
独自のノウハウにより、入居者がいる古いアパートや借地・底地、再建築不可物件など、他の不動産会社では取り扱いづらい「お困り物件」を解決に導いてきた、不動産・用地開発のスペシャリスト・株式会社エスエイアシストがお届けする「お困り物件コラム」。第165回目は「別居中の家の売却」です。
離婚を考えて別居を始めたものの、「妻と子が住み続けている家をどうすればよいのか…」と迷っていませんか。結論から言うと、別居中でも家を売ることは可能です。
ただし、スムーズに売却できるかは、名義と住宅ローンの状況次第であり、夫婦で話し合いがこじれると売却は一気に難しくなります。さらに、お金を分けるタイミングを誤れば、余計な税金で損をすることもあります。
今回の記事では、家を出て「売って清算したい」と考える方に向けて、別居中の家の売却で押さえるべき段取りと、自分に合った売り方の選び方を整理します。最後まで読んでもらえれば、今何から動けばよいかが見えてくるハズです。
「別居中でも家は売れる?」名義とローン残債で決まる

はじめに、別居中に家を売れるかどうかは、2つの点で決まります。1つは「名義」、もう1つは「住宅ローンの残債」です。
①名義によって「売る権限」が変わる
まず、名義によって、売る権限は変わります。家が夫の「単独名義(一人だけが所有者として登記されている状態)」であれば、名義人の意思だけで売却を進められます。
一方、夫婦の「共有名義(二人で所有している状態)」の場合は、家全体を売るために双方の同意が必要です。相手が売却に反対していると、共有名義の家は売却手続きが前に進みません。
②住宅ローンの残債で「売り方」が変わる
次に確認したいのが、住宅ローンの残債です。売却額がローン残債を上回る「アンダーローン」なら、売ったお金でローンを完済し、残りを分けられます。
反対に、売却額が残債を下回る「オーバーローン」の場合は、ローンを完済できず抵当権を抹消できないため、原則そのままでは売れず、金融機関の同意を得た任意売却(住宅ローンの返済が困難な場合に、金融機関の同意を得て自分の意思で不動産を売却する方法)などの対応が必要になります。
別居中の家の売却は、この「名義」と「残債」の確認から始まります。ここがはっきりしないと、次の判断に進めません。
別居中の家の売却が難航する本当の理由とは?
その上で、「人が住んでいる家は売れない」と思われがちですが、実際は少し違います。
居住中でも家の売却そのものは十分に可能です。実際、売却の多くは人が住んだまま行われており、空き家と比べて最終的な売れ行きや価格に大きな差が出るわけではありません。内覧の手間など居住中ならではの売りにくさはあるものの、「住んでいること」だけが売却を阻む最大の理由ではないのです。
本当に売却を難しくするのは、離婚をめぐって「当事者が対立している状態」です。
①住む側の協力が得られないと売却は止まる
もし、家に住んでいる側が内見や引き渡しを拒否すれば、買い手がいても話は進みません。鍵の管理や立ち会いはもちろん、共有名義の場合は売却の同意(印鑑証明書の用意など)も必要であり、協力が得られなければ売却活動は止まってしまいます。
②立ち退きが絡む物件は仲介で敬遠される
また、夫婦間で対立している状態で立ち退きが絡む物件は、仲介業者側からも敬遠されやすいのが実情です。交渉が長引いたり裁判に発展したりする心配があるため、買い手がつきにくく、価格も下がりやすくなります。
つまり「住んでいるから売れない」のではなく、「協力が得られないから売れない」のです。別居中の家をどうするか考えるときは、この点を踏まえておくとつまずきにくくなります。
「離婚成立前に分けると損?」売却と税金のタイミング
そして、別居中の家の売却で見落とされがちなのが、税金と「お金を分けるタイミング」です。
①「財産分与だから非課税」とは限らない
まず、離婚に伴う「財産分与(夫婦で築いた財産を分ける手続き)」で受け取る財産には、原則として贈与税はかかりません。財産分与は贈与ではなく、夫婦の財産を清算する権利に基づくものだからです。ただし、分与された額が事情に照らして多すぎる場合や、税金逃れのための離婚と判断される場合は、例外的に課税されることがあります。
②離婚成立前に分けると「贈与税」で損をする
気をつけたいのは、離婚が成立する前に売却代金を相手へ渡してしまうケースです。これは財産分与とは認められず、夫婦間の贈与とみなされて贈与税の対象になることがあります。贈与税は「基礎控除110万円を超えた部分に、最大55%という高い税率」がかかります。ですから、売却の準備は別居中に進めてよいものの、お金を実際に分けるのは離婚成立後にするのが基本です。
③タイミングを誤ると特例が使えずローン規約違反の恐れも
加えて、家そのものを相手に名義変更で渡す場合も、離婚成立後が安全です。「居住用不動産の3,000万円特別控除(マイホームを売るときに税金を抑える特例)」は、成立前の配偶者への譲渡では使えないためです。また、所有者自身が家を出て別居を先行させる場合、住宅ローンの規約違反になる可能性があるため、事前に金融機関へ相談しておきましょう。
「準備は別居中、分配は離婚後」。これが、損をしないための基本ルートです。
名義が自分でも独断は禁物

さらにもう一つ。家の名義が自分にあるからといって、あるいは夫婦の共有名義だからといって、独断で売り進めるのは禁物です。
①単独名義でも勝手に売れば清算を求められる
たとえ「単独名義」であっても、結婚してから手に入れた家は財産分与の対象になります。仮に相手に断りなく売って現金化しても、別居した時点を基準に、相手から財産分与(原則2分の1)を求められます。名義が自分でも独り占めはできず、あとから清算を求められる点に注意が必要です。
②共有名義は「持分の売却」トラブルに注意る
また、「共有名義」の場合は、相手が自分の持分だけを第三者へ売ってしまうこともあります。逆に、自分の持分だけを売ることも可能ですが、相場より安く買い叩かれやすく、見知らぬ第三者と共有状態になるという別のトラブルを招きかねません。
名義の状態にかかわらず、独断で動く前に売却の段取りから相談できる専門家へ早めに声をかけるのが安全です。
別居中にやるべき「家の売却」の段取り
では、具体的に別居中にやるべき「家の売却」の段取りを解説します。やるべきことを順番に整理すると落ち着いて進められます。
①住宅ローンの残債を確認する
まず、住宅ローンの残債を確認します。売却額が残債を上回るアンダーローンか、下回るオーバーローンかで、その後の進め方が大きく変わるからです。残債の額は、金融機関から届く返済予定表や残高証明書で確認できます。
②家の査定額を把握する
次に、家の査定額を把握します。今いくらで売れるのかが分からなければ、財産分与の話し合いも始まりません。査定は複数の会社に依頼すると、相場観がつかみやすくなります。
③別居後の期間に注意する
さらに、注意したいのが別居後の期間です。家の売却益に対する居住用不動産の3,000万円特別控除には「住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日まで」という期限があります。所有者が別の場所に住んでいる場合、その期限に注意が必要です。
④財産分与の分け方を取り決める
その上で、財産分与の分け方を取り決めます。当事者だけで揉める場合は、家庭裁判所の財産分与調停や公正証書を活用すると、後々のトラブルを防げます。財産分与を求める権利は、民法(民法第768条)に基づくものです。
⑤代金の分配は離婚成立後に行う
加えて、売却の準備や査定は別居中に進めつつ、代金の分配は離婚成立後に行います。前述のとおり、成立前の分配は贈与税の恐れがあるためです。
この段取りを踏めば、感情的な対立をできるだけ避けながら、公平な清算に近づけます。
揉める・急ぐ家は「買取」という売り方を
最後に、以上を踏まえて具体的な不動産の売り方を解説します。別居中の家の売却には、大きく「仲介」と「買取」の2つがあります。状況によってどちらが向くかを知っておくと、相談先を選びやすくなります。
①不動産仲介で売却する
仲介は、不動産業者が買い手を探す方法です。時間をかければ相場に近い価格で売れる可能性がありますが、内見への協力や、住んでいる人の退去が前提になります。ただし、夫婦間で対立していると、この前提が崩れて成立しにくくなります。
②不動産業者へ直接売却する
買取は、不動産業者が直接買い取る方法です。価格は仲介の相場より下がる傾向があるものの、内見が不要で、現況のまま短期間で現金化でき、周囲に知られにくいという利点があります。立ち退きや複雑な権利関係も含めて相談できるのが強みです。
「別居で話し合いが難しい」「急いで現金化したい」「立ち退きが絡む」そんなケースでは、時間と対立のコストを避けられる分、買取が結果的に納得のいく選択になることもあります。こうした「お困り物件」の相談実績がある不動産業者であれば、売却して財産分与の原資(現金)を確実につくることができます。
まずは無料査定で、今いくらで売れるのかを知ることから始めましょう。大切なのは、住んだまま無理に買い取ってもらうことではなく、きちんと売却して公平に分ける、現実的な出口を見つけることです。
まとめ
今回の記事では、別居中の家の売却で押さえるべき段取りと、自分に合った売り方の選び方を解説しました。
はじめに、別居中に家を売れるかどうかは、2つの点で決まります。
①名義によって「売る権限」が変わる
②住宅ローンの残債で「売り方」が変わる
売却が難しい理由は、「人が住んでいる家は売れない」のではなく、離婚をめぐって「当事者が対立している状態」であるときです。
①住む側の協力が得られないと売却は止まる
②立ち退きが絡む物件は仲介で敬遠される
そして、別居中の家の売却で見落とされがちなのが、税金と「お金を分けるタイミング」です。
①「財産分与だから非課税」とは限らない
②離婚成立前に分けると「贈与税」で損をする
③タイミングを誤ると特例が使えずローン規約違反の恐れも
さらに、家を独断で売り進めるのは禁物です。
①単独名義でも勝手に売れば清算を求められる
②共有名義は「持分の売却」トラブルに注意
では、具体的に別居中にやるべき「家の売却」の段取りは以下。
①住宅ローンの残債を確認する
②家の査定額を把握する
③別居後の期間に注意する
④財産分与の分け方を取り決める
⑤代金の分配は離婚成立後に行う
以上を踏まえ、別居中の家の売却には、大きく「仲介」と「買取」の2つがあります。
①不動産仲介で売却する
②不動産業者へ直接売却する
「別居で話し合いが難しい」「急いで現金化したい」「立ち退きが絡む」そんなケースでは、まずは無料査定から始めてみてください。
私たちエスエイアシストは、入居者がいる古いアパートや借地・底地、再建築不可物件など、扱いが難しい「お困り物件」のご相談を数多くサポートしてきました。
「どこに相談すればいいか分からない」「家族に迷惑をかけたくない」と感じている方こそ、ひとりで抱え込まず、まずは現状をお聞かせください。お客様の状況やご希望を踏まえ、無理のない出口プランを一緒に考えます。お困りの物件でお悩みの方は、ぜひエスエイアシストまでご相談ください。
【参考エビデンス・出典】
・国税庁「No.4414 離婚して財産をもらったとき」
離婚に伴う財産分与として受け取る財産には原則として贈与税がかからないこと、および例外的に課税されるケースについて解説されています。
URL:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4414.htm
・国税庁「No.3302 マイホームを売ったときの特例」
居住用不動産の3,000万円特別控除の適用要件や期限(住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日まで)などについて解説されています。
URL:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3302.htm
・アトム法律事務所「離婚前に財産分与できる?税金の違いや前渡しとの関係について解説」
離婚成立「前」に売却代金などを渡すと財産分与と認められず贈与税の対象になる恐れがある点や、別居時点を基準とした財産分与の考え方などについて解説されています。
URL:https://atomfirm.com/rikon/8651
・e-Gov 法令検索「民法」
離婚時の財産分与を求める権利(第768条)など、記事内で触れている法的な権利義務の根拠となる条文が確認できます。
URL:https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
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