
独自のノウハウにより、入居者がいる古いアパートや借地・底地、再建築不可物件など、他の不動産会社では取り扱いづらい「お困り物件」を解決に導いてきた、不動産・用地開発のスペシャリスト・株式会社エスエイアシストがお届けする「お困り物件コラム」。第138回目は「老朽化したビルの売却」です。
築50年を超えたビルを相続し賃貸事業も引き継いだものの、老朽化が進んできていて修繕費の増大や空室の増加により赤字。「売却したいけれど、耐震性やアスベストの問題があり、安全に手放せるだろうか…」と悩んでいませんか?放置するリスクを意識する一方で、何から手を付ければよいか分からない人は多いものです。
今回の記事では、老朽化したビルの売却を左右する不確実性と、先延ばしで増える5大リスクを整理したうえで、ムダな事前投資を避けながら安全に手放す手順と選択肢を解説します。ぜひ、最後までお付き合いください。
老朽化したビルの売却を左右する3つの不確実性

はじめに、築50年を超えた「老朽化したビル」を手放す際に知っておくべきことは、建物の見た目より「不確実性」が価格や売却のしやすさを左右するという事実です。主に商業利用されるビルは、老朽化すると以下のような問題が生じます。
①空室率が上がり事業融資を引くのも難しい
まず、築年数が古くなるほど設備等がニーズとズレやすく、募集賃料を下げても決まりにくい状態になりがちです。空室率が上がることで、家賃収入が減るだけでなく機会損失や募集費用も重なり、収益物件としての魅力が下がります。事業は安定せず、事業融資を引くのも難しい状況になりがち。
②耐震性やアスベストに不安がある
つぎに、古いビルは旧耐震基準(1981年5月31日までに建築確認を受けたもの)で作られた耐震性に懸念があったり、現在は製造・使用禁止とされているアスベストの問題があったりと、安全性に不安が残ります。耐震診断や調査等で客観的に安全性を担保しない限り、一般に避けられる傾向にあります。
③保守管理業務が重荷になる
そして、築年数が古いビルは外壁・屋上防水・給排水管・電気設備などの不具合が出やすく、点検や修繕の頻度も上がります。テナントの修繕やクレームへの対応も増え、保守管理業務が「精神的にも重荷になる」と感じる所有者さんも多いです。
それらによって、投資家である買い手さんからすると、
・調査費用:耐震診断、石綿(アスベスト)の事前調査、境界調査など
・修繕費用:雨漏り、外壁劣化、配管更新、設備交換など、収益維持に必要な修繕
・立ち退き費用:立退き料、移転支援、家賃減免(フリーレント)等の負担
・解体費用:解体工事に加え、石綿が出た場合の除去・処分費用
・建替え費用:設計・建築費、空室期間の損失、行政協議など
…といった購入後の将来的な追加費用と収益とのバランス、事業融資が受けづらいことや、建物不具合にともなうトラブルの可能性といった不確実性に不安を覚えます。そのため、売買前後にこれらの費用と責任を誰が負うかが問題になることが多いです。
老朽化したビルの所有者が陥りがちな思考の落とし穴!
特に、古く老朽化したビルの売却において、多くの所有者さんが陥りがちな思考は「耐震診断やアスベスト調査、そして土地の境界確定といった全てを事前に片付けないと売れない」という思い込みです。
古いビルの多くは下記のような問題を抱えています。
・旧耐震問題:以前の基準で建てられている可能性があり、現在の耐震基準を満たしていない
・アスベスト問題:解体や改修の際に、石綿の事前調査と報告が法的に義務付けられている
・境界未確定問題:土地の所有者間で隣地との境界線が曖昧で、将来的なトラブルリスクがある
不動産売却をしたい所有者さんは、これらを解決することで少しでも売却価格を高くしようと考えがちです。
しかし、ここが大きな落とし穴であり、良かれと思って調査や補修を先に始めると、予期せぬ法的義務や追加費用によって売却難易度が上がってしまうことがあります。
①行政との連携の負担が発生する
たとえば解体や改修に踏み切ると、石綿の事前調査・報告、届出、作業基準の遵守などが義務として発生しやすくなります(一定規模以上の解体・改修工事において報告義務がある)。売却の本筋(買い手探し)より先に手間が膨らむことがあります。
②費用対効果に見合わない投資をしてしまう
もし、多額の修繕費をかけたとしても、売却価格にその分が上乗せされる保証はなく、かえって赤字を広げる可能性があります。費用対効果を意識せずに「とりあえず直す」と、いたずらに手元資金を減らすことになります。
ビル売却の出口戦略を考えずに無駄な事前投資をしてしまうと、
・不具合が確定することで告知義務が生じ、かえって買い手がつかなくなる(融資否認など)
・補修工事に着手したことで、アスベスト除去等の法令対応で予算オーバーになる
・値引き交渉の材料となり、結果的に売却価格が低くなる
…といった、文字通り「首が回らない」事態になりかねません。
老朽化したビルを保有し続ける5大リスク!
とはいえ、老朽化したビルの売却を先延ばしすることでリスクは増大します。持ち続けているだけで資産価値が目減りするだけでなく、損害賠償問題に発展する可能性を秘めています。
①空室率上昇や維持費増による「赤字の固定化」
まず、ビルが古くなるほどテナントの退去が続き、募集をかけても決まらない期間が長くなります。一方で、固定資産税や設備の突発的な故障への修繕費は発生し続け、保有しているだけで手元資金が削られることになります。
②耐震不足を理由とした買い手の「融資制限」
つぎに、耐震基準を満たさないことで、金融機関の融資を使えない、または使いにくいとなると、買い手さんが絞られます。そうなると、価格交渉は買主優位になりやすく、売却期間も長引く傾向にあり、結果として手残りが少なくなります。
③既存テナントとの「立退き交渉の長期化」
そして、建て替えや売却にあたり既存のテナントに立退きを求める場合、立退き料の支払いや代替物件の確保といった誠意ある対応が必要になります。交渉が長期化するほど、その費用だけでなく逸失家賃や追加の修繕対応も生じやすく、売却計画そのものがズレ込むリスクになります。
④老朽化が進むことによる「契約不適合責任のリスク」
さらに、ビルの老朽化が進むと、売却後に不具合が顕在化する可能性が膨らみます。仲介で一般投資家へ売るほど、引渡し後の紛争に発展しやすく、契約不適合責任(契約内容と現物との相違に対する責任)を問われるリスクがあります。
⑤今後の法改正の規制強化による「さらなる負動産化」
さいごに、近年の法改正の流れは「アスベスト調査報告の義務化」「管理不全に対する行政の指導や除去代執行」といった、老朽化不動産に対する規制を強化する方向です。今後も保有し続けることで対策コストがさらに増大し、資産価値がゼロどころかマイナス、いわゆる「負」動産化するリスクも無視できません。
古く老朽化したビルでは、こうしたリスクがいつ顕在化してもおかしくないため、「今は大丈夫」という先送りは禁物です。
老朽化したビルを売却せず活用するのは難しい?

なお、老朽化したビルを売却する以外に活用していく方向性もあります。しっかりと活用することで、資産が負債化しないようにする方法です。
①リノベーションして不動産経営を続ける
ひとつに、外壁や内装、水回り設備を一新し、現代のニーズに合わせたデザインや機能を持たせることで収益性を改善します。もしくは、事務所需要に合わせた区画変更、シェアオフィスやトランクルーム等への転用など、使用用途を変更することも検討できます。
ただし、老朽化が進んだビル全体のリノベーションには数千万円〜億単位の費用がかかることも珍しくない上、想定外の追加工事が出やすい点が難点です。見えないコスト(アスベストや既存不適格などといった法遵守のための不可避なコスト)が膨らみ、工期が延びるほど空室期間の損失も増えます。
②不動産開発業者と交渉し建替えの上で等価交換をする
もうひとつは、土地の一部を不動産開発業者に譲り、その対価として新築ビルの一部の区分所有権を得る手法(等価交換)です。現金化ではなく「新しい建物の一部を持ち続ける」ことで、老朽化リスクを一掃し、将来の賃貸収入の安定化を狙えます。
ただし、等価交換が成立するのは、高い事業性が見込める好立地物件に限られます。また、専門性が必要な論点が多く交渉難易度は高い上、業者との共有持分になる(もしくは区分所有者になる)ケースもあり、力関係によって経営の自由度が著しく低下します。そのため、条件次第ではそもそも事業化できないこともあります。さらに、交渉〜ビルの竣工には長期にわたるため、「すぐに現金化したい」ニーズとは相性が悪いといえます。
これらの方法については、ビル所有者さんの非常に高いリテラシーと、融資がつきにくい状況下での追加資金や数年の時間が必要なため、実現が難しい傾向にあります。
老朽化したビルをスムーズに売却する具体的な手順
では、老朽化したビルを売却するためには、どのように進めれば良いでしょうか?具体的な手順や対策は以下です。
①必要な資料をできる限り揃える
まずは、買い手さんや金融機関が「検討できる状態」に近づけることが重要です。必要な資料をできる限り揃えていきます。確認済証(または建築確認通知書)や検査済証、賃貸借契約書とレントロール(賃料一覧)、修繕履歴など。「手元にない資料がある」と最初に伝え、現時点で出せる資料を整理するだけでも、売却の不確実性は下げられます。
②知りうる瑕疵の現状を整理する
次に、分かっている不具合や懸念点を棚卸しします。ポイントは「完璧に調べる」ではなく、「把握している範囲で正直に整理する」ことです。
ここを曖昧にしたままだと、買い手さんは最悪を想定して不安に感じます。現状整理は、過度な値引きを防ぐための準備でもあります。
③得られるものの優先順位を決める
そして、老朽化したビルの売却では、「価格」だけを追うと判断に迷いが生じがちです。「スピード優先」「安全・免責優先」「手間や精神負担の軽減」などの得られるものから、広い視野でご自身の優先順位を決めてください。方向性がはっきりすると、専門家である業者に相談しやすくなります。
④希望の手残りから逆算することを意識する
ただ、売却価格だけで判断すると危険です。物件取得費が不明な場合の扱い、測量費・立退き費用などの諸費用、売却益にかかる税金の目安など、意識すべき点は多くあります。重要なことは「手残りでいくら必要か」という点です。そこから逆算することで、無理な投資を避けやすくなります。
⑤調査や改修等の要否を判断する
最後に、調査や改修等を「やるか・やらないか」を売却方法に合わせて判断します。
・仲介で高く売りたい:買い手の不安を下げる“最小限”の整備を検討
・更地売却にしたい:解体費と手続き(アスベスト等)を見積もってから判断
・現況買取を狙いたい:調査・改修を“先にやらない”方が良いケースも多い
ここで大事なのは、「調査や工事を始める前に」プロに相談することです。動き出してからだと、止められないコストや義務が増えることがあります。
以上が、老朽化したビルをスムーズに売却するための基本手順です。
【不動産売却への近道】老朽化したビルを安全に手放す方法!
その上で、ご自身や建物の状況に合わせて、老朽化したビルを安全に手放す方法を検討していきます。以下は代表的な3つ。
①ビルを解体して更地売却する
ひとつ目は、老朽化したビルを解体して、更地として売却する方法です。更地にすることで用途の自由度が上がり、買い手層が広がるケースがあります。特に土地の価値が強いエリアでは、建物より「土地」として評価されやすいため、選択肢になり得ます。
ただし、解体費用に加え、アスベストの事前調査費用および除去・処分費用がかかるほか、近隣対応の手間もかかります。既存テナントがいる場合は、立退き交渉が前提になるため、時間と費用が先に膨らみやすい点に注意が必要です。費用対効果を十分にシミュレーションし、資金繰りが持つかを先に確認します。
②可能な対策をして仲介売却する
ふたつ目は、条件さえ合えば最も高値を狙いやすい、一般的な仲介売却です。可能な対策をしたことで、「収益性が見える」「既存テナントが安定している」「修繕履歴が明確で耐震診断の実施済み」といったデータがあり不確実性が低い…と判断されると、投資家さんの検討が進みやすくなります。
一方で、調査や融資審査に時間がかかったり(そもそも融資が下りないリスクも)、追加資料の提出や是正を求められたりと、売却期間が長くなる傾向があります。高値狙いの仲介を選ぶなら、「時間が経済的にも精神的にも負担にならないか」「途中で追加投資が必要になっても対応できるか」を含めて判断することが大切です。
③手間をかけず早期に現況買取してもらう
三つ目は、買取専門の不動産業者による現況買取です。「各種調査未実施」「老朽化が進行している」「テナント対応が重い」といったケースで、最も安全に手放す近道になりやすい方法です。手間をかけず早期に現金化できる可能性があります。
ただし、買取業者は不動産市場での再販による売買差益を目的としているため、仲介より売却価格は下がりやすい傾向にある点は否定できません。
このように、いずれの方法でも老朽化したビルの売却は可能です。とはいえ、抱える問題によっては調査や交渉にかける費用と時間が先に溶けがちではあります。
特に、「早く不安から抜け出す」ことに優先順位があるのなら、リスクと責任の範囲を整理した上で、不動産買取業者に査定を依頼することが近道といえるでしょう。その理由は以下。
・賃貸事業が赤字でも経営継承してもらえる
・売却活動といった手間や精神的負担が軽減できる
・入居テナントの立ち退き交渉が不要
・各種調査や改修等が未実施のまま手放せる
・老朽化していても契約不適合責任を免責する契約もできる
もし、調査や改修等の要否や売却方法の判断に迷う段階でしたら、まずは現況のまま査定を取り、仲介・更地の見込みと並べて比較してみてください。数字や手間感を並べると、現実的な出口プランが一気に見えやすくなります。
まとめ
今回の記事では、老朽化したビルの売却を左右する不確実性と5大リスク、安全に手放す手順と選択肢を解説してきました。
築50年を超えた「老朽化したビル」を手放す際に価格や売却のしやすさを左右するのは「不確実性」です。
①空室率が上がり事業融資を引くのも難しい
②耐震性やアスベストに不安がある
③保守管理業務が重荷になる
それらによって、投資家である買い手さんは購入後の将来的な不確実性に不安を覚えます。
老朽化したビルの所有者さんが陥りがちな思考は「耐震診断やアスベスト調査、そして土地の境界確定を完璧に済ませてからでないと売れない」という思い込みであり、これらを解決することで少しでも売却価格を高くしようと考えがちです。
しかし、良かれと思って調査や補修を実行した先に大きな落とし穴があります。
①行政との連携の負担が発生する
②費用対効果に見合わない投資をしてしまう
ビル売却の出口戦略を考えずに無駄な事前投資をしてしまうと、「かえって買い手がつかなくなる」「工事着手で予算オーバーになる」「値引き交渉の材料になる」といった、「首が回らない」事態になりかねません。
とはいえ、売却を先延ばしすることでリスクは増大します。
①空室率上昇や維持費増による「赤字の固定化」
②耐震不足を理由とした買い手の「融資制限」
③既存テナントとの「立退き交渉の長期化」
④老朽化が進むことによる「契約不適合責任のリスク」
⑤今後の法改正の規制強化による「さらなる負動産化」
こうしたリスクがいつ顕在化してもおかしくありません。
なお、老朽化したビルを売却する以外に活用していく方向性もあります。
①リノベーションして不動産経営を続ける
②不動産開発業者と交渉し建替えの上で等価交換をする
これらの方法については、ビル所有者さんの高いリテラシーと、追加資金や数年の時間が必要なため、実現が難しい傾向にあります。
では、老朽化したビルを売却するための具体的な手順や対策は以下。
①必要な資料をできる限り揃える
②知りうる瑕疵の現状を整理する
③得られるものの優先順位を決める
④希望の手残りから逆算することを意識する
⑤調査や改修等の要否を判断する
その上で、ご自身や建物の状況に合わせて、老朽化したビルを安全に手放す方法を検討していきます。以下は代表的な3つ。
①ビルを解体して更地売却する
②可能な対策をして仲介売却する
③手間をかけず早期に現況買取してもらう
このように、いずれの方法でも老朽化したビルの売却は可能ですが、抱える問題によっては費用と時間が先に溶けがちではあります。
特に、「早く不安から抜け出す」ことに優先順位があるのなら、不動産買取業者に査定を依頼することが近道といえるでしょう。
・赤字でも経営継承してもらえる
・手間や精神的負担が軽減できる
・立ち退き交渉が不要
・各種調査や改修等が不要
・契約不適合責任の免責できる可能性
もし、判断に迷う段階でしたら、まずは現況のまま査定を取り比較し、数字と手間感を並べると出口が見えやすくなります。
私たちエスエイアシストは、入居者がいる古いアパートや借地・底地、再建築不可物件など、扱いが難しい「お困り物件」のご相談を数多くサポートしてきました。
「どこに相談すればいいか分からない」「家族に迷惑をかけたくない」と感じている方こそ、ひとりで抱え込まず、まずは現状をお聞かせください。お客様の状況やご希望を踏まえ、無理のない出口プランを一緒に考えます。お困りの物件でお悩みの方は、ぜひエスエイアシストまでご相談ください。
参考にした法的エビデンス・公的資料



