
独自のノウハウにより、入居者がいる古いアパートや借地・底地、再建築不可物件など、他の不動産会社では取り扱いづらい「お困り物件」を解決に導いてきた、不動産・用地開発のスペシャリスト・株式会社エスエイアシストがお届けする「お困り物件コラム」。第154回目は「イエローゾーン」についてです。
「実家を売却しようとしたら、仲介業者から『ここはイエローゾーンなので価格に影響が出ます』と言われた……」「ハザードマップが更新されて、自分の家が突然黄色く塗られてしまった。これから先、どう向き合えばいいのだろうか?」
近年、毎年のように発生する集中豪雨や大型台風の影響もあり、不動産市場における「ハザードマップ」への注目度はかつてないほど高まっています。以前はそれほど意識されなかった「イエローゾーン(土砂災害警戒区域)」という言葉が、今や売却を検討する際の見過ごせない要因となっているようです。
しかし、必要以上に不安を感じることはありません。「イエローゾーンだから手放せない」というわけではなく、現状を正しく把握し、適切なステップを踏むことで、納得のいく形で住み替えや売却を進めることは十分に可能です。本記事では、イエローゾーンの不動産における実質的なリスクや、市場で慎重に検討される理由、そして将来に向けた「安心できる選択」について紐解いていきます。ぜひ最後までお付き合いくださいね。
知っておきたい基礎知識:イエローゾーンとレッドゾーンの「違い」について
まず、イエローゾーンとはどのような区域なのかを整理してみましょう。土砂災害防止法に基づいて指定される区域には、主に2つの種類があります。
イエローゾーン(土砂災害警戒区域)
「土砂災害が発生した場合、住民の生命または身体に危害が生じるおそれがある」とされる区域です。
・建築制限:基本的にはありません。これまで通りお住まいいただくことも、新しく家を建てることも可能です。
・義務:指定されると、市町村による警戒避難体制の整備が進められます。不動産取引の際には、宅建業者による「重要事項説明」が義務付けられています。
レッドゾーン(土砂災害特別警戒区域)
「建物が破壊され、住民の生命または身体に著しい危害が生じるおそれがある」とされる区域です。
・建築制限:非常に厳しくなります。特定の構造(コンクリート壁など)でなければ家を建てられず、改築にも制限がかかることがあります。
・移転の検討:状況によっては、行政から移転の勧告などが出されるケースも見られます。
つまり、イエローゾーンであれば、法律上の扱いは「一般的な住宅」と大きく変わるわけではありません。しかし実務上は、法律の規定以上に「売却の難易度」が変化しやすいのが現実です。
検討が慎重になりやすい3つの背景
法律上、住み続けることに問題がなくても、なぜ売却の際に少し難しい顔をされることがあるのでしょうか。そこには主に3つの背景があると考えられます。
① 買い手側の心理的な懸念
2020年以降、不動産取引における重要事項説明でハザードマップの提示が完全義務化されました。買い手の方は契約の前に「ここは土砂災害のリスクがあるエリアです」という説明を受けることになります。ネットで容易にリスク情報を確認できる現代において、一生に一度の買い物をする際に、あえてリスクのある場所を選ぼうと考える方は、どうしても限られてしまう傾向にあります。
② 住宅ローン審査への影響
金融機関もリスク管理には敏感です。イエローゾーン内の物件は、将来的な資産価値の下落を懸念し、担保評価を控えめに見積もることがあります。希望した額の融資が承認されなかったり、条件が少し厳しくなったりすることで、買い手の方の資金計画が整わず、成約に至らないケースも少なくありません。
③ 他の課題との複合的なリスク
古い物件の場合、イエローゾーンであることに加えて、「接道義務を果たしていない(再建築不可)」や「擁壁(ようへき)が劣化している」といった別の課題を併せ持っていることがよくあります。複数の問題が重なることで、一般の方が個人でローンを組んで購入するハードルが、さらに高まってしまうのです。
そのままにしておくことで生じる可能性
「なかなか売れないのなら、ひとまずそのままにしておこう」と判断されることもあるかもしれません。しかし、空き家の状態でイエローゾーンの物件を持ち続けることには、いくつかの注意すべき点があります。
工作物責任(民法717条)の視点
もし、自分の敷地内にある擁壁が崩れたり、崖崩れが発生して隣家や通行人の方に被害を与えてしまったりした場合、たとえ大雨による自然現象であっても、所有者として損害賠償責任を問われる可能性があります。日頃の管理状況(擁壁のひび割れの放置など)が指摘されれば、その負担が非常に大きくなってしまうことも考えられます。
税負担や管理の手間
住んでいなくても固定資産税の負担は続きますし、庭の草木が荒れて近隣に迷惑をかけてしまえば、行政から「特定空き家」に指定される恐れもあります。そうなれば、税金の優遇措置が受けられなくなり、負担が増大してしまう懸念も否定できません。
イエローゾーン物件の「安心できる選択肢」
では、この状況をどのように前へ進めていけばよいのでしょうか。いくつかの方法が考えられます。
① 専門家による「直接買取」という選択肢
一般の個人の方を対象とする「仲介」では、リスクの説明があった時点で検討を止めてしまう方が多いのも事実です。その点、リスクを事業の一部として評価する「専門の買取会社」への依頼は、ひとつの有力な選択肢となります。プロは「どう対策を施せば安全に活用できるか」という視点で査定を行うため、イエローゾーンであっても適正な価値を見出してもらいやすくなります。
② 建物や土地をそのままの状態で手放す
古い擁壁の補修や解体には、多額の費用が必要です。イエローゾーンの物件において、自己資金を投じてから売却しても、その費用を回収できる見込みが立たないこともあります。買取会社であれば、現状のまま引き取り、自社のコストで対策を施すことができるため、持ち主の方の負担を抑えられるケースが多いです。
③ 売却後の責任範囲を明確にする
売却後に万が一崖崩れが起きた際、元所有者が責任を問われ続けるのは避けたいものです。専門会社による買い取りであれば、契約書に「契約不適合責任の免除」を盛り込むことが一般的です。これにより、手放した後の安心を確保しやすくなります。
まとめ
イエローゾーンの物件だからといって、決して価値がないわけではありません。ただ、その特性を理解したうえで「どのような相手に、どのような形で相談するか」が、これまで以上に大切になっていると言えます。
私たちエスエイアシストは、入居者がいる古いアパートや借地・底地、再建築不可物件など、扱いが難しい「お困り物件」のご相談を数多くサポートしてきました。「「ハザードマップで黄色く塗られてから、なかなか買い手が見つからない」「擁壁が古くて、これからの大雨の時期が不安だ」と感じている方こそ、ひとりで抱え込まず、まずは現状をお聞かせください。お客様の状況やご希望を踏まえ、無理のない出口プランを一緒に考えます。お困りの物件でお悩みの方は、ぜひエスエイアシストまでご相談ください。
【参考エビデンス・出典】
・国土交通省:土砂災害防止法について
https://www.mlit.go.jp/mizukokudo/sabo/sabo01_hg_000001.html
・宅地建物取引業法施行規則:ハザードマップにおける取引の重要事項説明
https://www.mlit.go.jp/report/press/totikensangyo16_hh_000205.html
・各自治体ハザードマップポータルサイト(国土交通省運営)
https://disaportal.gsi.go.jp/
・国民生活センター:災害リスクのある土地の不動産取引トラブル
https://www.kokusen.go.jp/



