独自のノウハウにより入居者がいる古いアパートや借地・底地、再建築不可など、他の不動産会社が取り扱いづらい“お困り物件”を解決に導いてきた不動産・用地開発のスペシャリスト、株式会社エスエイアシストがお届けする“お困り物件”コラム、第88回目は「袋地の売却」です。
親御さんから相続した、隣地に囲まれ敷地に道路が面していない「袋地」。「建物は建て替えることが出来ず、売れないし使い道もない…」とお悩みの所有者さんは少なくはありません。袋地はその特性から売却は難しく、使用価値が低いので「死に地」と呼ばれることすらあります。しかし、適切な方法と工夫をすれば、袋地でも売却することが可能になるかもしれません!
今回の記事では、袋地が死に地と呼ばれる理由と、不動産の売却で損をせず少しでも資産価値を高める秘訣について詳しく解説します。最後まで読んで頂くことで、処分に困る袋地から、どうにかして価値を見出すことができるハズです!ぜひお付き合い下さいませ。
袋地とは?死に地と呼ばれる理由!
まず「袋地」とは、「周囲を別の土地である囲繞地(いにょうち)に囲まれていて、道路に面していない土地」のこと。建築基準法において自由に土地を活用するには、前面道路と2m以上接している必要がある「接道義務」を果たさなくてはなりませんが、袋地はこれを満たしていません。
具体的には、次のような状態が袋地に当てはまります。
・住宅地の中で道路から完全に離れている土地である
・出入りするには囲繞地(隣地)を通行しなければならない
・上下水道などインフラ設備が囲繞地の空中・地中を通さなければならない
このように袋地は、非常に使いにくく、一般的な土地に比べて資産価値が低いものになります。
そんな袋地が、ときに「死に地」と呼ばれる理由は、いくつかあります。それは、その特性と法律上の制約に起因しています。ここでは、袋地のより具体的な問題点を詳しく解説します。
①再建築不可物件である
袋地が最も問題視されるのは、先述の通り「接道義務」を果たしていない点です。接道義務とは「新築・再建築するためには、その土地が幅員4m以上の建築基準法上の道路に2m以上接していなくてはいけない(建築基準法第43条)」というもの。しかし、袋地は道路に面していないため、新築・再建築が出来ない「再建築不可物件」として扱われることになります。
②囲繞地の通行やインフラ整備に心理的負担がある
つぎに、囲繞地の通行やインフラ整備に心理的負担があることです。生活に必要な事象について、囲繞地の所有者さんは基本的に拒否することはできません。それは、民法第210条に「囲繞地通行権」が規定され、袋地所有者さんの保護されるべき権利であるためです。ただし、住人さんに対する配慮の必要性や、必要最低限の利用に限定される上、ときに通行料や使用料を求められる可能性もあります。
③不動産市場での需要が低い
そして、袋地はその使い勝手の悪さから、一般の買い手さんには敬遠されがちです。特に以下の要因が需要の低さに繋がっています。
・利用価値の低さ:新築・再建築できないなどの制約が多い
・住環境が悪い:囲繞地に囲まれて日当たりや風通しが悪い
・融資を受けにくい:金融機関の住宅ローンなどの融資審査が厳しく買い手が限られる
袋地の売却で損をしないために問題点を理解する!
もし、袋地を売却しようと考えたとき、それにはさまざまな制約や問題が立ちはだかります。ただ、その問題点を正確に理解し、一つひとつ対策を考えることで、袋地の価値を引き出す可能性がでてきます。ここでは、具体的な問題とその影響についてさらに詳しく解説します。
①再建築不可物件であり不動産価値が低い
繰り返しになりますが、袋地が抱える最大の問題点は「新築・再建築できない!」ことです。その理由は、建築基準法上の道路に面しておらず、接道義務を果たしていないことに問題があるためです。
・災害時の避難経路の確保できないなど、安全性の問題がある
・売却しづらく不動産価値の低下
・住宅ローンの利用が困難
・建築基準法に違反状態であり行政からの是正指導を受ける可能性
よって、利用や不動産売買に制約が生じ、所有者さんに深刻な不利益をもたらします。
②囲繞地を通行する際に制約がある
つぎに、袋地で生活していくためには、囲まれた囲繞地を日常的に通行しなくてはなりません。先述の通り、これは法律で認められた「囲繞地通行権」によって保障されていますが、以下のような問題が生じる可能性があります。
・通行範囲は必要最小限である
・通行料を求められる場合がある
・車両の通行は制限されることがある
そして、それ以上に理屈と感情は別物であることは忘れてはならず、囲繞地所有者さんとの関係が悪化する可能性など、心理的な負担は無視できません!
③インフラ設備が囲繞地を経由しており所有者の意向に影響される
また、囲繞地を通行できるだけでは、袋地では日常生活は送れません。それは、上下水道・電気・ガスなどのライフライン。インフラ設備が囲繞地を経由していることがあります。これは、袋地が元来独立して機能しづらい土地であることを意味します。その問題点は以下。
・設備の修理や点検・更新には囲繞地所有者の許可が必要で困難である
・工事の際には謝礼などの追加費用がかかる
・インフラの管理や保守が複雑になる
これらは、囲繞地所有者さんの意向次第でライフラインが不安定になりがちになることを意味しています。
④安全面のリスクがある
そして、袋地は建築基準法上の道路に面していないため、安全面でいくつかの問題があります。
・消防車や救急車といった緊急車両が入れない
・避難などの緊急時の対応が遅れる可能性がある
・建物に囲まれ人目につきにくく防犯上に不安がある
火災や災害、空き巣など、緊急時にリスクが高まることは、袋地に住むにあたって不安要素になります。
⑤工事費用が高額になる
さらには、袋地の建物を解体する場合やリフォームする場合、工事に関わる費用が通常より高額になります。
・工事車両や重機が道路から進入が難しく、人力での運搬が必要になることがある
・隣地所有者の同意が必要で、通行料や手数料が発生する場合がある
・通常の土地に比べて作業効率が悪く、工事費用が高くなる傾向がある
こうした工事費用の高さも、資産価値に影響が出てきます。
⑥住環境が悪い
加えて、袋地は建物や土地に囲まれているため、以下の問題もあります。
・日光が入りにくく室内が暗くなりがち
・空気の循環が悪く、夏は暑く、冬は湿気がこもる
・隣地の建物が近いため、視線が気になるといったプライバシーが守られにくい
騒音や臭いなどの問題も起こりやすく、ストレスの多い住環境になります。
⑦住宅ローンが組みにくい
最後に、袋地は金融機関から見て「再建築不可物件」は、担保価値が低いと判断されることが多く、以下のような問題があります。
・住宅ローンの審査が通りにくく、現金払いが前提になる場合が多い
・融資審査が通ったとしても、融資額制限や金利が高くなる
・ローン利用できないことで需要が低く、不動産の売却価格も下がる傾向がある
囲繞地所有者とトラブルになりやすい!
なかなか問題点は多いワケですが、意外と軽視出来ないのが囲繞地所有者さんとの関係性。袋地所有者さんとはトラブルになりやすい傾向にあります。先に述べた通り、囲繞地通行権は民法で定められた権利であり、囲繞地所有者さんは原則として拒否できません。万が一両者間が感情的になると、トラブルは泥沼化します。そんな法的な問題と感情的な問題のハザマで、以下のようなトラブルに発展します。
①通行料や囲繞地通行権の範囲の相違から対立
ひとつに、袋地所有者さんが囲繞地を通行する際、通行料を要求されたり、通行の範囲や条件について対立するケースがあります。
・通行料が高額過ぎる:必要以上に高く設定された通行料の支払いに苦慮する
・通行範囲が制限される:不当に通行範囲を限定し車両の進入が困難になる
・通行時間を制約される:特定の時間帯のみ通行を許可するなど生活や活動に支障が出る
②第三者の利用への理解が得られにくい
また、袋地を第三者に土地を貸したり売却した場合、新たな利用者が囲繞地を通行することで、摩擦が生じることがあります。
・賃借人の通行権拒否:袋地の賃借人の通行を認めないと主張する
・新所有者との関係構築:袋地の売却によって新所有者との両者間で新たな合意形成が必要になる
・利用目的の変更による反対:袋地の利用目的の変更で囲繞地所有者が通行の変化を懸念し反対する
③掘削工事の法的根拠の分かりづらさ
特に気をつけるべきは、囲繞地におけるライフライン確保のための掘削工事。その法的根拠の分かりづらさが、度々問題になります。掘削承諾に関する直接的な法律規定がないためです。
・掘削承諾の必要性:掘削承諾なく工事を行うと、不法行為として賠償責任を問われる可能性
・交渉の困難さ:掘削承諾のための交渉が難航し、工事遅延や追加コストが発生するリスク
・法的救済の不確実性:裁判所判断にて掘削が認められない場合もあり、法的救済の結果が不確実
死に地でも資産価値を高める秘訣5つ!
というワケで、袋地は実際のところ「活用しづらい土地」と言えますが、工夫次第で資産価値を高め、買い手さんにとって魅力的な土地に変えることが可能です。ここでは、袋地の資産価値を最大限に引き出す5つの秘訣について解説します。
①囲繞地と一緒に売却する
まずひとつに、囲繞地と袋地を一緒に売却すること。袋地単体では買い手さんを見つけることは難しいですが、再建築可能な広い土地として売り出すことが出来れば、土地の利用価値が大幅に向上します。それも、袋地と囲繞地との問題は解決した土地です。これは、囲繞地所有者さんにとっても、坪単価が上がるため悪い話ではありません!
②囲繞地の一部と等価交換する
つぎに、袋地の土地の一部と、囲繞地の一部とを等価交換する方法です。これによって、袋地を旗竿地(奥の広い土地と2m以上の通路の土地を合わせた土地)が道路に接するようになれば、再建築不可の問題が解消される可能性があります。その形の切り取り方から囲繞地も土地の形状が整い資産価値が上がるため、広い土地があれば交渉は成立しやすくなります。
③囲繞地の一部を買い取る
そして、囲繞地の一部を買い取ることで、同じく旗竿地として土地を整形することで接道義務を果たす方法です。囲繞地が広い上、建ぺい率(敷地と建物の上から見た面積の割合)と容積率(敷地と建物の総床面積の割合)の法的問題をクリアできれば、交渉の余地があります。これは、囲繞地所有者さんにとっても不動産譲渡所得が得られるメリットがあります。
④位置指定道路の申請をする
さらに、袋地の接道義務を果たせるように、囲繞地の一部を借りて位置指定道路として申請する方法です。「位置指定道路」とは、都市計画区域内で一定の条件を満たした私道を、建築基準法上の道路として行政に認めてもらい、再建築を可能にします。ただ言うは易しで、「幅員4m以上にする」「排水設備を設ける」などなど、諸条件をクリアすることが非常に困難なものです。
⑤囲繞地所有者に売却する
最後に、袋地を囲繞地所有者さんに売却する方法です。一般の不動産市場で買い手さんが見つけられない以上、囲繞地所有者さんが「土地を大きくして土地の価値を上げる」という一番のニーズがあるため成立し易いと言えます。ただ、買うも買わないも自由であるので、足元を見られがちである現実があります。買い叩かれるリスクは付いて回ります。
不動産買取の活用も検討する!
ここまできてお気づきの方もいるかもしれませんが、資産価値を高める秘訣のどれも、囲繞地所有者さんとの交渉が必要です。人は感情の生き物、どんなにメリットがあったとしても、関係性が悪ければ交渉のテーブルにつくことはありません!
どうにもならずに袋地の売却に困ったとき、不動産買取の活用を検討するのも賢い選択肢の一つです。買取の専門業者さんであれば、袋地のような「お困り物件」を取り扱うプロであり、その所有者さんにとって多くのメリットがあり、以下に示します。
①囲繞地所有者との交渉を代行してくれる
所有者間の関係性が悪いと言っても、第三者が入ることでスムーズに話が進むケースも多々あります。買取業者さんが囲繞地所有者さんとの交渉を代行してくれるのは、大きなメリットと言えます。
・囲繞地通行権や掘削承諾の具体的な条件を明確にする
・土地の売買や等価交換などの条件交渉をする
・専門的な知見から位置指定道路の整備計画や行政への申請を進める
これらの交渉は、土地の権利関係や法律の知識が必要な場合も多く、個人で進めるのは非常に困難です。交渉における関係悪化を防ぐのみならず、冷静かつ適正な条件でまとめてもらえる点は大きな魅力です。
②現状のままでも買取可能
例え囲繞地所有者さんとの交渉が、困難であったり長期化するようなことがあれば、不動産買取業者さんであれば、以下の理由から現状のままでも買取可能となります。
・袋地を含む再建築不可物件を取り扱うノウハウがある
・修繕や解体といった追加の費用をかけなくてもそのままの状態で買い取ってもらえる
・トラブル物件であっても解決に向けて時間をかけられる
このように「自分では解決できない問題が多い」と感じる場合でも、買取業者さんが引き受けてくれる可能性は高いです。
③短期間で土地を現金化できる
もしも、囲繞地所有者さんとの交渉がうまくいって、一般仲介での売却に踏み出せたとしても、意見の相違から買い手さんと見つけることに手間取るケースもあります。ご自身に資金の調達ニーズがある場合に悠長に待てないこともあるでしょう。そんな時は不動産買取を活用すれば、短期間で現金化することが可能です。
・買取業者との直接取引で迅速な査定と契約が実現
・買い手探しや内覧対応といった手間を省ける
・相続税の納税や借金返済などの急な資金需要にも対応
ただし、不動産買取業者さんを活用するなら、以下の注意点を抑えておきましょう。
・買い叩かれないよう買取価格の相場を確認する
・実績や口コミ等を確認して信頼できる業者を選ぶ
・交渉段階からできる限り文書を残し、契約内容を事前にしっかり確認する
これらに注意しながら、袋地売却を実現しましょう!
まとめ
今回の記事では、袋地が死に地と呼ばれる理由と、不動産の売却で損をせず少しでも資産価値を高める秘訣について詳しく解説してきました。
まず「袋地」とは、「周囲を別の土地である囲繞地(いにょうち)に囲まれていて、道路に面していない土地」のことであり、「接道義務」を果たしていない土地です。
・道路から完全に離れている土地である
・出入りするには囲繞地を通行しなければならない
・インフラ設備を囲繞地に通さなければならない
非常に使いにくく資産価値が低いものになります。
そんな袋地が「死に地」と呼ばれる理由は以下。
①再建築不可物件である
②囲繞地の通行やインフラ整備に心理的負担がある
③不動産市場での需要が低い
もし、袋地を売却しようと考えたときに、さまざまな制約や問題とその影響は以下の通りです。
①(繰り返しになりますが重要)再建築不可物件であり不動産価値が低い
②囲繞地を通行する際に制約がある
③インフラ設備が囲繞地を経由しており所有者の意向に影響される
④安全面のリスクがある
⑤工事費用が高額になる
⑥住環境が悪い
⑦住宅ローンが組みにくい
問題点は多い中、囲繞地所有者さんは民法で定められた囲繞地通行権を原則として拒否できず、万が一両者間が感情的になると、トラブルは泥沼化します。
①通行料や囲繞地通行権の範囲の相違から対立
②第三者の利用への理解が得られにくい
③掘削工事の法的根拠の分かりづらさ
袋地は実際のところ「活用しづらい土地」と言えますが、工夫次第で資産価値を高め、買い手さんにとって魅力的な土地に変えることが可能です。
①囲繞地と一緒に売却する
②囲繞地の一部と等価交換する
③囲繞地の一部を買い取る
④位置指定道路の申請をする
⑤囲繞地所有者に売却する
資産価値を高める秘訣のどれも囲繞地所有者さんとの交渉が必要ですが、関係性が悪ければ交渉のテーブルにつくことはありません!どうにもならずに袋地の売却に困ったとき、不動産買取の活用を検討するメリットは以下。
①囲繞地所有者との交渉を代行してくれる
②現状のままでも買取可能
③短期間で土地を現金化できる
ただし、不動産買取業者さんを活用するなら、以下の注意点を抑えておきましょう。
・買い叩かれないよう買取価格の相場を確認する
・実績や口コミ等を確認して信頼できる業者を選ぶ
・交渉段階からできる限り文書を残し契約内容は事前にしっかり確認する
私たちエスエイアシストも不動産買取業者のひとつであり、入居者がいる古いアパートや借地・底地、再建築不可など、困ってしまう“訳あり物件”のご相談を数々と解決してきた実績があります。ぜひ他社さんと比較して頂き、ともに袋地売却を実現しましょう!難しい物件をお持ちでお困りの方は、一度エスエイアシストにご相談ください!お待ちしています。