
独自のノウハウにより、入居者がいる古いアパートや借地・底地、再建築不可物件など、他の不動産会社では取り扱いづらい「お困り物件」を解決に導いてきた、不動産・用地開発のスペシャリスト・株式会社エスエイアシストがお届けする「お困り物件コラム」。第143回目は「要除却認定を受けたマンションの売却」です。
築年数が40年を超え、漏水や設備不良、外壁の傷み等が目立ち始め、総会でも「建替え」の議論が立ち始めると、「このまま住み続けて大丈夫だろうか」と不安になるものです。とはいえマンションは一棟を複数人で所有するため、建替えや建物全体の売却といった大きな決断は、個の意思だけでは進みません。結論から言えば「要除却認定」を受けた場合、それを起点に公的制度を活用して「みんなで出口を作る」方法がある一方で、そうした合意形成の長期戦や感情的対立から早く離脱するために、あえて「個人として買取で整理する」道もあります。
今回の記事では、要除却認定の基本と制度ルートの違いを整理し、認定を受けるような老朽化マンションを安心して売却する判断材料を、分かりやすく解説します。ぜひ最後までお付き合いください。
「要除却認定とは?」マンション再生円滑化法と2026年改正区分所有法を解説

長く住んだ住居、高齢になり永住意識が強まる一方で、一棟を複数人で所有するマンションでは、個人の意思だけでは決められない合意形成の難しさが常に付きまといます。中でも、「要除却認定」を受けるような老朽化したマンションを取り巻く問題は大きく、国も問題意識を持っており、昨今では法律が大きな転換期を迎えていると言えます。そのポイントは以下です。
①「要除却認定」は解体が必要と行政が公的に認めること
その起点となるのが「要除却認定」です。これは、耐震不足だけでなく、火災時の安全性や外壁の剥落、配管の腐食・バリアフリー不適合などといった5つの観点から、客観的に見て「除却(解体)を含む抜本的対策の必要性がある」と行政が公的に認める制度です。認定を受けることで、建物の老朽化が公的に裏付けられ、建替えや売却といった再生手法を検討する際の強力な根拠となります。
②時代の要請による法律の変遷「マンション再生円滑化法」へ
かつての「マンション建替円滑化法」は、その名の通り「建替え」を主眼に置いた法律でした。しかし、建替えが困難な物件の急増を受け、現在は売却や除却を視野に入れた「マンション再生円滑化法」へと進化します。これにより、制度の対象が全てのマンションに拡充され、多額の持ち出しが必要な建替えを諦めていた区分所有者にも、新たな出口が開かれることになります。
③2026年4月施行の「改正区分所有法」によって大きな決定をしやすく
さらに2026年4月からは、要除却認定を受けたマンションにおいて、(一定条件下の)建替えや敷地売却といった重要決議要件が「4/5以上」から「3/4以上」へ緩和される見込みです。また、所在等不明の所有者がいる場合に、裁判所の認定と必要なプロセスを経ることで、決議の多数決の母数から除外できる仕組みも整備され、これまで膠着していた話し合いが大きく動き出すことが期待されています。
このように、法制度は私たちの住まいを守るだけでなく、限界を迎えた建物をどう「終わらせるか」をサポートする役割も担うようになっています。
「平均1,941万円の重圧!」要除却認定マンションの建替えが難しい現実
とは言え、愛着のある土地に住み続けたいと願っても、現実には要除却認定を受けたマンションの「建替え」が極めて難しい現実があると言わざるを得ません。
①自己負担額「平均1,941万円」の重圧
かつてのように余剰容積率を売って費用を賄える物件は激減しており、定年後の生活資金を切り崩してまで建替えるのは現実的に困難です。たとえ区分所有者間で建替え決議の合意が得られたとしても、自己負担額「平均1,941万円(国土交通省調査データ)」と言われる金銭面の重圧は非常に重いものでしょう。
②修繕積立金の枯渇と増額の現実
現実に、当初の計画通りに積立金が確保されているのは「全体の約3分の1(国土交通省調査データ)」に過ぎないと言われています。そのため、段階増額方式によって将来の積立負担が数倍に跳ね上がる物件も少なくありません。不足分を一時金として徴収しようにも、高齢化した所有者の経済状況から合意を得ることは至難の業です。
③管理組合の運営不全によって決議できない
そして、居住者の高齢化により、管理組合の運営を担う役員のなり手が不足し、建替えの意思決定自体が麻痺してしまうケースが多発しています。そして、法整備が整いつつあっても、管理不全には所在等不明者の問題も大きいと言えるでしょう。連絡が取れない所有者が一人いるだけで、法定の合意形成の難易度は跳ね上がります。
これら金銭面での行き止まりと運営不全の問題によって、多くの区分所有者に建替えを諦めさせる決定打となっているのです。
「対応遅れが負担を増やす?」要除却認定マンションの現状維持をするリスク
ただ、要除却認定を受けたマンションを「建替えもできない、売却するのも難しい」と対応を先送りし現状維持するコトは、リスクを増やす最も避けたいシナリオです。
①築40年超が3.5倍に激増する時代の選別が進む
まず、2022年末時点で築40年を超える高経年マンションは約125.7万戸と言われますが、20年後には約3.5倍の445万戸へと急増する見込み(国土交通省とりまとめ資料)です。市場に古い物件が溢れる時代の流れの中で、適切な対策を講じないマンションは「選ばれない物件」として選別され、資産価値が一気に下落します。
②「管理計画認定」の有無が評価に反映されやすくなる
その裏付けとして、2022年から始まった「管理計画認定制度」などにより、今後は「管理の質」の透明化が進む可能性が高く、より市場価格の評価に反映されやすくなると思われます。その認定を受けられないような管理不全マンションは、中古市場でのローン審査が厳しくなることに繋がり、いざ売却しようとしても買い手がつかない事態に陥りかねません。
③精神的ストレスと家族への負担が増大する
そうして所有者間の合意形成が取れずに総会が空転し続ける状態は、区分所有者にとって計り知れないストレスとなります。放置すれば将来的に、膨大な解体費用や管理責任といった負債を家族に押し付けることになり、子世代の生活まで脅かすリスクがあります。
これらは、時間経過が解決策を運んでくれるワケではありません。むしろ、対応が遅れるほど選択肢は少なくなり、負担だけが増えていくのです。
「建替えより進めやすい?」要除却認定マンションを敷地一括売却するメリット

そこで、要除却認定を受けたマンションの建替えが難しい場合に、有力な対抗策として注目されているのが「敷地一括売却制度」です。そのメリットは以下。
①建替えより所有者間の合意が比較的得やすい
ひとつに、多額の自己負担金を払って新築マンションを再建する手間がなく、今の土地と建物をまとめて売却して現金化できる可能性があります。手出しがないことで所有者間の合意が比較的得やすく、区分所有者それぞれの売却後の生活状況に合わせた住み替えの青写真を描けるようになります。
②買受人が見つかれば確実な現金化ができる
つぎに、耐震不足などの問題を抱えたまま個別の部屋を売るのは困難ですが、一棟丸ごとであれば開発用地としての価値が生まれます。立地等の条件が良くてデベロッパー(土地開発業者)などの買受人が見つかれば、老朽化した資産を確実な現金に変えることができます。
③容積率の緩和が売却価格上昇の期待ができる
加えて、要除却認定を受けることで「容積率の緩和(都市計画で定める敷地面積に対する延べ床面積の割合を上乗せすることで増床できる)」が適用できる見込みが立てば、本来よりも大きな建物が建てられるようになります。その分買受人の評価に反映されれば土地としての「稼ぐ力」が上がるため、売却価格に上乗せされる期待が持てるのです。
ただし、制度はあくまで「道具」であり、それを使いこなして最後まで完走するには、組合員全員の強い結束と専門的な知識が必要になります。
「後悔しない売却のために!」個人でできるマンション売却の準備に集中する
では、管理組合の動きを待つ以外に、要除却認定を受けたマンションの売却に向けて、個人としてできるコトはないのでしょうか。以下のように整理します。
①情報の収集と管理状況の把握
まずは、自身のマンションが「要除却認定」を受けられる状態かどうかを知ることが第一歩です。耐震診断の結果(専有部分のみでも意味がある)や給排水管の劣化状況、長期修繕計画の写しなどを確認し、客観的な事実を把握しておくことが、将来の判断材料になります。
②売却時に利用できる税制の把握と住み替えシミュレーション
また、敷地売却における「1,500万円特別控除(区分個別売却時は不可)」や、「居住用財産の3,000万円特別控除(及び軽減税率の併用)」など、自分が利用できる税制を事前に把握しましょう。手元にいくら残るかを早めに試算し、あわせて取得価格が分かる資料を整理しておくことが大切です。そして、その後の住み替えをシミュレーションしておけば、自身にとっての「撤退ライン」を明確にできます。
③用途転用も含めた価値の再確認
他方、マンションとして再建するだけでなく、オフィスや商業施設などへの「用途転用」も含めて市場ニーズを専門家に相談しておきましょう。土地の価値を広い視点で再確認して多様な出口を想定しておくことで、管理組合への具体的な提案や個人での売却判断に有利に働きます。
こうして組合員として声を上げるコトも大切ですが、まずは個人として「いつ、どのように手放すか」の選択肢を複数持っておくのも重要です。
「長期戦か早期解決か?」要除却認定マンション売却で後悔しないための選択肢
さいごに、制度上の最適解を追い求め条件を整えた上で、要除却認定を受けたマンションを売却すれば、利益の最大化を狙えるかもしれません。ただ、他の区分所有者の合意を待つことには大きな負担がかかるため、「手間・対立・不安から早く離脱する選択肢」として不動産買取があります。
ここでは、敷地一括売却制度を活用したルートと、よりスピーディーな解決を目指す買取ルートを比較していきます。
先述したように、敷地一括売却制度のメリットは、容積率緩和による高値売却の可能性や、手厚い税制優遇を受けられる点にあります。しかし、そのメリットを享受するためには多くのハードルがあります。
・売却決議に4/5以上(法改正後に要除却認定があっても3/4以上)という高い合意が必要
・所在等不明者や反対者への法的手続きに数ヶ月以上の時間と手間がかかる
・デベロッパーとの条件交渉や権利変換手続きが非常に複雑
・合意形成の過程で住民同士の感情的対立(売りたい売りたくない)が深まるリスク
・最終的な現金化までに数年単位の長期戦を覚悟しなければならない
敷地一括売却によって高いリターンを得るためには、看過できない負担があるのも現実です。
一方で不動産買取は、市場相場に近い売却価格は望みにくいものの、要除却認定を受けたマンションの売却戦略として有効です。そのメリットを以下にまとめます。
①管理組合の合意を待たず個の意思で行動できる
不動産買取は、管理組合の決議や合意、反対者の説得を待つ必要はありません。自身の所有持分を個の意思のみで専門業者に直接買い取ってもらうことは、周囲の状況に左右されずに最短数週間での売却も可能にします。
②早期の現金化で次の生活へスムーズに移行できる
また、要除却認定を受けるような老朽化したマンションの問題は、放置するほど精神的な重荷となります。買取であれば、早期にまとまった資金を確保でき、住み替えや老人ホームへの入居資金など、次の人生設計を確実に進めることができます。
③現状のまま物理的トラブルから離脱できる可能性がある
さらに、配管の故障や外壁剥落といった物理的なトラブル、住民間のトラブルもそのままで引き渡せます。契約不適合責任(契約との相違に対する売主責任)について売買契約で免責特約を結べれば、将来の修繕費負担や事故リスクを抱え続けることなく、心穏やかな日常をいち早く手に入れることができます。
たしかに要除却認定は、老朽化マンションの売却において直面する行き止まりを打破するための「鍵」です。しかし、その鍵を使って開ける扉が「制度による長期戦」なのか「買取による早期解決」なのかは、所有者さん一人ひとりの判断に委ねられています。
どちらが正解かは、資産状況や家族構成、そして「何に価値を置くか」によって決まります。まずは両方のメリット・デメリットを冷静に比較し、後悔のない出口を選んでください。
まとめ
今回の記事では、要除却認定の基本と制度ルートの違いを整理し、認定を受けるような老朽化マンションを安心して売却する判断材料を、分かりやすく解説しました。
区分所有者の高齢が進む「要除却認定」を受けるような老朽化したマンションを取り巻く昨今の法律の転換期ポイントは以下です。
①「要除却認定」は解体が必要と行政が公的に認めること
②時代の要請による法律の変遷「マンション再生円滑化法」へ
③2026年4月施行の「改正区分所有法」によって大きな決定をしやすく
このように、法制度は限界を迎えた建物をどう「終わらせるか」をサポートしますが、愛着のある土地に住み続けるためのマンションの「建替え」は非常に困難です。
①自己負担額「平均1,940万円」の重圧
②修繕積立金の枯渇と増額の現実
③管理組合の運営不全によって決議できない
ただ、要除却認定を受けたマンションへの対応を先送りし、現状維持をするコトはリスクです。
①築40年超が3.5倍に激増する時代の選別が進む
②「管理計画認定」の有無が評価に反映されやすくなる
③精神的ストレスと家族への負担が増大する
これらは、対応が遅れるほど選択肢は少なくなり負担だけが増えます。そこで、マンションの建替えが難しい場合に、注目されているのが「敷地一括売却制度」です。
①建替えより所有者間の合意が比較的得やすい
②買受人が見つかれば確実な現金化ができる
③容積率の緩和が売却価格上昇の期待ができる
ただし、制度を使いこなすには管理組合の合意を待つ必要がありますので、まずは個人として「いつ、どのように手放すか」の選択肢を複数持っておくのも重要です。
①情報の収集と管理状況の把握
②売却時に利用できる税制の把握と住み替えシミュレーション
③用途転用も含めた価値の再確認
法制度を活用した敷地一括売却制度のメリットは、容積率緩和による高値売却の可能性や、手厚い税制優遇を受けられる点にありますが、「決議に4/5以上(法改正後に要除却認定があっても3/4以上)の合意」「法的手続きの手間」「デベロッパーとの条件交渉等が複雑」「住民同士の感情的対立」「現金化までに時間がかかる」といった看過できない負担があるのが現実です。
一方で不動産買取は、市場相場に近い売却価格は望みにくいものの、以下のメリットがあります。
①管理組合の合意を待たず個の意思で行動できる
②早期の現金化で次の生活へスムーズに移行できる
③現状のまま物理的トラブルから離脱できる可能性がある
要除却認定を受けたマンションの売却において、「制度による長期戦」と「買取による早期解決」のどちらが正解かは、「何に価値を置くか」によって冷静に比較し、後悔のない出口を選ばなくてはなりません。そのために、まずは不動産の専門家に相談することから始めることが大切です。
私たちエスエイアシストは、入居者がいる古いアパートや借地・底地、再建築不可物件など、扱いが難しい「お困り物件」のご相談を数多くサポートしてきました。
「どこに相談すればいいか分からない」「家族に迷惑をかけたくない」と感じている方こそ、ひとりで抱え込まず、まずは現状をお聞かせください。お客様の状況やご希望を踏まえ、無理のない出口プランを一緒に考えます。お困りの物件でお悩みの方は、ぜひエスエイアシストまでご相談ください。
【エビデンス・出典】
・要除却認定実務マニュアル
記事の前提となる「要除却認定」の5つの基準(耐震、火災、外壁剥落、配管腐食、バリアフリー)や、その調査・判定方法が詳細に定義されている一次情報です。
・今後のマンション政策のあり方に関する検討会 とりまとめ
記事内で引用した「築40年超のマンションが20年後に約3.5倍(445万戸)へ急増する」という将来推計や、マンション管理を巡る現状の課題が網羅された資料です。
・マンションを取り巻く現状と課題
記事内の問題提起で使用した「建替え時の区分所有者の平均負担額(約1,941万円)」や、「修繕積立金が不足しているマンションの割合」などの統計データがグラフ等の形式で示されている資料です。



