
独自のノウハウにより、入居者がいる古いアパートや借地・底地、再建築不可物件など、他の不動産会社では取り扱いづらい「お困り物件」を解決に導いてきた、不動産・用地開発のスペシャリスト・株式会社エスエイアシストがお届けする「お困り物件コラム」。第150回目は「成年後見人の不動産売却のトラブル」です。
認知症になった親の老人ホームの入所費用を捻出するために、「誰も住まなくなる実家を売却したい」と、そう考えて不動産会社に相談したところ、「成年後見人を立てないと売れません」と言われ、手続きの煩雑さや親族間の調整に頭を抱えていませんか?成年後見人による不動産売却は、一般の売却とは異なり、家庭裁判所の厳格な基準を知らずに、「少しでも高く売りたい」「家族の都合で早く現金化したい」と自己判断で進めてしまうと、成年後見人自身が損害賠償や法的責任を問われるようなトラブルに発展しかねません。
今回の記事では、成年後見人の不動産売却におけるトラブルの内容、それらを回避し親族間の対立と負担を減らすための実践的なステップを解説していきます。読んでいただければ、安全な介護資金確保のための正しい不動産売却を理解できるハズです。ぜひ最後までお付き合いください。
成年後見人が不動産売却するときの3つの大前提

はじめに、「成年後見人」とは「認知症や知的障害、精神障害などによって、物事を判断する能力が欠けている状態にある本人に代わって、家庭裁判所(以後は「家裁」)から選任されて財産管理や契約などの法律行為を行う立場の人」を指します。また、家裁の審判を受けて、その保護の対象となった本人を「成年被後見人」といいます。
成年後見人は、親族等による家裁への「後見開始の申立て」を経て選任されることになります。「本人の財産状況が複雑」「親族間の対立が顕著」といった資産額や親族間の関係性によっては、親族ではなく第三者の専門職が選ばれることがあり、報酬も発生します(親族でも家裁への申立てによって報酬がある場合あり)。
成年後見人として選任されると、具体的には「成年被後見人の財産管理」「身上監護」「家裁への報告」を行っていくことになりますが、不動産売却するなら以下の大前提を留意する必要があります。
①「意思能力」を欠いた状態での契約は無効になる
まず、成年被後見人のように「意思能力(自分の行為の結果を判断できる能力)」を欠いた状態で行われた法律行為は無効となります。そのため、本人が単独で不動産売却はできないので、成年後見人が本人の代わりに包括的な代理権を用いて適正に財産を管理し、契約等の手続きを進める必要があります。
また、成年後見開始後に本人が単独で行ってしまった契約(日用品の購入など日常生活に関する行為を除く)は、成年後見人が後から取り消す(取消権)ことができます。
②居住用不動産の売却では「許可必須」である
ただ、成年後見人が本人に代わって不動産を売却するとしても、その物件が本人の「居住用不動産」に該当する場合は、必ず事前に家裁の処分許可を得なければなりません。それは、本人が現在施設に入所していて空き家となっている場合でも、「過去に住んでいた家」「将来戻る可能性がある」家も含まれます。
③成年被後見人の「本人の利益」が重視される
そして、成年後見制度は、判断能力が不十分な本人を法的に保護し支えるための制度です。したがって、不動産を売却する際にも「空き家管理の負担を減らしたい」「将来の相続対策をしておきたい」といった親族側の都合ではなく、あくまで「本人の安定した介護費用や生活費を確保するため」という「本人の利益」が何よりも重視されます。
このように家庭裁判所は、処分の必要性や売却価格の妥当性を厳格に審査するため、本人の利益にかなう正当な売却であることを客観的な資料(複数の不動産業者の査定書や契約書案など)で証明できなければ、手続きを前に進めることはできません。
成年後見人の不動産売却で起こりやすい5つのトラブル
そんな中にあって、成年後見人による不動産売却において、親族が「早く入居施設の費用を作りたい」「空き家の管理負担を減らしたい」と焦るあまり、自己判断で手続きを進めてしまうケースがあります。しかし、本人(成年被後見人)の利益よりも親族の都合を優先させたり、家庭裁判所の厳格なルールを軽視したりすると、以下のようなトラブルに発展します。
①居住用不動産の無許可売却では「契約無効」になる
先述のとおり、本人の「居住用不動産」を売却する場合には、事前に必ず家裁の許可を得る必要があります。それは、たとえ現在施設に入所していて空き家の状態であっても同様です。もしも、その家を自己判断で無許可売却してしまえば、その処分行為は法律上「契約無効」となります。せっかく買主が見つかったとしても、売買契約自体が白紙になるようなことがあれば、多大な損害を生むトラブルに直結します。
②不適切な処分によって「賠償責任」を問われる
一方で、居住用以外の不動産については家裁の許可は不要ですが、不動産を売却すると「使い切られやすい現金」になるため、むやみに処分することは望ましくないとされています。処分の必要性や他の方法の有無を十分に検討せず、本人の利益に反する不適切かつ安易な売却をした結果、損害を発生させた場合、成年後見人は損害賠償の責任を問われることになります。
③不動産の売却価格の「妥当性」が疑われる
このように家裁は、その不動産売却が本当に「本人の利益にかなうか?」を厳格に審査します。市場価格より不当に安く売却しようとしたり、複数の不動産業者による客観的な査定書等の提出を怠ったりして「価格の妥当性」を証明できないと、説明の説得力が弱くなって疑われる要因になります。それによって、許可手続きの停滞や長期化を招きます。
④責任問題に発展し「解任」される
そして、成年後見人には高度な注意義務が課せられています。不適当な方法で財産を管理したり、立場や権限を濫用したりするなど、「後見の任務に適さない事由がある」と、家裁に判断される場合があります。そうなれば、後見監督人(適切な財産管理のために家裁から選任された専門家)や親族の請求、あるいは家裁の職権によって、成年後見人を解任されることがあります。
⑤悪質な場合は「刑事責任」を問われる
さらに、本人の財産を私的に流用したり、売却代金を着服や横領したりするなど、特に悪質と認定されるような場合は、損害賠償や解任だけでは済まされません。成年後見人であっても刑罰は免除されず、業務上横領罪や背任罪といった重大な刑事責任を問われる事態に発展します。
これらのトラブルは、単なる手続き上のミスや「失敗した」では済まされません。
トラブルが起きたときに生じる3つの深刻な悪影響とは?
ひとたび問題を起こせば、取り返しのつかない事態を招きます。それは、不動産売却によって資金確保できないばかりか、「本人の生活基盤」「親族間の信頼関係」そして「成年後見人自身の経済的かつ社会的立場」の3つに深刻な悪影響が及びます。
①資金確保の失敗で本人の生活基盤が不安定化する
一つ目に、売却代金を介護費用や生活費に充てるという本来の目的が果たせなくなることです。特に、本人の居住用不動産を家裁の許可なく処分した場合、その売却行為は法律上無効となります。せっかく買主が見つかっても法的にやり直しとなれば、入所一時金や毎月の施設費用の準備に大きな遅れが生じかねません。それはつまり、本人の生活基盤そのものが不安定化する可能性があるということです。
②親族間の関係性が崩壊する
二つ目に、将来の相続財産でもある不動産の売却では、感情的な対立が起きやすく、場合によっては親族間の関係性が崩壊する恐れもあります。親族間の納得感も非常に重要であり、売却価格の根拠や資金の使い道、なぜ今売る必要があるのかという説明が不十分だと、「勝手に話を進めた」「もっと高く売れたのではないか」といった不信感が生まれやすくなります。それは、今後の介護方針や財産管理、相続時の関係性にも長く影を落としかねません。
③成年後見人自身の経済的・社会的な破綻を招く
三つ目に、本人の財産を守る立場にある以上、その判断や手続きには重い責任が伴います。そのため、必要な確認を怠ったり、本人利益よりも親族の都合を優先したりすると、成年後見人自身が責任を問われるおそれがあります。「契約無効による買主への賠償」「着服や横領による刑事罰」にまで至ってしまえば、成年後見人自身の経済的かつ社会的な破綻を招くこともあり得ます。
本来は本人の生活を守るための売却であるはずなのに、それどころか経済的・社会的に破綻し、親族関係まで壊してしまっては本末転倒です。
成年後見人が見落としやすい5つの論点

成年後見人による不動産売却では、契約無効や損害賠償といった直接的なトラブルだけでなく、その周辺の税務・手続き・財産管理の論点も見落とせません。表面上は売却できたように見えても、その後の対応を誤ると別の問題が生じるため、関連論点も押さえておく必要があります。
①「居住用不動産の3,000万円特別控除」には期限がある
まず、本人が老人ホーム等の施設に入所して空き家となった実家を売却する場合、一定の要件を満たせば譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例を利用できる可能性があります。ただし、これには「住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで」という厳格な期限が設けられています。
もしも、家裁の許可手続きや親族間の調整に手間取り、この期限を過ぎてしまうと、数百万円単位の増税になる実例があるため、スケジュール管理には細心の注意が必要です。
②親族間の利益相反に対する「特別代理人の要否」を判断する
つぎに、親族である成年後見人自身が本人の実家を買い取る場合や、成年被後見人である親が共同相続人として遺産分割協議を行う実家の売却など、本人と成年後見人(親族)の利益が衝突する法律行為を「利益相反行為」といいます。このような場合、成年後見人は本人を代理して契約や協議を行うことができず、そのままでは手続きが進みません。
これを解決するためには、家裁に「特別代理人」の選任を申し立てる必要があり(なお、成年後見監督人が選任されている場合は不要)、実務上の壁で手続きが止まってしまうため、事前確認が不可欠です。
③売却代金は「投機的運用禁止」であることに留意する
また、実家の売却が完了し、多額の資金を確保できた後にも注意が必要です。成年後見人による財産管理は、安全に管理されることが大原則であり、売却代金を株式や投資信託など元本割れのリスクがある金融商品で「投機的運用」することは厳しく禁じられています。
万が一、自己判断で運用して本人に損害を与えれば、成年後見人が自腹で損害賠償責任を負うだけでなく、解任される可能性もあります。場合によっては、家裁から「後見制度支援信託」などの利用を求められることもあります。
④後見人に不満があるときの対応を把握する
さらに、親族が成年後見人を務める場合、「勝手に安く売ろうとしている」「売却代金を使い込んでいないか」など、他の親族から不満や不信感が出ることがあります。もし、成年後見人に権限の濫用や不正な財産管理が疑われる場合、親族等は家裁に対して「後見人解任の審判」を請求することができます。
ただ、親族間の決定的な対立に発展する前に、弁護士や司法書士といった専門家を成年後見人に追加選任してもらうなど、第三者を交えて透明性を担保することが、トラブルを防ぐ有効な対策となります。
⑤売却許可には「停止条件付き」の売買契約案で対応する
そして、家裁へ居住用不動産の処分許可を申し立てる際、誰にいくらで売るのかを示さなくてはなりません。そのため、先に「不動産売買契約書案」などを提出します。しかし、許可が下りる前に正式な契約を結んでしまうと、万が一許可が下りなかった際に無効となり、買主との間で深刻なトラブルになります。
そのため、「家裁の許可が下りなかった場合は、無条件で契約を白紙に戻す」という、「停止条件付き」特約を盛り込んだ売買契約書案で交渉を進めることが、実務における必須のアプローチとなります。
本人の居住用不動産の売却は、資金を確保して終わりではありません。売却前の準備から売却後の資金管理まで、成年後見制度の厳格なルールを守り抜くことが求められます。
トラブルを避けるための7つの準備ステップとは?
では、成年後見人の不動産売却におけるトラブルを避けるには、どのような順番で準備すればよいのでしょうか。大切なのは、思いつきで動くのではなく、「本人利益」「客観資料」「説明のしやすさ」を軸に一つずつ整理することです。
①本人利益の条件整理を行う
まず行いたいのは、売却理由は必ず「本人の利益」を主眼とした条件整理です。たとえば、「施設費用を安定的に確保するため」「今後の生活費や医療費に備えるため」などといった形です。親族の都合ではなく、本人の安定した生活にどうつながるのかまで言語化する必要があります。ここが整理できると、家裁への申立ても親族への説明も、一気に通しやすくなります。
②スケジュールに余裕を持たせて進める
つぎに意識したいのが日程です。後見開始の申立て、必要資料の収集、査定取得、売買条件の整理、居住用不動産処分許可の申立てと、進めるべきことは少なくありません。家裁による許可への審査、本人の施設入所日や資金需要から逆算し、慌てて判断を誤らないように、正式契約には余裕をもって進めることが大切です。
③遠方・多忙な成年後見人には「追加選任」も検討する
また、親族の成年後見人が遠方に住んでいる、多忙で動きにくい、書類対応や不動産実務の負担が重いという場合は、一人で抱え込まないことも大切です。家裁は、後見人等の追加が必要なときには、「追加選任」ができると案内しています。自分一人で回らないのに無理をすると、報告の遅れや判断ミスにつながりやすいため、体制面から見直す発想も重要です。
④実家の状況を整理し契約不適合責任を回避する対策をする
そして、建物や土地の現状把握をしていきます。老朽化、雨漏り、越境、再建築不可、残置物、境界未確定など、実家には思わぬ問題が残っていることがあります。こうした事情を曖昧にしたまま売却を進めると、後から契約不適合責任(契約内容との相違に対する売主責任)をめぐるトラブルにつながりかねません。
⑤後見案件に強い不動産業者を選定する
加えて、成年後見人による不動産売却では、査定書の出し方、契約書案の整え方、家裁許可を前提とした進め方など、通常の売買とは違う配慮が必要です。特に問題を抱えた「お困り物件」は、一般的な仲介だけでは動きにくいこともあります。後見案件や複雑な物件に強い業者を選ぶことで、説明資料も売却条件も現実的に整えやすくなります。
⑥親族間で方針を共有し不信感を払拭する
さらに、法律上は成年後見人が進める手続きでも、実家売却では親族の納得感が大きく影響します。だからこそ、「なぜ今売るのか」「売却代金を何に使うのか」など、今後の方針を早めに共有しておくべきです。説明不足のまま手続きを先行させれば後から不信感が強まり、結果的に実務も止まりやすくなります。親族対応は軽視せず、トラブル予防の中心だと考えた方が自然です。
⑦「停止条件付き」の売買契約案を作成し処分許可の申し立てをする
さいごに、実務上の要となるのが契約書案です。家裁の許可を得られなければ白紙に戻す「停止条件付き」の売買契約案を作成し、査定書などとあわせて家裁に処分許可の申し立てを行う流れが安全です。これにより、許可が下りなかった場合でも買主との紛争を抑えやすくなり、手続きの整合性も保ちやすくなります。
このように、成年後見人による不動産売却では、目的を明確にして体制を整え、調査と業者選定を行い、合意や手続きに繋げるという順番で準備を進めることが、トラブル回避の近道になります。
成年後見人による不動産売却で買取を選ぶ5つの理由
ここまで見てきたように、成年後見人による不動産売却は、制度を知るだけでは足りず、本人利益を軸に資料と説明を整えることで、トラブルを回避しながら進める必要があります。一般には不動産仲介での売却の方が、売却価格を最大化できますが、事情が複雑な後見案件であれば、不動産買取も有力な候補になります。
以下に、不動産買取のメリットを軸に仲介との比較をしていきます。
①不動産を早期に現金化し必要資金を確保する
まず大きな利点は、資金調達を急ぐ中で不動産を早期に現金化できる点です。仲介では買主が見つかる時期が読みにくい一方、買取は条件が合えば比較的早く話をまとめやすく、介護費用や施設入所費用など、必要資金の計画を立てやすくなります。
②未整理の実家を現況有姿で買い取ってもらえる
また、長年住んでいた実家は、残置物が多い、傷みがある、権利関係が複雑といった事情を抱えがちです。こうした物件を一つずつ整えてから一般売却しようとすると、手間も時間もかかります。その点、未整理の実家を現況有姿で買い取ってもらえれば、負担が大幅に軽減します。
③契約不適合責任を免責される可能性がある
そして、古い家や空き家の売却では、後から設備不良や雨漏りといった契約内容に適合しない不具合が見つかることがあります。買取では、契約条件の調整次第で契約不適合責任の負担を抑えられる可能性があります。後見案件では、売却後に思わぬ賠償リスクを小さくする意味でも、この点は見逃せません。
④本人のプライバシーを確保することができる
さらに、一般仲介では内見対応や広告掲載によって、家の状況や売却事情が広く知られやすくなります。一方、買取なら情報公開の範囲を抑えやすく、本人や親族のプライバシーに配慮しながら進めやすい面があります。成年後見案件では、こうした心理的負担の軽減も無視できません。
⑤確実性が高い直接取引のため先の見通しが立ちやすい
さいごに、直接取引に近い形で条件を詰めやすい点も強みです。一般の個人買主だと家裁の許可が下りるまで待てずに契約が破断になるケースがあります。買取であれば、家裁への説明に必要な査定書や契約書案、売却条件の整理がしやすく、手続き全体の見通しを立てやすくなります。
もちろん、すべての物件で買取が最善とは限りませんが、「早めに資金化したい」「難しい物件を抱えている」「手続きを複雑にしたくない」という場合には、十分に検討する価値があります。
このように、成年後見人による不動産売却で悩んだときは、単に高く売れるかどうかだけでなく、トラブルを回避するとともに、「本人利益にかなうか」「手続きを止めずに進められるか」「負担を抑えられるか」という視点で相談先を選ぶことが大切です。
もし、成年後見人が絡む不動産売却でお悩みなら、後見実務と「お困り物件」の買取実績が豊富な弊社へご相談ください。現状の整理から家裁の手続きを見据えた買取査定まで、専門家目線でサポートいたします。
まとめ
今回の記事では、成年後見人の不動産売却におけるトラブルの内容、それらを回避し親族間の対立と負担を減らすための実践的なステップを解説しました。
「成年後見人」とは「認知症や知的障害、精神障害などによって、物事を判断する能力が欠けている状態にある本人に代わって、家庭裁判所(以後は「家裁」)から選任されて財産管理や契約などの法律行為を行う立場の人」を指します。また、家裁の審判を受けて、その保護の対象となった本人を「成年被後見人」といいます。
成年後見人は、親族等による家裁への「後見開始の申立て」をすることで選任され、親族ではなく第三者の専門職が選ばれることがあり、親族と専門職を問わず報酬も発生します。
成年後見人が不動産売却するなら以下の大前提があります。
①成年被後見人が「意思能力」を欠いた状態での契約は無効になる
②成年被後見人の居住用不動産の売却では「許可必須」である
③成年被後見人の「本人の利益」が重視される
このように家庭裁判所は、処分の必要性や売却価格の妥当性を厳格に審査するため、客観的な資料で証明できなければ手続きを進めることはできません。
そんな中、本人(成年被後見人)の利益よりも親族の都合を優先させたり、家庭裁判所の厳格なルールを軽視したりすると、以下のようなトラブルに発展します。
①居住用不動産の無許可売却では「契約無効」になる
②不適切な処分によって「賠償責任」を問われる
③不動産の売却価格の「妥当性」が疑われる
④責任問題に発展し「解任」される
⑤悪質な場合は「刑事責任」を問われる
これらのトラブルは、単なる手続き上のミスでは済まされません。ひとたび問題を起こせば、不動産売却によって資金確保できないばかりか、3つの深刻な悪影響が及びます。
①資金確保の失敗で本人の生活基盤が不安定化する
②親族間の関係性が崩壊する
③成年後見人自身の経済的・社会的な破綻を招く
成年後見人による不動産売却では直接的なトラブルだけでなく、税務・手続き・財産管理の論点も押さえておく必要があります。
①「居住用不動産の3,000万円特別控除」には期限がある
②親族間の利益相反に対する「特別代理人の要否」を判断する
③売却代金は「投機的運用禁止」であることに留意する
④後見人に不満があるときの対応を把握する
⑤売却許可には「停止条件付き」の売買契約案で対応する
では、成年後見人の不動産売却におけるトラブルを避けるには、どのような順番で準備すればよいのでしょうか。
①本人利益の条件整理を行う
②スケジュールに余裕を持たせて進める
③遠方・多忙な成年後見人には「追加選任」も検討する
④実家の状況を整理し契約不適合責任を回避する対策をする
⑤後見案件に強い不動産業者を選定する
⑥親族間で方針を共有し不信感を払拭する
⑦「停止条件付き」の売買契約案を作成し処分許可の申し立てをする
このように、成年後見人による不動産売却では、目的を明確にして調査と業者選定を行い、合意や手続きに繋げるという順番で進めることが、トラブル回避の近道になります。
一般に不動産仲介での売却の方が、売却価格を最大化できますが、事情が複雑な後見案件であれば、不動産買取も有力な候補になります。その不動産買取のメリットは以下です。
①不動産を早期に現金化し必要資金を確保する
②未整理の実家を現況有姿で買い取ってもらえる
③契約不適合責任を免責される可能性がある
④本人のプライバシーを確保することができる
⑤確実性が高い直接取引のため先の見通しが立ちやすい
もちろん、すべての物件で買取が最善とは限りませんが、成年後見人による不動産売却で悩んだときは、単に高く売れるかどうかだけでなく、トラブルを回避するとともに、「本人利益にかなうか」「手続きを止めずに進められるか」「負担を抑えられるか」という視点で相談先を選ぶことが大切です。
私たちエスエイアシストは、入居者がいる古いアパートや借地・底地、再建築不可物件など、扱いが難しい「お困り物件」のご相談を数多くサポートしてきました。
「どこに相談すればいいか分からない」「家族に迷惑をかけたくない」と感じている方こそ、ひとりで抱え込まず、まずは現状をお聞かせください。お客様の状況やご希望を踏まえ、無理のない出口プランを一緒に考えます。お困りの物件でお悩みの方は、ぜひエスエイアシストまでご相談ください。
【重要エビデンス・出典】
・さいたま家庭裁判所「居住用不動産処分許可の申立てについて」
家庭裁判所へ居住用不動産の処分許可を申し立てる際の実務的な要件が記載されています。特に、記事内で何度も指摘した「契約の当事者や金額などの記載があるもの(未締結の契約書案)が必要であること」や、「審理期間は問題のない事案で1〜2週間程度であること」の直接的な根拠となっています。
URL:https://www.courts.go.jp/saitama/vc-files/saitama/file/2602F01.pdf
・国税庁 タックスアンサー「No.3314 過去に居住していたマイホームを売ったとき」
マイホーム(居住用財産)を売却した際に、譲渡所得から最高3,000万円まで控除できる特例の適用要件を解説したページです。施設入所等で過去に住んでいた家を売却する場合、「自分が住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る」という厳格な期限が定められています。記事内における「施設入所から3年の壁(税金で損をしないためのデッドライン)」の根拠となっています。
URL:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3314.htm
・東京家庭裁判所「成年後見人・保佐人・補助人ハンドブック(Q&A付き)」
成年後見人等に選任された者に向けて、初回の財産目録作成から定期報告、そして日常の財産管理に関するルールまでを網羅的に解説した実務マニュアルです。本人の財産の安全確実な管理義務(投機的運用の禁止)や、本人と後見人の利益が対立する場合の対応(利益相反と特別代理人)、不動産売却前の家庭裁判所への事前相談・許可の必要性などが詳細に規定されています。記事内における「後見人の賠償責任・解任リスク」や「関連論点(投機的運用禁止など)」の根拠となっています。
URL:https://www.courts.go.jp/tokyo-f/vc-files/tokyo-f/kouken/0201R0704.pdf



