独自のノウハウにより入居者がいる古いアパートや借地・底地、再建築不可など、他の不動産会社が取り扱いづらい“お困り物件”を解決に導いてきた不動産・用地開発のスペシャリスト、株式会社エスエイアシストがお届けする“お困り物件”コラム、第38回目は「囲繞地(いにょうち)通行権は拒否できる?」です。
「囲繞地通行権」と聞いても、一般的には聞いたことがない人の方が多いのではないでしょうか?そもそも漢字すら読めないかもしれません。それは、奥にある「袋地」の所有者さんが公道に出入りするために、その間にある土地を通行する権利のこと。その間にある土地って言うのが「囲繞地」というワケです。
そんな囲繞地の所有者さんからすれば、自分の土地でありながら一部を自由に使えないワケなので、「できたら拒否できんかなぁ?」と思うのも仕方ないことなのかもしれません!でもだからといって、変に隣地所有者さんとトラブルになるのも嫌ですよね?また、将来的に土地売却する際に「土地の価格に影響するのでは?」と不安に感じる人もいるハズです。
今回の記事では、そんな囲繞地の所有者さんの立場から、囲繞地通行権に関する基本から権利の違い、疑問や不安の解消にいたるまで、わかりやすく解説したいと思いますので、ぜひ最後まで読んでみて下さいね!
囲繞地と袋地の違いと囲繞地通行権とは?
では、そもそも「囲繞地(いにょうち)」とは何なのか(何とも難しい漢字ですよね)?そして「袋地」とはどんな関係性があるのか?について、そんなところからお話しを始めたいと思います。
①袋地
まずは、この袋地の定義について確認が必要です。袋地とは、他の所有者さんの土地に完全に囲まれて公道に直接面していない、文字通り「袋のような土地」のこと。つまり、公道に出るためには他人の土地を通らなければならない、ということになります。
②囲繞地
その一方で、こちらは袋地の反対概念です。囲繞地とは、そんな袋地を囲んでいる土地であり、袋地への出入りするために必要ならば通路を確保しなくてはならない土地ということになります。
これらの土地の関係性でいうと、「一つないし複数の囲繞地が、袋地を取り囲む形で存在している」ということ。
そして「囲繞地通行権」とは、民法第210条において「他の土地に囲まれて公道に通じない土地の所有者は、公道に至るため、その土地を囲んでいる他の土地を通行することができる」とされています。民法で認められているため、囲繞地所有者さんはその権利を拒否することはできません。
ただ、袋地所有者さんには囲繞地に通行する権利があるからと言って、好き勝手な囲繞地に道を作っていいワケではなく、それなりの制限があります。
具体的に囲繞地通行権の主な制限は3つ。
①必要最低限の範囲での通行とする
はじめに、通行を認めるのは、人が公道に出られる必要最低限の範囲での通行で良いので、狭くて不便でも構いません。
②償金(通行料)が発生する
次に、通行を認めざるを得ないとはいえ、あくまでもご自身の土地。一定の損害が生じているとみなされるので、償金(通行料)が発生します。ただ、金額の正式な定めはないため、袋地所有者さんとの協議で決めます。一般的には周辺の囲繞地通行権や月極駐車場の相場を参考にします。
③自動車は通れない
最後に、自動車は基本的には通れないとされています。勿論、安全を確保できている前提で、協議によっては認めることもあります。
囲繞地通行権と地役権の違いとは?
ところで、囲繞地通行権は事実上、通行のみしかNGというワケではなく、給排水管などのインフラ整備もなされ、それにより袋地所有者さんは日常生活が送れることが出来るようになります。ご自身の所有地内でありながら、その大きな工事が行われその設備は地中に埋没されます。ただ、民法上は通行権を認める規定はあるものの、生活に必要とはいえ電気・ガス・給排水管等の規定まではなされていないのが実情です。
通行自体は民法上で認められているから、トラブルは起こりにくいと考えるかもしれませんが、意外と曖昧な部分が多いということです。にも関わらず拒否はできないので、実はトラブルが起きやすい状況とも言えるんですね。だって相手は「より便利に使いたい!」、コチラは「いやいや本当は最低限にしてほしい!」、そりゃそうですよね(笑)!
そのため一定の権利を確保するために登記することがあります。それが「地役権」となります。
地役権は契約によって、「自身(袋地所有者)の土地の便益のために他人(囲繞地所有者)の土地を利用できる権利」を設定します。囲繞地通行権との違いとして、「所有者間の合意の上、使用期限も含めた使用範囲や通行料を自由に決められ、互いに納得感あるルールが作りやすい」と言えますね。
これから先も「隣地所有者さんと関係よく過ごしたい」と思うなら、この地役権の制度を使うことで、未然に将来のトラブルを回避できるかもしれません。
注意として、囲繞地所有者さんであるご自身からすれば、「地役権による登記がなければ、隣地所有者さんに設備の移動や撤去の要求をできるのでは?」と思うかもしれません。が、すでにその既成事実が長期間に及んでいる場合、「暗黙の了解」があったとされます。要するに、袋地所有者さんがその設備を使用して長年過ごしている事実を、ご自身が認めていたとされるので、おいそれとは撤去を強制はできないと考えられます。ただこの場合でも、その範囲が合理的で必要最低限でないとされれば、一定の損害が出たとして賠償が得られる場合も!
「囲繞地通行権は拒否できない!」ので土地価格には悪影響!
他方で、当面はこの土地で生活していきたいと思っていても、将来的には売却をしなくてはならない事情ができるとも限りません。「囲繞地通行権は拒否できない!」という、ややこしい事情が有る以上、買い手さんを見つけるのは難しく、土地価格は低く見られるという悪影響があります!
もし、「今のうちに土地の価値をなんとか上げたい!」と感じているのであれば、囲繞地通行権自体をなくしてしまう方法を模索することが必要なのかもしれません。その場合のポイントとして、「袋地所有者の困りごと」を知ることが大切です。
袋地所有者さんはこんなことで困ってます。
①再建築不可物件である
まず、土地に建築基準法上の道路(幅員4m以上)に2m以上接していない土地は、新しく建て替えることができないことになります。いわゆる「再建築不可物件」です。
②リフォームも難しい
そして、再建築不可物件でもリフォームは出来ますが、囲繞地所有者さんの協力が得られなければ、それすら難しい現状にあります。
③土地の通行料(使用料)がかかり続ける
次に、囲繞地を通るための通行料が、継続的にかかり続けることの経済的負担は軽視できません。また、老朽化するインフラ設備の修繕についても、これまた囲繞地所有者さんの協力なしでは考えられません。
④土地売却時に買い手がつかない
最後に、袋地は囲繞地以上に土地売却時に買い手がつきません。上記①②③を見れば、当たり前と言えば当たり前です。
袋地を旗竿地に変える!?
そんなこんなで、袋地所有者さんも「背に腹は代えられない!」状況ですので、話し合い次第で事態が好転するかもしれません!「渡りに船」的に前向きに検討してもらえる可能性は十分にあります。
どんなアプローチがあるかというと、袋地の土地をいわゆる「旗竿地(細く伸びる通路の奥にまとまった空間のある旗のような形の土地)」に変えるもの。方法は以下。
①袋地所有者に通路部分を買い取ってもらう
ひとつは、今現状通行している通路を2m以上の幅で区切って、袋地所有者にその部分を買い取ってもらう方法。ご自身の所有地は小さくなりますが、そもそも自由に使えていなかった土地なので、双方に利があります!囲繞地所有者であるご自身には売却益が入り、袋地所有者さんは建て替えでも売却でも自由にできるようになります。ただし、袋地所有者さんに経済的余裕が必要になります。
②袋地所有者の土地の一部と通路部分を等価交換する
そしてもうひとつは、上記同様に通路部分を区切るのですが、それと同等の袋地所有者さんの土地の一部とその通路部分を等価交換する方法があります。これなら、囲繞地所有者であるご自身に土地の譲渡所得税が発生しないですし、袋地所有者さんには金銭的持ち出しは不要になります。ただし、袋地の敷地に土地を切り出す程の十分な広さがなくてはなりません。
ですが、袋地所有者さんに「経済的余裕がありません!」「交換できる土地の広さがありません!」となったらどうしましょう?そこで最後の方法がコレです!
③囲繞地・袋地を一緒に売却する
今は昔に比べて、地価が高騰しています。囲繞地・袋地を一致団結して一緒に売却するのもオススメです。囲繞地や袋地が発生する場所は、そもそも良い立地が多いものです。まして、2つの土地が合わさったような広い土地は稀少。買い手さん探しには、きっと困りません。
とは言え、それぞれに生活があり手放すタイミングがうまく調整できない場合もあるかもしれません。そんな時は、不動産買取業者さんに直接売却するのもひとつの手です。確かに市場相場に比べれば買い取り価格は低くはなりますが、メリットもあります。
・直接取引で仲介手数料がかからない
・袋地所有者との調整の間に入ってもらえる
・袋地所有者と引き払うタイミングが揃わない融通も聞いてもらえる場合がある
今の売却は正直考えてなかったとしても、「条件次第では…」と思うかもしれません。また、袋地所有者さんとの関係があまり良くないことがあれば、第三者がはいることで、好転することも十分見込めるかもしれません。
一度、検討してみてはいかがでしょう?
まとめ
というワケで、「囲繞地通行権」についてお話ししてきました。
「囲繞地(いにょうち)通行権」とは、土地に完全に囲まれて公道に直接面していない「袋地」所有者さんが、公道に出入りするためにその間にある土地を通行する権利のこと。
その間にある土地が「囲繞地」で、袋地への出入りするために必要な通路を確保しなくてはならないとされます。
これらの土地の関係性でいうと、「一つないし複数の囲繞地が、袋地を取り囲む形で存在している」こと。
そして「囲繞地通行権」とは、民法第210条において「他の土地に囲まれて公道に通じない土地の所有者は、公道に至るため、その土地を囲んでいる他の土地を通行することができる」とされています。民法で認められているため、囲繞地所有者さんはその権利を拒否することはできません。
ただ、袋地所有者さんの通行には制限があります。
①必要最低限の範囲での通行とする
②償金(通行料)が発生する
③自動車は通れない
囲繞地通行権は事実上、袋地所有者さんの日常生活するための給排水管などのインフラ整備もされます。ただ、民法上は通行権を認める規定はあるものの、生活に必要とはいえ電気・ガス・給排水管等の規定まではなされていないのが実情。
そのため「地役権」として一定の権利を確保するために登記することがあります。契約によって、「自身(袋地所有者)の土地の便益のために他人(囲繞地所有者)の土地を利用できる権利」を設定します。囲繞地通行権との違いとして、「所有者間の合意の上、使用期限も含めた使用範囲や通行料を自由に決められ、互いに納得感あるルールが作りやすい」と言えます。この地役権により未然に将来のトラブルを回避します。
注意として、もし地役権が設定されていなくても、すでにその既成事実が長期間に及んでいる場合、「暗黙の了解」があったとされ、設備撤去を強制はできないと考えられます。
他方で、「囲繞地通行権は拒否できない!」という事情が有る以上、買い手さんを見つけるのは難しく、土地価格は低く見られるという悪影響があります!
もし、土地の価値をなんとか上げたいのであれば、囲繞地通行権自体をなくしてしまう方法を模索することが必要で、そのポイントとして、「袋地所有者の困りごと」を知ることが大切です。
袋地所有者さんはこんなことで困ってます。
①再建築不可物件である
②リフォームも難しい
③土地の通行料(使用料)がかかり続ける
④土地売却時に買い手がつかない
であるので、袋地所有者さんとの話し合い次第で状況は好転するかもしれません。
どんなアプローチがあるかというと、袋地の土地をいわゆる「旗竿地(細く伸びる通路の奥にまとまった空間のある旗のような形の土地)」に変えるもの。
①袋地所有者に通路部分を買い取ってもらう
②袋地所有者の土地の一部と通路部分を等価交換する
ですが、袋地所有者さんに「経済的余裕がありません!」「交換できる土地の広さがありません!」となった場合の最後の方法が以下。
③囲繞地・袋地を一緒に売却する
囲繞地や袋地が発生する場所は、そもそも良い立地が多く、2つの土地が合わさったような広い土地は稀少。買い手さん探しには困りません。
とは言え、それぞれに生活があり手放すタイミングがうまく調整できない場合もあるかもしれません。そんな時は、不動産買取業者さんに直接売却するのもひとつの手です。確かに市場相場に比べれば買い取り価格は低くはなりますが、メリットもあります。
・直接取引で仲介手数料がかからない
・袋地所有者との調整の間に入ってもらえる
・袋地所有者と引き払うタイミングが揃わない融通も聞いてもらえる場合がある
私たちエスエイアシストは、そんな不動産買取業者です。今回のお話しは第三者が入ることで好転するかもしれません。そして、そのキモは交渉力です。これまで、入居者がいる古いアパートや借地・底地、再建築不可など、多くの困ってしまう“訳あり物件”のご相談を解決してきた実績があり、交渉力には自信があります!
ぜひ安心して一度ご相談してみてください!お待ちしています。