
独自のノウハウにより入居者がいる古いアパートや借地・底地、再建築不可など、他の不動産会社が取り扱いづらい“お困り物件”を解決に導いてきた不動産・用地開発のスペシャリスト、株式会社エスエイアシストがお届けする“お困り物件”コラム、第111回目は「騒音のあるマンションの売却」です。
「上階の夜間の足音が響く…」「隣室のペットの鳴き声が気になる…」暮らしを乱す騒音に我慢の限界を感じて、マンション売却を考える場合があります。しかし、買主さんへ正直に話せば敬遠されて「売れないのではないか?」と不安になりますね。そもそも、騒音といっても感じ方は人それぞれ。どこまでが告知すべき範囲となるのか、トラブルにならずに済むのか、気になるところです。
今回の記事では、騒音のあるマンションにおける客観的な告知義務の基準、環境的瑕疵(周辺環境が原因の欠陥)を隠すリスク、それら起因のトラブルを回避するための対策を分かりやすく解説。ぜひ最後まで読んで頂き、静かな暮らしへと踏み出すキッカケになれば嬉しいです。
マンションにおける騒音と環境的瑕疵!

はじめに、マンションにおける「騒音」が、なぜ売却を難しくするのか整理しましょう。大きく以下のようなものがあります。
・生活騒音:家電の駆動音、給排水管の音など、日常生活に伴う音
・構造伝播音:上階の足音、ものを床に落とした音など、建物構造を通じて伝わる音
・空気伝播音:話し声、テレビや楽器の音など、空気中を伝わる音
・交通騒音:線路や幹線道路、航空機騒音など、外部からくる乗り物の音
それぞれの影響度はデシベル(dB:音の大きさの単位)で測定でき、環境省の騒音基準では住宅地で昼55dB・夜45dB以下が目安。例えば、就寝時間に上階から響く足音が50dBを超えると不快度が高まり、生活の質が下がる要因となってしまいます。
こうした騒音が、買主側の購入意欲を大きく低下させてしまうほどであれば、環境的瑕疵(物理的・周辺環境に起因する欠陥)とみなされることがあります。ここに、もし精神的・心理的に看過できないケースであるなら、心理的瑕疵(心理的な抵抗感や不安を与えるような欠陥)とも言えるでしょう。
これらの瑕疵には、売買契約時において告知義務が生じ、その際に正しい説明を果たさなかった場合、売却後にトラブルに発展する可能性もあります。
「騒音のあるマンションは売れない」と言われる理由とは?
そんな騒音のあるマンション、「売れない!」と言われる理由には、以下のようなものがあります。
①買主からの印象が悪い
ひとつに、買主さんにとって、快適な住環境は最優先事項です。もしも、内見時に少しでも気になる音があれば、第一印象が悪くなり「この物件はやめておこう」と判断されてしまう恐れがあります。たとえ室内が綺麗でも、騒音があるだけで購入意欲は大きく損なわれてしまいます。
②売却価格の低下につながる
また、売主さんが思っている以上に「騒音がある」という事実は、売却価格の低下につながることがあります。買主さんは、前提として何かしらのリフォームや防音対策を考えるため、その工事を見越して値下げ交渉をしてくる可能性があります。
③隣人とのトラブルを抱えている
そして、騒音の原因が隣人とのトラブルを抱えている場合、「クレームが多い住人がいる」といった不安を買主さんに与えてしまいます。一度物件を購入してしまえば、そうそう引越しはできません。どうしてもトラブルに敏感になり、心理的な抵抗感が生まれます。
④外部環境が要因なら対処が限られる
さらに、幹線道路や鉄道の音、近隣施設からの音など、外部環境が要因なら騒音の場合、対処が限られ居住者側で対策を講じるのが難しいケースもあります。「将来的にも改善されない」と思われると、売却活動に大きなハンデを抱えることになります。
⑤人による感じ方の違いと不確実性
さいごに、同じ音でも「気になる、ならない」は人によって感じ方は違います。この主観性において「売主が騒音の存在を軽く見ているのでは」と勘ぐられてしまうと、せっかく進んでいた取り引きでも、白紙に戻ってしまう不確実性が増してしまいます。
「感じ方は人それぞれ?」告知すべき範囲!
ということで、一口に「騒音」といっても、その感じ方は人それぞれ。同じ音でも気にならない人もいれば、非常にストレスに感じる人もいます。では、どこまでが買主に告知すべき範囲になるのでしょうか?
契約不適合責任(契約内容に合わない場合に負う売主責任)に基づき、「継続的かつ客観的に認識できる騒音」は、売主が買主に告知すべき内容とされています。たとえば、「上階の足音が毎晩続いている」「ペットの鳴き声が昼夜問わず聞こえる」といった状況は、客観的に確認できる情報として説明が求められる場合があります。
「感じ方はそれぞれなら、あえて告知しなくてもいいよね…」と、安易に告知義務を怠ると、契約解除や損害賠償を求められるリスクが生じます。特に、契約後にトラブルが発覚すると、売主にとって大きな負担となりかねません。
そのため、特定の状況における騒音レベルやその内容を、個人的感情や主観的な考えではなく、測定可能な数値や事実に基づいた客観的な評価が求められます。一方で一時的な生活音や、近隣住戸の一時的なトラブルなど、「特定性がない」「現在は解消されている」といったケースについては、告知の義務は生じないこともあります。
いずれにせよ、ある程度の目安となる基準はあるものの、「告知すべき範囲」はあってないようなもの。全体の状況や買主さんの温度感を感じながら不動産の専門家と相談の上、正直に事実に基づいた適切な情報開示を行うことが、トラブル回避の鍵となります。
騒音のあるマンションのトラブル回避策!

では、トラブルなくマンションを不動産仲介を通じて売却するには、どんな対策があるのでしょうか?それには、事前の対策と準備が大切です。以下のような方法が有効なので確認しましょう。
①騒音の実態を数値化
まず最初に行いたいのは、騒音の実態を数値化することです。騒音の判断は、感じ方の問題と片付けられがちですし、一般に言われる基準(昼間55dB以下・夜間45dB以下)は目安でしかありません。しかし、数値で示すことで客観性は高まります。
・夜間と昼間
・特に気になる時間帯
これらを、今ではスマートフォンアプリや簡易騒音計を使えば、手軽に騒音レベルを計測することができます。
②管理業者や管理組合への相談する
次に取り組みたいのが、管理業者さんやマンション管理組合への相談です。騒音が特定住戸から発生している場合、個人で直接注意するのではなく、対応を依頼することが基本です。管理規約や使用細則に基づき、以下のような対応が可能です。
・理事長名義の注意文書の送付
・掲示板や全戸配布チラシによる周知
・議事録に記載し、対応履歴を残す
特に、理事会議事録に対応履歴が残っていると、売却時に「対応済み」であることの証拠になり、買主さんの不安を軽減できます。
③簡易的な防音対策を行う
そして、内見時の印象を左右するのが、売主さんによる配慮の有無です。たとえ問題が完全に解消されていなくても、できる範囲の防音対策を施しているかどうかで、信頼感は大きく変わります。たとえば、以下のような手軽な対策があります。
・防音カーテンで窓からの音を軽減
・壁面に吸音材を貼る
・家具配置を工夫するなどの対策
・家電の音を抑える防振マットを設置
・ラグやカーペットで足音の発生を抑制
もちろん一部は自宅内の音への配慮ですが、「売主として音環境に配慮している」という誠実な姿勢が伝わり、好印象につながります。
④防音リフォームを検討する
さらに状況が深刻な場合は、リフォームによる対策も検討しましょう。
・二重サッシの設置:1窓あたり10〜15万円程度
・床の遮音性能向上:20㎡で20〜30万円程度
・壁の吸音材施工:範囲により10万円〜
これらは必ずしも工事をしなくてはならないワケではなく、リフォームの見積書を用意しておくことで「対策可能であること」を説明できます。また、「買主が希望する場合に引き継ぎ可能」とすることで交渉材料にもなります。
⑤告知の準備
最後に、告知内容の整理と書面の準備です。売却時には、以下のような情報を明確に伝えるようにしましょう。
・騒音の種類と発生場所(例:上階の足音・隣室のペット)
・測定結果(何dB・どの時間帯に発生したか)
・対策の有無(管理組合への相談・グッズ設置など)
・現在の状況(改善したか継続中か)
これらを専門家と相談しながら、重要事項説明書や告知書に記載することで、後から「聞いていない」と言われるリスクを防げます。
以上の対策を講じておくことで、「誠実な売主」という印象を与え、交渉もスムーズに進みやすくなります。
「仲介だけじゃない!」早期売却を実現する方法とは?
そういった努力をすることで、騒音のあるマンションでも仲介にて売却することは可能です。不動産仲介であれば、市場相場に近い価格で売却できる可能性がある点は大きな魅力です。ただし、その一方で以下のような注意点があります。
・内見予約や購入申込が入るまでに時間がかかることがある
・買主からの値下げ交渉により売却価格が下がる可能性
・一般的に契約不適合責任を2年間負うケースが多く、告知が不十分だとリスクが伴う
このように、仲介は高く売れる可能性がある反面、「売れるまでの不確実性」と「売却後のリスク」が避けられない点に注意が必要です。
一方で、手間なく早期売却を実現したいと考えるなら、不動産買取も選択の余地があります。売却価格は市場相場より下がる傾向にはありますが、以下のようなメリットがあります。
・騒音対策のリフォームや測定などをしなくても、現況のまま売却可能
・契約不適合責任を免除されることが多く、売却後の責任追及の不安がない
・騒音トラブルから一刻も早く逃れたいときでも、短期間で現金化が可能
・非公開で売却できるので、騒音トラブルの相手に知られることがない
・内見対応が不要で、時間や精神的な負担が大きく軽減される
このように不動産買取なら、業者さんとの直接取り引きなので、先行きの見通しも立ちやすく、安心して新しい場所への住み替えを実現できます!
まとめ
今回の記事では、騒音のあるマンションの不動産売却における告知義務の範囲と、トラブルを回避するための対策を分かりやすく解説してきました。
マンションにおける「騒音」には、主に「生活騒音・構造伝播音・空気伝播音・交通騒音」があります。それぞれの影響度はデシベルで測定でき、環境省の騒音基準では住宅地で昼55dB・夜45dB以下が目安。
こうした騒音は環境的瑕疵とみなされることがあり、もし精神的・心理的に看過できないケースであるなら、心理的瑕疵とも言えます。不動産売却時、これらの瑕疵には告知義務が生じます。
そんな騒音のあるマンション、「売れない!」と言われる理由には以下。
①買主からの印象が悪い
②売却価格の低下につながる
③隣人とのトラブルを抱えている
④外部環境が要因なら対処が限られる
⑤人による感じ方の違いと不確実性
一口に「騒音」といっても、その感じ方は人それぞれであり、どこまでが買主に告知すべき範囲になるのでしょうか?
契約不適合責任(契約内容に合わない場合に負う売主責任)に基づき、「継続的かつ客観的に認識できる騒音」は、売主が買主に告知すべき内容とされ、安易に告知義務を怠るとリスクが生じます。
騒音レベルやその内容を感情や主観的な考えではなく客観的な評価が求められますが、「告知すべき範囲」は状況によって違うため、専門家と相談の上で事実に基づいた情報開示を行うことが、トラブル回避の鍵となります。
トラブルなくマンションを売却するには、以下のような方法で「誠実な売主」という印象を与えれば、交渉もスムーズに進みやすくなります。
①騒音の実態を数値化
②管理業者や管理組合への相談する
③簡易的な防音対策を行う
④防音リフォームを検討する
⑤告知の準備
そういった対策をすることで、仲介にて市場相場に近い価格で売却することは可能です。ただし、その一方で以下のような注意点があります。
・時間がかかることがある
・値下げ交渉により売却価格が下がる可能性
・告知が不十分だと契約不適合責任を負うリスクが伴う
一方で、不動産買取なら、売却価格は市場相場より下がる傾向にはありますが、以下のようなメリットがあります。
・現況のまま売却可能
・契約不適合責任を免除されることが多い
・短期間で現金化が可能
・非公開で売却できる
・内見対応が不要
このように業者さんとの直接取り引きなので、先行きの見通しも立ちやすく安心できます!
私たちエスエイアシストも不動産買取業者のひとつです。入居者がいる古いアパートや借地・底地、再建築不可など、困ってしまう“訳あり物件”のご相談を数々と解決してきた実績があります。ぜひ他社さんと比較して頂ければと思います。難しい物件をお持ちでお困りの方は、一度エスエイアシストにご相談ください!お待ちしています。
