に、掘削工事によってライフライン設備を設置する権利が、明確に示されました。
・他者の所有する私道を掘削するには、事前にその内容を通知する
・他者の土地への損害が最も少ない方法に限定する
・当該所有者の所在が不明のときは勝手な掘削はできない
・掘削承諾料を必ずしも支払うことはない
・他者の所有物を勝手に移動するなどの自己救済は禁止する
しかし、相互の話し合いを重ね、双方の納得の上の「通行・掘削承諾書」を取得することは大切です。承諾書には「所有者が変わっても引き継ぐ旨の条項」を加えれば、不動産売却時の安心感は格段にアップします!
④不動産買取への売却が良!
もし、私道所有者さんとの関係が悪くて、思うように話が進まないのであれば、直接不動産買取業者さんへの売却も検討しましょう!
私たちエスエイアシストでは、入居者がいる古いアパートや借地・底地、再建築不可など、困ってしまう“訳あり物件”のご相談を数々と解決してきた実績があります。今回の「私道持分なし!」の不動産の扱いにも精通しております!ほかの不動産会社で難色を示されてしまった物件をお持ちの方は、ものは試しとぜひ一度エスエイアシストにご相談ください!お待ちしています。