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建物を解体するときにアスベスト(石綿)の事前調査が義務化されていることはご存知ですか?今回は、アスベストの事前調査の義務化や背景、そんなアスベストが残る建物を売る方法について解説します。ぜひ最後まで読んで役に立ててください!
1.アスベスト(石綿)って何?
2006年の労働安全衛生法施行令改正により、アスベスト含有率が0.1%を超えるものの製造、輸入、譲渡、提供、使用が全面禁止されました。アスベストを含有する製品の製造が中止になったことで、アスベストを知らない方もいると思います。まず、アスベストとはどういったものかを解説していきます。
①アスベストって何?
アスベストは、鉱物の一種で髪の毛の5000分の1ほどの細さを持ち、非常に軽く加工が簡単なことや、安価なことが特徴です。この安さや使いやすさ、さらには断熱性、保温性、耐火性などから、古くから建材として広く利用されてきました。
ところが、アスベストの細かい繊維を吸い込むと、さまざまな健康被害を引き起こすことがわかりました。そのため現在では、法改正により使用が全面禁止となっています。
②アスベストの健康被害とは
アスベストはこのように広く建材として使われていましたが、20世紀以降から、建材メーカーの労働者や工場周辺住民の間で健康被害が訴えられ、その原因が工場内で扱われていたアスベストであることが認定されました。
呼吸によって肺などに入り込んだアスベストの繊維は、体内に入ってから長い年月をかけて、肺の組織に沈着して病気を引き起こします。吸い込んだアスベストが原因とされる疾患には、石綿(アスベスト)肺、肺がん、悪性中皮腫などがあります。
アスベストの有害性は、1960年代には判明し、1970年代以降だんだんと規制が進んでいきましたが、危険性がしっかりと認識されたのは1990年代以降でした。しかしながら、2006年の法改正以前に建てられた建物については、アスベストが使用されている例が少なくありません。
アスベストの健康被害によって、なんと年間1,000件前後で保険給付がある事や、2021年5月には、最高裁判所が建設アスベストに関する訴訟において、国とメーカーの責任を認める判決を下したこともあり、アスベストの法規制に関しては、年々強化され続けています。
2.解体をする時、アスベストの事前調査が義務化に!
2023年4月1日から、建築物等の解体・改修工事を行う施工業者は、大気汚染防止法により、アスベストを含む建材の有無に関する事前調査結果を、都道府県等に報告することが義務づけられています。さらには、「建築物石綿含有建材調査者」や「アスベスト診断士」という有資格者による調査報告の義務化が始まりました。
原則として、事前調査は全ての工事が対象となります。工事規模や請負金額は関係ありません。しかし、以下の工事では調査のみが必要で、報告が不要になる場合があります
・床面積80㎡未満の解体工事
・請負金額税込100万円未満の改修工事
・請負金額税込100万円未満の工作物の解体・改修工事
なお、電球交換などの軽作業、道路の補修作業など、一部の作業についてはアスベスト調査が免除されますが、詳細をアスベスト除去業者や各自治体の窓口に問い合わせる必要があります。
アスベスト事前調査の報告を怠ると、大気汚染防止法に基づき、30万円以下の罰金を科せられます。また、アスベスト除去などの措置義務に違反すると以3か月以下の懲役又は30万円以下の罰金となります。
3.アスベストが残っていても売却は可能?
アスベストのリスクについて解説しましたが、アスベストが残っている建物を売却することは可能なのでしょうか。売却しないまま空き家として放置した場合は倒壊のリスクが高くなり、結果的にアスベストが散布されることにもなりかねません。
アスベストが残っていても売却できる
結論からいうと、アスベストが残る建物でも売却することは可能です。
アスベストは健康被害があるとはいえ、売主と買主の双方がその事実について認知したうえで売却するのであれば問題ありません。そのため、売却するときにはアスベストが残っていることをきちんと伝え、それでも購入すると判断した買い手に売却しましょう。
ただし、アスベストが残っていると分かっている不動産は当然買い手がつきにくく、販売の長期化や価格が相場より安くする必要などがあります。このように、アスベストが残っている不動産は売却することは可能ですが、工夫が必要ということを知っておきましょう。
契約時には調査に関する重要事項説明書が必要
アスベストが残っていることを公開したうえで買い手が見つかり、売買契約を締結することになった場合には、アスベストの調査に関する説明義務があります。
ただし、説明は売主ではなく契約前に宅地建物取引士(宅建士)が行います。重要事項説明書に調査結果を記載し、口頭でも説明をします。調査は建物のどの部分にどのくらいのアスベストが使われているのかを示した調査書を買い手に開示し、誤解や齟齬がないよう進めます。
つまり、アスベストが残っている建物を売却する際にはアスベストの調査費が必要ということになり、相場は1〜5万円前後です。このように、売主は通常の建物よりも諸費用がかかることを知っておく必要があります。
アスベストの使用がわからない不動産の売却は?
アスベスト使用の有無がわからない場合は、アスベストが使用されている不動産の売却と同様に、買主から工事に掛かる費用程度の値下げを交渉される可能性が高いです。また、売却しようとしている不動産が賃貸物件の場合は注意が必要です。
賃貸物件で入居者に健康上の問題があった場合、民法上の「土地の工作物等の占有者及び所有者の責任(土地工作物責任)」によって損害賠償を請求されるケースもあります。 なお、国土交通省のホームページでは、賃貸物件については不動産取引を円滑に行うためにもアスベストの調査をすることが推奨されています。
4.アスベストの使用調査や解体費用が気になるなら買取業者の検討を!
使用調査の手間や除去の費用負担、買主との余計なトラブルを避けたいという方は、所有する不動産を不動産会社や買取再販業者に買い取ってもらう方法もあります。 アスベストが使用されている不動産の場合、仲介だとアスベストがネックとなって売れるまでに時間がかかる可能性がありますが、買取であれば不動産会社が提示した査定金額がそのまま売買価格となるのですぐに売買契約ができます。
また、仲介の場合は、買主が一般の人になるケースが多く、引渡し後に建物に不備があった場合は契約不適合責任を負う義務があり、指摘された不備については売主が修補する必要があります。その点、買取の場合は契約不適合責任を免責にしてくれるケースが多いです。
契約不適合責任を免責にしてもらえば、引渡し後に買主から費用を請求されることはありません。ただし、買取は相場価格よりも2割〜3割程度安くなります。
価格が安いことはデメリットのように感じますが、売却後に不具合が発見されて、支払いややり取りが発生する可能性もあり、買取でも仲介でも売主の経済的利益はあまり変わらないケースも多いです。むしろ、買取によってその後の支払いややり取りがなくなるメリットのほうが大きいでしょう。
まとめ
売却したい不動産が2006年以前に建てられた建物の場合、アスベストが使われている可能性があります。アスベストが使われている不動産を売却することは可能で、売却前の工事や調査は必須ではありませんが、アスベストが使われている可能性がある不動産は買主から敬遠されることや減額交渉されるケースが多いです。また、重要事項説明書にアスベストに関する記載をするなど、買主との間でトラブルが起こらないような準備も重要です。
売却後のトラブルなどを防ぐには不動産会社や買取再販業者に買い取ってもらうほうが良い可能性があります。所有する不動産の売却をトラブルなく終えるために、築年数が古い建物の売却は不動産会社に相談しながら進めることがおすすめです!
アスベスト調査やアスベスト使用物件の売却などでお悩みの方は、ぜひ一度弊社にご相談ください!お待ちしています。