独自のノウハウにより入居者がいる古いアパートや借地・底地、再建築不可など、他の不動産会社が取り扱いづらい”お困り物件”を解決に導いてきた不動産・用地開発のスペシャリスト、株式会社エスエイアシストがお届けする”お困り物件”コラム、第46回目は「令和6年施行の相続空き家3000万円特別控除の改正点」です。
相続によって空き家を手に入れることは、多くの人にとって一大事!そこには感情的な思いだけではなく、法的・経済的な課題も伴います。特に、不動産の扱いに馴染みのない人にとって、相続空き家の管理や税金の問題、売却方法は大きな負担になると思います。そして実は令和5年、そんな相続空き家所有者さん注目の、空き家売却時の控除における法改正が行われたのはご存知ですか?もうその施行も迫っています。
今回の記事では、令和6年1月1日施行の「相続空き家3000万円特別控除」の改正点に焦点を当てて解説します。その特別控除の改正内容とその影響、空き家売却において知っておくべきポイントなど、相続空き家所有者さんに役立つ情報を分かりやすくご紹介します!どんな状況においても、適切な知識さえあれば、その負担感を少なくすることも出来るハズ。その一助になれば幸いです。ぜひ、最後まで読んでみてくださいね!
相続空き家の定義とは?
そもそも「相続空き家」とは、親族から相続された不動産であり、取得後住むこともなく使用もされていない、もしくは利用が限られている家屋です。こうした家屋は多くの場合、相続人さんにとっては、予期しない責任や、経済的な負担を伴うことがあります。その空き家の管理や維持に関しても、様々な問題を抱えていることが一般的なんです。例えば、家屋の老朽化、固定資産税の負担、セキュリティの問題などが挙げられます。
そんな空き家問題は、個々の問題であるだけでなく、日本全国で深刻な状況になってきています。その原因は、少子高齢化や核家族化などの社会変化によるものが大きいかと。空き家の状態次第では、地域の防災や治安、景観などの問題を引き起こすだけではなく、地域の経済活動にも悪影響を及ぼす可能性すらあります。
こうした社会的問題を解決するために、政府は空き家対策として様々な施策を打ち出しています。その一環として、相続空き家の売却に際して、税制上の優遇措置を設けることで、空き家の不動産市場への流通を促進しようとしています。これは、空き家所有者さんにとっては、その負担軽減の大切な機会になり得るんです!←ココ重要!
相続空き家売却時の税金
では、一般的に不動産売却をすると、どんな税金がかかるのでしょうか?それは「譲渡所得税」です。不動産売却(譲渡)によって発生した売却益に対してかかる税金ですね。不動産売却益の計算式は以下。
不動産売却益 = 売却価格 ー 譲渡費用 ー 取得費
売却時に受け取った金額から、その売却に伴って発生した譲渡費用(仲介手数料や印紙税など)とその不動産を取得した当時に支払った金額を引いたモノ。それが、不動産売却益になります。
と、ここで問題なのは、相続した空き家…、「不動産を購入した大昔の取得費なんてわからない!」んですね。そこで使われるのは「概算取得費」となります。その売却価格のざっくり5%相当額を取得費としてみなします。例えば、5000万円の売却価格が出たとして、その5%となると概算取得費は250万円となります。その他、当時の市街地価格や標準的な建築価額といったところから、推計する方法もあります。いずれにせよ、印象としてこの金額は、少し小さ過ぎる見積もりに見えてしまいます。
何故なら、上記の例で譲渡所得税まで見てみると分かります。譲渡費用がもろもろで200万円かかったものとして計算すると…、
売却価格5000万円 ー 譲渡費用200万円 ー 取得費250万円 = 不動産売却益4550万円
さらに、その不動産売却益に、被相続人(亡くなった人)が所有していた期間は長期だったとして、長期譲渡所得の税率を乗じると…、
不動産売却益4550万円 × 長期譲渡所得税率20.315% ≒ 譲渡所得税1053万円
って、「そんな税金、めっちゃ高くて、とても払えない!」となりますよね?というワケで、そんな空き家所有者さんに対して、国が言うなれば優遇措置をとってくれるのです。それが、いわゆる「相続空き家3000万円特別控除」と呼ばれるモノです。
相続空き家3000万特別控除とは?
その「相続空き家3000万円特別控除」という特例の対象になるのは、相続発生の直前まで、被相続人(亡くなった人)が居住していた家屋(「被相続人居住家屋」という)において、以下の要件すべてに合致する必要があります。
・昭和56年5月31日以前に建築されたもの(旧耐震基準)
・区分所有建物登記(分譲マンションなど)されていない
・相続発生直前に被相続人以外に居住していない(独居)
なお、要介護認定されて介護施設に入居した場合は、一定の条件を満たせば可となります。
その上で、特例の適用を受けるための要件は以下。
・売主が売却空き家の相続人であること
・相続(または寄贈)により空き家と土地をセットで取得したこと
・売主が過去に同制度を利用していないこと
・相続発生から譲渡までの間、事業利用していない
・相続発生日から丸3年経ったのちの12月31日までに売却すること
・買主は売主の親族等でなく第三者であること
・不動産売却価格は1億円以下であること
令和6年施行の相続空き家3000万円特別控除改正の前と後!
と、ここまでは、「これまでも」「これからも」同様の適用要件になります。ここからは、令和5年に改正され、令和6年1月1日から施行される要件です。相続空き家3000万円特別控除の改正の前と後に焦点をあてます。
これまでは、売主さんが買主さんへの譲渡日までに、「空き家を取り壊して更地にする」か、「空き家に耐震改修をする」ことが適用要件でした。売主さんにとってみれば、これには高額な工事資金の先出しが必要になります。まして、その工事をしたからといって必ず売れるとも限りません。一方、買主さんからすれば、古い空き家を耐震改修するよりも、新しく建て替えた方がいい場合が多いでしょう。コレが特別控除改正の前!
改正前では、譲渡前に売主さんが解体または耐震改修する必要があることは、空き家の不動産市場への流通の足かせになると判断されました。「売買契約に基づき、買主が譲渡の日の属する年の翌年2月15日までに耐震改修又は除却の工事を行った場合、工事の実施が譲渡後であっても適用対象とする」としました。コレが特別控除改正の後!特例措置の拡充と言えます。
また補足として、改正によって2つの変更点もあげておきます。
①相続空き家3000万円特別控除は4年延長され、適用期限が令和9年12月31日までとされました。
②法定相続人が3人以上いる場合は、一人当たり控除額2000万円へと控除額の減額がなされます。
ちょっと注意!売買契約時のポイント!
そんなワケで、上記改正の特例措置の拡充によって、適用要件が緩和されたのですが、ちょっと注意点があります。予期せぬ買主さんの行動によって、要らぬ賠償トラブルに巻き込まれる可能性があるんです。ポイントは先述した「”売買契約時に基づき”〜〜〜工事実施が譲渡後であっても適用対象とする」の文々の「売買契約時に基づき」の部分。
コレは裏を返せば、買主さんがちゃんと期日までに、空き家の除却か耐震改修の工事をする必要があるということです。万が一、工事が未実施になった場合、それによって売主さんが「本特例措置を受けることができない!」なんてこともあり得ます!なんともヤバいですね…。
ですので、ソレを避けるためには、契約の当事者間の合意に応じた改正による拡充部分を明記し、売買契約の特約等を付帯させることが大切になります。売主さんが租税特別措置法第35条第3項に定められた空き家の、譲渡所得の特別控除の適用を前提とした売買契約に関する書面。具体的には以下にあげます。
①耐震基準に適合させる場合
「売主と買主は、売主が特別控除の適用を受けることを前提として、売買契約の価格や条件に合意しており、買主は所有権移転後に本件建物を耐震基準に適合させる工事を行う責任を負う」
…などなど。
②除却し更地にする場合
「売主と買主は、売主が特別控除の適用を受けることを前提として、売買契約の価格や条件に合意しており、買主は所有権移転後に建物を除却する工事を行う責任を負う」
…などなど。
③両パターン共通
「もし買主が本工事を完了させられないために、売主が特別控除を受けられなかった場合、売主は買主に対して税額控除相当の損害賠償を請求できる」
「ただし、買主が工事を履行できなかったのが、買主の責任に帰せない事由による場合、買主はその責任を負わないこととする」
…などなど。
これらの売買契約時のポイントを押さえることで、安心して今回の「相続空き家3000万円特別控除」の改正による拡充部分を使いこなせるハズ!先述したその適用要件には、「相続発生日から丸3年経ったのちの12月31日までに売却すること」という期日もありますので、善は急げで行動してみてくださいね。
まとめ
今回の記事では、令和6年1月1日施行の「相続空き家3000万円特別控除」の改正点に焦点を当てて解説してきました。
そもそも「相続空き家」とは、親族から相続された不動産であり、取得後住むこともなく使用もされていない、もしくは利用が限られている家屋です。こうした家屋は多くの場合、相続人さんにとって負担を伴うことがあります。
そんな空き家問題は、個々の問題であるだけでなく、日本全国で深刻な状況になってきていて、地域の環境や経済にも悪影響を及ぼす可能性すらあります。
こうした社会的問題を解決するために、政府は空き家対策として様々な施策として、相続空き家の売却に際して、税制上の優遇措置を設けることで、空き家の不動産市場への流通を促進しようとしています。
一般的に不動産売却をすると不動産売却益に対して税金がかかります。
不動産売却益は、売却時に受け取った金額から、譲渡費用とその不動産を取得当時に支払った金額を引くと計算できます。
不動産購入当時の取得費なんてわからない場合、その売却価格のざっくり5%相当額を概算取得費としてみなしますが、この金額は小さく見積もられるため、不動産売却益が大きくなり、譲渡所得税が高くなります。
高額な税金は払えないケースも出てくるので、そんな空き家所有者さんに対して、国が言うなれば優遇措置をとってくれるのが、いわゆる「相続空き家3000万円特別控除」と呼ばれるモノです。
その「相続空き家3000万円特別控除」という特例の対象は、相続発生の直前まで、被相続人が居住していた家屋において、以下の要件すべてに合致する必要があります。
・昭和56年5月31日以前に建築されたもの(旧耐震基準)
・区分所有建物登記(分譲マンションなど)されていない
・相続発生直前に被相続人以外に居住していない(独居)
なお、要介護認定されて介護施設に入居した場合は、一定の条件を満たせば可となります。
その上で、特例の適用を受けるための要件は以下。
・売主が売却空き家の相続人であること
・相続(または寄贈)により空き家と土地をセットで取得したこと
・売主が過去に同制度を利用していないこと
・相続発生から譲渡までの間、事業利用していない
・相続発生日から丸3年経ったのちの12月31日までに売却すること
・買主は売主の親族等でなく第三者であること
・不動産売却価格は1億円以下であること
ここまでの要件は改正前後とも同様の適用要件になります。ここからは、令和5年に改正され、令和6年1月1日から施行される要件です。
改正前は、売主さんは譲渡日までに「空き家を取り壊して更地にする」か、「空き家に耐震改修をする」ことが適用要件で、高額な工事資金の先出しが必要になります。買主さんからすれば、新しく建て替えた方がいい場合が多いでしょう。
改正後は、「売買契約に基づき、買主が譲渡の日の属する年の翌年2月15日までに耐震改修又は除却の工事を行った場合、工事の実施が譲渡後であっても適用対象とする」とし、特例措置の拡充をしました。
ただし、適用要件が緩和されたのですが、要らぬ賠償トラブルの可能性があり、ポイントは「”売買契約時に基づき”〜〜〜工事実施が譲渡後であっても適用対象とする」の文々の部分。
コレは裏を返せば、買主さんが期日までに、空き家の工事をする必要があるということで、万が一、工事が未実施になった場合、売主さんが本特例措置を受けることができないこともあり得ます!
ソレを避けるためには、契約の当事者間の合意に応じた売買契約の、特約等を付帯させることが大切になります。
内容は…、
・売主が特別控除の適用を受けることを前提として、工事を行う責任を負う
・もし買主が不履行で売主が特別控除を受けられなかった場合、売主は買主に対して税額控除相当の損害賠償を請求できる
…などなどを、売買契約書に盛り込みます。
これらの売買契約時のポイントを押さえることで、安心して改正による拡充部分を使いこなせるはずです!
私たちエスエイアシストでは、入居者がいる古いアパートや借地・底地、再建築不可など、困ってしまう”訳あり物件”のご相談を数々と解決してきた実績があります。今回の特別控除の適用要件には、「相続発生日から丸3年経ったのちの12月31日までに売却すること」という期日もあり、もし切迫するようなら、私たちのような不動産買取業者も選んで頂けると幸いです。ぜひ一度ご相談ください!お待ちしています。