
独自のノウハウにより、入居者がいる古いアパートや借地・底地、再建築不可物件など、他の不動産会社では取り扱いづらい「お困り物件」を解決に導いてきた、不動産・用地開発のスペシャリスト・株式会社エスエイアシストがお届けする「お困り物件コラム」。第167回目は「離婚後に妻が家に住み続ける場合」です。
離婚を考えたとき、「子どもの生活を変えたくないから、今の家に妻が住み続けたい」と願う方は少なくありません。ただ、夫名義で住宅ローンも残る家に、離婚後もそのまま住み続けられるのか不安に思うものです。結論から言うと、住み続ける方法はありますが、条件やリスクは想像以上に重く、難しい場合は売却して分けるほうが安全です。
今回の記事では、離婚後も妻が家に住み続けるための条件とリスク、そして住み続けが難しいときの現実的な出口を整理します。最後まで読めば、今なにから動けばよいかが見えてくるハズです。
夫名義の家に離婚後も妻は住み続けられる?

はじめに、離婚後も妻が家に住み続けられるかは、大きく2つの点で決まります。
①名義で「住む立場」と「売る権限」が変わる
まず、名義によって「住む立場」と「売る権限」が変わります。家が夫の「単独名義」なら、売るかどうかは名義人である夫の意思で決まります。夫婦の「共有名義」であれば、家全体を一つの不動産として動かすには、双方の合意が必要です。
②住宅ローンの残債で「選べる道」が変わる
また、住宅ローンの残債の状況によって、選べる道が変わります。想定される家の売却額が、住宅ローンの残債を上回る「アンダーローン(残債より高く売れる状態)」か、下回る「オーバーローン(残債のほうが多い状態)」かで、その後の進め方は大きく変わります。
ここで押さえたいのが、「財産分与(離婚に伴い夫婦が婚姻生活で築いた財産を公平に分ける制度)」の考え方です。家は、たとえ夫の単独名義でも、結婚後に夫婦が協力して築いたものであれば財産分与の対象になり、分け方は原則として2分の1が目安です。
ただ、その話し合いがまとまらないときは、家庭裁判所の「財産分与請求調停(離婚後に財産分与について話し合いがまとまらない場合に利用する手続き)」を利用できます。一方で、住宅ローンのような債務は、財産分与ではプラス財産のように単純に半分にするものではありません。
そのため、残債が家の価値を上回るオーバーローンでは、家を売却しても利益が出ず、分与できる価値が残らないこともあります。
住宅ローンが残る家に妻が住み続ける3つの方法
その上で、住宅ローンが残る家に妻が住み続ける方法を整理します。代表的なのは次の3つです。
①夫が住宅ローンの返済を続ける
一つ目に、家を出て別に住む夫がこれまでどおり住宅ローンの返済を続け、妻子がその家に住む方法です。一見すると現状維持で済むように見えますが、後で述べるリスクが大きく残ります。
②妻が夫に家賃を払って住む
二つ目に、妻が夫に家賃を支払い、その分を夫が返済に充てる方法です。実質的には賃貸に近い関係になります。ただし、支払いの滞納、金額や支払い期間、家の修繕費の負担などをあいまいにしておくと、のちのトラブルになりかねません。
③妻が住宅ローンを借り換えて単独名義にする
三つ目に、妻が住宅ローンを借り換え、家を妻の単独名義に変える方法です。金融機関はローン返済途中の名義人変更を例外的なケースを除き原則として認めないため、妻が新たにローンを組んで夫の残債を一括で返す「借り換え」をすることになります。
どの方法でも「住み続けたい」を叶えられる可能性はあります。ただし、それぞれに条件とともにリスクが伴う点に注意しましょう。
離婚後の家に「住み続けられない」借り換え審査の壁
次に見落とせないのが、住宅ローンの「借り換えの審査」です。名義を夫から妻に移すことができれば、一番安定した環境で住み続けられます。安心して住み続けるためには、妻自身が新しくローンを組めることが前提になります。
ところが借り換えには、本人に安定した収入があることなど、金融機関の厳しい審査基準があります。また、対象の家を妻の単独名義に変更する手続きも必要になります。
とりわけ、パート収入だけでは審査に通りにくい傾向があります。年収の基準は金融機関ごとに異なるため一概には言えませんが、収入が限られていると、この段階でつまずく方は少なくありません。
つまり、「住み続けたい」という気持ちがあっても、審査の壁の前で「住み続けられない」現実に直面することがあるのです。特に、離婚した夫の協力が得られないとなれば、借り換えが通らなかったときにどう動くかを、あらかじめ考えておくことが大切になります。
離婚後の家に住み続けられても残る3つのリスク

さらに、たとえ住み続けられたとしても、見過ごせないリスクが残ります。ここでは代表的な3つを取り上げます。
①夫のローン滞納や無断売却で住まいを失うおそれ
まず、万が一、夫の返済が滞ると、「期限の利益(分割して返済できる権利)」を失って競売に進むおそれがあり、住まいを失う可能性があります。名義が夫のままだと、妻は自分の判断で状況を動かしにくく、夫の都合で無断で第三者に家を売却されてしまうリスクもあり、ある日突然、生活の土台を失いかねません。
②名義人と返済者が違うと一括返済を求められる
次に、家の名義人を登記上は妻にして、住宅ローンは夫が返済を続けるケースのように、家(所有権)の名義人と住宅ローンを返済する人が異なる状態は、ローン契約上の資金使途違反とみなされることがあります。その場合、契約内容や金融機関の判断によっては、一括返済を求められるおそれがあります。
③共有名義の放置が将来の売却トラブルを招く
そして、家の購入時にペアローンを組んでいるケースでは、共有名義のまま放置すると、将来その家を売ろうとしたときに、元配偶者である共有者の同意が必要になります。連絡が取りづらくなったり関係がこじれたりすると、売却できない事態を招きかねません。
離婚後も妻子で「住み続ける」という選択には、こうした継続的なリスクがついて回ります。目先の安心だけで決めず、先々まで見通しておきたいところです。
住み続けるために今やるべき備えは?
では、それでも住み続けたい場合、どんな備えが必要でしょうか。押さえるべき安全策を順に見ていきます。
①借り換えで単独名義にする
先述した通り、まずはできる限り、借り換えによって家を妻の単独名義にすることを目指します。名義と返済者を一致させておくことが、資金使途違反や一括返済のリスクを避ける基本です。
②金銭の取り決めは公正証書に残す
次に、離婚後の金銭的な取り決め(養育費や分与金など)は、「強制執行認諾文言(相手が支払いを怠ったとき、直ちに強制執行を受けることを認める文言)」を付けた公正証書にしておくと安心です。この文言があれば、相手が支払いを滞らせても、裁判の手続きを経ずに給与などの差し押さえができます。ただし、公正証書で強制執行できるのは金銭の支払いに限られ、家の引き渡しなど金銭以外のことは対象になりません。
③連帯保証人やペアローンの解消を図る
さらに、連帯保証(主債務者と連帯して返済義務を負う保証)やペアローン(夫婦がそれぞれ別個に住宅ローンを組む借り方)になっている場合、離婚してもその義務は消えません。借り換えなどで解消を図ることになりますが、契約後に保証人を外すには金融機関の承諾が必要で、簡単ではありません。
④家を査定してアンダーかオーバーローンかを把握する
そして、家がいくらで売れるのかを査定し、アンダーローンかオーバーローンかを把握します。実際に売らなければ本当の価値が分かることはありませんが、家の価値が目安でもはっきりすれば、財産分与の話し合いも公平に進めやすくなります。
ここまでが、「住み続ける」をできるだけ安全に選ぶための条件です。ひとつでも欠けると、後々の負担が大きくなりかねません。
離婚後の家に住み続けられないときの現実的な出口
以上を踏まえ、借り換えも夫の返済継続も難しいときの、現実的な出口を考えます。住み続けることを諦めて、その家を手放す方法には、大きく「仲介」と「買取」の2つがあります。
①不動産仲介で売却する
仲介は、不動産業者が買い手を探す方法です。時間をかければ相場に近い価格で売れる可能性がありますが、売却までに時間がかかります。買主が見つからなければいつまでも売りに出すこととなり、値下げが必要になることもあります。オーバーローンで通常の売却が難しい場合には、「任意売却(金融機関の同意を得て、競売を避けて市場で売却する方法)」という手段もあります。
②不動産買取業者へ直接売却する
一方、借り換えに通らなかった場合の現実的な出口となりやすいのが、不動産買取業者への直接売却です。「早期に現金化」でき、「仲介手数料がかからない」ため、離婚によって家を出る時期が近い場合に、スムーズに手放せるのが買取業者に相談するメリットです。ただし、買取価格は相場より下がる傾向がある点は、正直にお伝えしておきます。
なお、売却代金の分け方や税金(譲渡所得税、居住用財産の特例など)にも注意が必要です。この点は関連記事「別居中の家を売却するには?名義とタイミングで損しない段取りと売り方」で詳しく解説しています。
大切なのは、離婚後に家にそのまま住み続けるための条件が揃わない場合に、無理に持ち続けることではなく、きちんと売却して公平に分ける、現実的な出口を見つけることです。まずは無料査定で、今いくらで売れるのかを知ることから始めましょう。
まとめ
今回の記事では、離婚後も妻が家に住み続けるための条件とリスク、そして住み続けが難しいときの現実的な出口について解説してきました。
はじめに、離婚後も妻が家に住み続けられるかは、大きく2つの点で決まります。
①名義で「住む立場」と「売る権限」が変わる
②住宅ローンの残債で「選べる道」が変わる
ここで押さえたいのが、家が夫の単独名義でも、夫婦が協力して築いたものであれば、「財産分与」の対象になるということです。ただ、オーバーローンでは、分与できる価値が残らないこともあります。
その上で、住宅ローンが残る家に妻が住み続ける代表的な方法は次の3つです。
①夫が住宅ローンの返済を続ける
②妻が夫に家賃を払って住む
③妻が住宅ローンを借り換えて単独名義にする
一番安定した環境で住み続けるために見落とせないのが、「借り換えの審査」です。名義を夫から妻に移すには、妻自身が新しくローンを組めることが前提になります。
ただ、借り換えには金融機関の厳しい審査基準があり、パート収入だけでは審査に通りにくい傾向があります。また、対象の家を妻の単独名義に変更する手続きも必要になります。
借り換えが通らず、離婚した夫の協力が得られない場合に、どう動くかを考えておくことが大切になります。
さらに、たとえ住み続けられたとしても、見過ごせないリスクが残ります。
①夫のローン滞納や無断売却で住まいを失うおそれ
②名義人と返済者が違うと一括返済を求められる
③共有名義の放置が将来の売却トラブルを招く
では、それでも住み続けたい場合の備えとして、押さえるべき安全策を順に見ていきます。
①借り換えで単独名義にする
②金銭の取り決めは公正証書に残す
③連帯保証人やペアローンの解消を図る
④家を査定してアンダーかオーバーローンかを把握する
以上を踏まえ、借り換えも夫の返済継続も難しいときの、現実的な出口は以下となります。
①不動産仲介で売却する
②不動産買取業者へ直接売却する
大切なのは、離婚後に家に住み続けるための条件が揃わない場合に、無理に持ち続けることではなく、きちんと売却して公平に分ける、現実的な出口を見つけることです。
私たちエスエイアシストは、離婚に伴う住宅ローン問題や共有名義の解消など、扱いが難しい「お困り物件」のご相談を数多くサポートしてきました。
「どこに相談すればいいか分からない」「家族に迷惑をかけたくない」と感じている方こそ、ひとりで抱え込まず、まずは現状をお聞かせください。お客様の状況やご希望を踏まえ、無理のない出口プランを一緒に考えます。離婚後の持ち家のことでお悩みの方は、ぜひエスエイアシストまでご相談ください。
【参考エビデンス・出典】
・財産分与請求調停(裁判所)
離婚後の財産分与で話し合いがまとまらない場合に、家庭裁判所へ申し立てる手続きの解説。
URL:https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_07_04/index.html
・公正証書によって強制執行をするには(法務省)
強制執行認諾文言があれば裁判手続を経ず差し押さえができること、対象は金銭の支払いに限られることの根拠。
URL:https://www.moj.go.jp/MINJI/1-1-1-2-2-3.html
・民法(e-Gov法令検索/第768条ほか)
離婚に伴う財産分与を請求できる権利の根拠条文。
URL:https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
・任意売却の手続について(住宅金融支援機構)
競売を避け、金融機関の同意を得て市場で売却する制度の解説。
URL:https://www.jhf.go.jp/hensai/baikyaku.html
※なお、今回初めて本文中に補完関係にある前の記事の紹介をいれています。関連記事「別居中の家を売却するには?名義とタイミングで損しない段取りと売り方」
弊社は「ピタットハウス浦和西口店・恵比寿店」としての営業を2026年7月をもって終了し、
「【エスエイアシスト本店(浦和)/東京支店(池袋)】」としてリニューアル営業しております。
過去のブログ内に旧店舗名の表記が残っている箇所がございますが、スタッフや運営会社等に変更はございません。
これまで以上に皆様のニーズに寄り添ったお部屋探し・不動産サポートに努めてまいります。



