
独自のノウハウにより入居者がいる古いアパートや借地・底地、再建築不可など、他の不動産会社が取り扱いづらい“お困り物件”を解決に導いてきた不動産・用地開発のスペシャリスト、株式会社エスエイアシストがお届けする“お困り物件”コラム、第104回目は「準共有状態での不動産相続」です。
「親が住んでいた借地権付きの家を兄弟姉妹で相続したけど、話がまとまらない…」「親に任せっきりだった地主との関わり方に困惑している…」など、そんな悩みを抱える方がいます。借地権付き不動産を複数人で相続すると、「準共有」という少しややこしい状態に加えて、土地を借りている地主さんとの関係性にも難しさを感じてしまうのかもしれません。実は、これらがトラブルのもとになりやすいのです。
今回の記事では、借地権を準共有状態で相続したときにやるべきことや、地主との関係や法改正のポイントまで、分かりやすく解説していきます。最後まで読んでいただければ、「自分のケースではどう動くべきか?」が見えてくるハズです。
借地権を準共有状態で相続したらどうなる?

はじめに、そもそも「借地権」とは、「地主(土地の所有者)から土地を借りて建物を所有する目的に使用する権利」のことです。借地人さんは、地主さんに地代を支払いながら土地に建物を建てて活用することができます。この権利は資産としての価値を有しているため、相続も発生することになります。
そんな借地権が付いた不動産を、兄弟姉妹など複数人で相続したら、どうなるのでしょうか?その「借地権を複数人で共有する状態」を「準共有」といい、それぞれの持分が法定割合で分割され、権利を共有していることになります。
相続人が一人なら特に問題はありませんが、借地権という契約上の一つの権利でありながら、実際には複数人での意思決定が求められることになります。スムーズに管理や活用ができないことも増え、結果として物件の処分や維持が進まず、トラブルへと発展するケースも少なくありません。
ちなみに、今回は深掘りはしませんが、一般的な借地権には2種類あり、
・普通借地権:契約更新ができ長期的に借り続けることができる借地権
・定期借地権:契約期間終了時に更地にして土地を返すことになる借地権
この違いによって、売却や建て替え、相続の難易度も異なるため、どちらの契約かを把握しておくことも重要です。
準共有状態だとトラブルになりやすい理由!
話を戻しますが、準共有状態自体には法律上の問題はないものの、現実的な運用面ではトラブルになりやすいことになります。共有持分のある複数人がいることで、以下のような問題が出てきます。
①意思決定に全員の同意が必要で停滞しやすい
まず、建物の売却、建て替え、増改築など、大きく重要な意思決定をする際には、原則として準共有者全員の同意が必要となります。そのため、1人でも反対するようなことがあれば、手続きは進まず停滞しやすくなります。
②維持管理や金銭的負担は誰が負うのか
また、建物の修繕や維持管理には、
・地代や固定資産税といった支払い
・修繕費といった費用の負担
・業者手配やその他手間
そして地主さんとの関係形成など、これらの「負担は誰が負うのか?」という問題があります。原則としては、持分割合に応じて負担することになりますが、ときに共有者間で支払いや負担割合について合意が取れず揉めてしまうことがあります。
③連絡が取れない相続人がいると手続き不能になる
さらには、相続人の中に連絡が取れない人がいると、重要な判断が出来なくなることもあります。こうした事態が長引くと、建物が老朽化して資産価値が下がる、近隣トラブルにつながる、といった二次的な問題も起こりえます。
相続登記義務化と遺産分割協議!
こうした準共有状態の問題を「面倒だから…」と放置してしまうにも、特に今後は大きなリスクが伴います。具体的には以下です。
①相続登記義務化により罰則あり
一つに、2024年4月から不動産を相続した場合には「相続登記が義務化」されました。法定相続人が相続を知ってから3年以内に登記を行わないと、10万円以下の過料が科される可能性があります。この法律の目的は、「不動産の所有者を明確にすることでトラブル防止するとともに、所有者不明の土地が増加する社会問題を解決する」ものです。
ただ実は、当該法施行以前の相続をも対象となっています。たとえ準共有であっても、各相続人ごとに持分の登記義務がありますので、「誰かがやってくれるだろう」という他人任せでは済まなくなります。
ちなみに、相続放棄(不動産に限らず一切の相続を、受け継がないことを法的に手続きすること)するにも、相続の開始を知った日から3ヶ月以内です。相続を知っていたにも関わらず放置してしまうと、手続きは出来ません!
②遺産分割協議が進まない
そのため、不動産相続が発生したら、早めに「誰が何を相続するのか?」を決める「遺産分割協議」を法定相続人全員で行うことが大切です。万が一、全員が揃わない場合は、法的には無効になってしまうので、所在不明者や音信不通などがあれば、「不在者財産管理人」や「法定代理人」を立てることになります。
もちろん、相続人間の関係性が良好で合意形成しやすいのであれば、準共有のままという判断もありますが、この時に話し合いで借地権を一人が取得することになれば、その人の単独名義で登記が可能となり、管理や処分もスムーズになります。他の相続人には、他の資産を分けたり代償金を充てたりするなどで、公平に対応するという方法もあります。
③遺産分割調停で揉める
もし、法定相続人間で「理不尽な主張をする人がいる…」「話し合いが平行線…」「そもそも相続人同士仲が悪くて話にならない…」など、遺産分割協議がうまくいかず話がまとまらない場合には、家庭裁判所に申し立てて「遺産分割調停」に進むことも検討しましょう。第三者を交えて解決を図ることで冷静な話し合いができ、法的な力で合意形成しやすくなります。
それでも合意が進まない場合は「遺産分割審判」で、多くの事象から鑑みて裁判所が判断を下すことになります。さらに、相続人間の争い事にまで発展するようなことがあれば、最悪は公開の場での「訴訟」が行われるケースもあり得ます。
借地権は地主との関係性にも悩む!

そして、借地権を相続したら、避けて通れないのが「地主との関係構築」です。ケースにもよりますが、地主さんにとって借地にした土地というのは、代々受け継いできた大切な資産であり、貸している相手との信頼関係を非常に重視しています。
一方で、普通借地権では「一度貸したらなかなか戻ってこない、自身の土地でありながら自由に活用できない」ために、悩みを抱えてしまっている地主さんもいます。
ここに、感情がこじれている場合、名義変更や更新、売却といった場面で承諾が得られずトラブルに発展することも少なくありません。そんな中、取るべき対応や起こり得る状況には以下のようなものがあります。
①名義変更や報告の必要性
まず、借地権を相続したら原則として地主さんに報告し、名義の変更について話し合う必要があります。これは法律で義務付けられているわけではありませんが、地主さんとの信頼関係を築いていくうえで非常に重要なポイントです。
重要な報告、名義が変わったにも関わらず連絡がないと、「このまま貸し続けて大丈夫だろうか」「契約条件を見直したほうがいいのでは?」と地主さん側に不信感を与え、以降の交渉が難航することもあります。そのため、なるべく早い段階で連絡することが望ましいです。
②承諾料や名義変更料が発生する
その名義変更の際には、地主さんから「承諾料」あるいは「名義書換料」などの名目で金銭を請求されることがあります。これは、名義変更に対して地主が“承認”を与える見返りとして求めるもので、法的義務ではない(場合が多い)ものの、実務上は一般的です。
ただ、発生する金額はケースバイケースで、地主さんの考え方や地域慣習、契約内容などによっても異なります。思わぬ負担になることもあるので、事前に想定しておく必要があります。
③契約内容の変更を求められることも
さらに、相続という節目は、地主さんにとっても「契約を見直す良いタイミング」と考えられることがあります。「借地権の内容を変更したい」と申し出てくるケースも珍しくなく、たとえば…、
・固定資産税の上昇などを理由とした、地代の値上げ
・更新料の取り決めの追加、または金額の見直し
・借地期間の短縮や更新条件の変更
などといった変更は、借地人側にとって不利な条件となることもあるため、安易に承諾してしまうと将来的に大きな負担となる恐れ。対応する際には、地主さんからの申し出が契約内容や法律に照らして妥当なものか、借地契約書の確認とともに不動産に詳しい専門家さんの意見を仰ぐのがおすすめです。
放置せず準共有状態を解消するには?
ここまで見てきたように、借地権の準共有状態を放置すると、相続人同士のトラブルだけでなく、地主との関係悪化や法律上のリスクにも発展する恐れがあります。だからこそ、できるだけ早めにこの状態を解消することが大切。
代表的な解消方法としては、以下のようなものがあります。
①借地権を一人に名義を集約する
もっとも現実的でスムーズなのが、遺産分割協議で一人に借地権を引き継いでもらい、単独名義にしてしまう方法です。その人が地代や管理を行い、他の相続人には代償金などで調整します。
相続後のトラブルを防ぐ上での最善策と言えますが、合意形成には時間と労力を要するため、冷静な話し合いが不可欠です。その場合は、一旦は準共有状態のまま登記を行い、将来的には一人に買い取ってもらい集約するという考え方もあるでしょう。
②借地権を地主に買い取ってもらう
また、地主さんに借地権ごと建物を買い取ってもらえば、借地契約そのものが終了し、スッキリと問題を整理することができます。地主さんにとっても、土地活用に自由を取り戻し完全所有権にできるワケなので、メリットがあります。
ただし、地主さんが買い取りに応じるかどうかはケースバイケースであり、市場相場よりも安く見積もられる可能性もあるため、相場感と丁寧な交渉が必要です。
③借地権全体を第三者に売却する
そして、準共有者全員の同意を得て、借地権全体を第三者さんに売却することも可能です。相続直後に売却先を見つけることができれば、まとまった資金として相続人間で分配し、相続税の納付期限までに納付金を準備できるかもしれません。
ただし、相続登記が済んでいないと売買契約は結べないため、合意形成や手続きと平行して売却活動をしなくてはなりませんし、借地権付き建物の需要は一般的な不動産より低く、急げば買い叩かれるケースも少なくありません。加えて、売却には地主さんの承諾が必要であり、承諾料が発生する場合もあるため注意が必要です。
④自分の持分のみを他の相続人に売却する
さらに、準共有状態で相続登記をしたものの、人間関係の悪化から「管理に関わりたくない」「手を引きたい」と思う場合、自分の持分だけを他の相続人さんに売却するという方法もあります。ただし、買い取ってもらう相手がいるとは限らず、価格の交渉で揉めることも多いため、現実的にはハードルはやや高めです。
⑤不動産買取業者に買い取ってもらう
さいごに、「共有者間での合意形成が難しい」あるいは「地主とのやり取りが負担」という場合には、不動産買取業者さんに買い取ってもらうことをおすすめします。借地権の一部である共有持分のみを買ってくれる買い手さんを一般市場から見つけるのは、現実的には非常に困難とされています。
それに対して、準共有状態や借地権付き物件に詳しい業者さんであれば、
・複雑な手続きを代行してくれる
・現状のまま買い取ってもらえる可能性あり
・音信不通の共有者がいる通常では進めづらい案件でも対応
・精神的・時間的負担を軽減しながら問題をスムーズに整理
・直接取引で契約がまとまれば現金化が早い
といったメリットが得られるため、検討する価値はあるでしょう!
まとめ
今回の記事では、借地権を準共有状態で相続したときにやるべきことや、地主との関係や法改正のポイントまで、分かりやすく解説してきました。
「借地権」とは、「地主(土地の所有者)から土地を借りて建物を所有する目的に使用する権利」のことで、相続も発生します。そんな「借地権を複数人で共有する状態」を「準共有」といいます。一つの権利に複数人での意思決定が求められるので、トラブルへと発展するケースも少なくありません。
準共有状態自体には法律上の問題はないものの、共有持分のある複数人がいることで、以下のような問題が出てきます。
①意思決定に全員の同意が必要で停滞しやすい
②維持管理や金銭的負担は誰が負うのか
③連絡が取れない相続人がいると手続き不能になる
こうした準共有状態の問題を放置してしまうとリスクが伴います。
①相続登記義務化により違反者には罰金あり
②遺産分割協議が進まない
③遺産分割調停で揉める
そして、借地権について地主さんからすれば、
・代々受け継いできた資産を使う借地人との信頼関係を重視
・「自身の土地でありながら自由に活用できない」悩みを抱えている
ここに感情がこじれている場合、重要な場面で地主さんとのトラブルに発展することも少なくありません。そんな中、取るべき対応や起こり得る状況には以下。
①名義変更や報告の必要性
②承諾料や名義変更料が発生する
③契約内容の変更を求められることもある
相続という節目は、地主さんにとっても「契約を見直す良いタイミング」であり、
・固定資産税の上昇などを理由とした、地代の値上げ
・更新料の取り決めの追加、または金額の見直し
・借地期間の短縮や更新条件の変更
などは、借地人側にとって不利な条件となることもあり、将来的負担になる可能性。
この借地権の準共有状態を放置すると、関係悪化や法律上のリスクにも発展する恐れがあるので、以下のような解消方法で対処します。
①借地権を一人に名義を集約する
②借地権を地主に買い取ってもらう
③借地権全体を第三者に売却する
④自分の持分のみを他の相続人に売却する
⑤不動産買取業者に買い取ってもらう
準共有状態や借地権付き物件に詳しい買取業者さんであれば、
・複雑な手続きを代行してくれる
・現状のまま買い取ってもらえる可能性あり
・音信不通の共有者がいる通常では進めづらい案件でも対応
・精神的・時間的負担を軽減しながら問題をスムーズに整理
・直接取引で契約がまとまれば現金化が早い
といったメリットが得られるため、検討する価値はあるでしょう!
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