
独自のノウハウにより入居者がいる古いアパートや借地・底地、再建築不可など、他の不動産会社が取り扱いづらい“お困り物件”を解決に導いてきた不動産・用地開発のスペシャリスト、株式会社エスエイアシストがお届けする“お困り物件”コラム、第120回目は「複合的な問題で売れない家を手放す方法」です。
相続した古い家が「変形地で境界も曖昧、入居者までいる」など、そんな複合的な問題を抱えた「売れない家」を前に、途方に暮れる人がいます。どう手放せば良いか分からず、維持管理に伴う費用や固定資産税を払い続けていませんか?大切なことは、その家の状況を正確に把握することです。
今回の記事では、まずはそれぞれの問題を棚卸しして現状を可視化し、「なぜ売れないのか」を分解して把握しましょう。続いて公的制度の条件や活用方法、もしくは「スピード・確実性・コスト」で売却方法を比較し、家を手放す現実的なルートを設計します。それでもハードルが高く不安が尽きないのであれば、不動産買取での現況売却が解決策になるかもしれません。読み終えれば「今日やること」が明確になり、多くの問題から逃れる第一歩が踏み出せます!
売れない家を手放すには問題を棚卸しすべし!

まず、「売れない家」とは単に人気がない家ではなく、何かしらの問題を抱えていることが理由にあります。特に、そういった問題は一つではなく、複合的に絡んでいるケースも多く、いざ手放そうにもどう行動すればよいのか分からないものです。
現状で活用していないにも関わらず、維持管理に伴う費用や固定資産税を払い続けていれば、経済的にも心理的にも負担は大きいでしょう。その負担の原因である問題を解決するにあたって大切なことは、家の状況を正確に把握することです。
そのためには現状を可視化することが重要。そこで、五つの観点で問題を棚卸ししましょう。主なチェック観点は次の通りです。
・建物の状況:雨漏り、シロアリ、旧耐震、違法増改築、大量残置物など
・土地の条件:狭小、旗竿、再建築不可、インフラ未整備など
・権利の関係:境界未確定、越境、共有持分、借地権など
・賃貸借の問題:入居者トラブル、家賃滞納、立ち退き困難、契約書不備など
・コストの問題:維持費、修繕費、解体費、固定資産税など
ここまで見たように問題が多岐にわたるため、売りたい家の問題を棚卸しすることで、実際の売却交渉時において適切に話を進めることができるようになります。
「なぜ売れないのか?」市場が狭くなるメカニズム!
複合的に問題が重なるほど、市場で買い手さんが付きにくくなる要因になります。「なぜ売れないのか?」そのメカニズムは以下の3つ。
①融資の難しさ
ひとつに、金融機関から買主さんへの融資の難しさです。境界未確定(隣地との境があいまい)、再建築不可(建築基準法上の問題で建て替え不可)などの不動産としての条件面で金融機関の担保評価が下がり、住宅ローンが通りにくくなります。結果として自己資金で購入できる買主さんに限定され、母数は大幅に減少します。
②不確定コストの負担
つぎに、境界確定測量・建物の解体・残置物の撤去・インフラ引き込みなど、不確定コストが多い物件は買主さんがリスクを嫌い、交渉自体が成立しにくくなります。
③手間やリスクの大きさ
さらに、賃貸契約があれば入居者交渉といった権利関係の整理、隠れた問題に対する契約不適合責任(引き渡し後の不具合に対する売主責任)の発生リスクなど、不動産購入後の手間やリスクを買主さんは敬遠します。
一方、全国的に空き家が過去最多となり、需要のミスマッチが加速しています。総務省「2023年住宅・土地統計調査」速報によれば、空き家は約900万戸、空き家率13.8%と過去最高を更新しました。
都市中心部の人気物件に購入希望が偏り、郊外・地方では供給過剰…。条件が悪い物件は価格を下げても売れにくい状況です。物件固有の問題にエリア全体の需給バランス悪化が重なるため、市場は年々狭まり「売れない家」はますます流通しづらくなっています。
ここまで見たように、構造的要因と個別要因が相まって、売却難易度が上がっていることにも意識が必要です。
「税負担・法的責任・価値低下」売れない家の三重苦!
では、売れない家を活用することもなく、放置してしまうと何が起こるのかを整理しましょう。具体的には以下のような「三重苦」とも言える大きな負担がのしかかります。
①税負担が増大する
まず、空き家のまま放置し管理できていないと、行政から「特定空家」や「管理不全空家」に指定・勧告されることがあり…、
・軽減税率が外れ、固定資産税は最大6倍、都市計画税も最大3倍まで跳ね上がる(200㎡以下の小規模住宅用地が前提)
・危険空家と判断され、「行政代執行(強制解体)」される
・その解体費用が請求される
つまり、活用できないばかりか、ある日突然高額請求が来るリスクがあるワケです。
②法的責任のリスク
つぎに、長年メンテナンスせず放置されて老朽化した家は…、
・建物の倒壊など安全面
・害虫の発生など衛生面
・放火や不法投棄など防犯面
といった劣悪な状況になります。そうなれば、近隣に被害を与える可能性があり管理責任を問われます。こうした法的リスクは「知らなかった」では済まされないため、先送りが大きな不安材料となります。
③価値が低下していく
さらに、建物は人が住まなくなると急速に傷みます。雨漏りやシロアリ被害が進んだ家があると…、
・家の利用価値がなくなり解体するしかない
・老朽化した上下水道設備等の更新費用の発生
・見た目が悪い物件は反響が得られにくい
ということになり、土地だけを売るにしても買主さんが敬遠し売却価格は下落するばかりです。交渉のテーブルにすら乗らなくなるため、待てば待つほど価値を削り続けることになるのです。
各種制度では使いづらくて手放せない!

であるなら、「複合的な問題を抱えた売れない家でも、寄付できれば解決できるのでは?」と考えるかもしれませんが、実際の制度には思わぬハードルがあります。ここでは代表的な三つを分かりやすく解説します。
①相続放棄をする
ひとつに、相続放棄。今回のような「負」動産と言うべき売れない家といった土地も建物も含め、相続開始を知ってから原則三か月以内に家庭裁判所で手続きすると、負債を引き継がずに済みます。
ただし、預金や株式などプラスの財産も一括で放棄するため「家は要らないけど現金は受け取りたい」という希望は通りません。また、法定相続人全員が放棄すると、他人に引き継がれるまで一定の管理責任が残る可能性(最低限の保存行為が必要)があります。
②無償譲渡や寄付をする
ふたつ目に、自治体やNPOにタダで引き取ってもらう方法ですが、維持管理や解体にかかわる費用が課題になり、受け入れが困難である場合が多く、申し出ても断られることが一般的です。仮に受け手さんが見つかっても、名義変更時に贈与税や不動産取得税、登録免許税がかかる場合があり、譲り受け側が二の足を踏む原因になります。
また、当然ながら不動産の売却益は得られないばかりか、譲渡後に隠れた欠陥が見つかるとトラブルへ発展しやすく、交渉は慎重さが求められます。
③相続土地国庫帰属制度を活用する
三つ目に、2023年スタートの新制度で、相続した不要な土地を国に引き取ってもらう仕組みです。魅力的に聞こえますが、「建物がなく」「境界が確定し」「担保権や土壌汚染がない」など厳格な条件をすべて満たす必要があります。
まして、審査手数料と負担金(宅地は原則20万円)、及び解体費用(規模による)がかかり、審査には8ヶ月程度かかるのが一般的な目安です。法務省の公表データでも申請のおよそ2割弱が却下・取下げとなっており、万能とは言えません。
「もう売れない」と諦めかけた長屋と貸家が混在する土地の出口戦略!
ここからは、実際に弊社で対応させていただいた事例をご紹介します!
最初に複数の仲介会社へ相談したA様は、「長屋は建て替えが難しく担保評価も低い」「境界が未確定のままでは金融機関がローンを組ませてくれない」「変形地は需要が少なく価格も下がりやすい」などと断られ、半ば諦めかけていました。
そんな中、弊社にご相談にいらっしゃいました。
そこで、まず隣地との協議といった、境界確定をはじめとする工程を丸ごと代行。長屋は「再建築不可(法的問題により新たな建物を建てられない物件)」前提で減価査定を開示しつつ、現状のまま一括で買取り、戸建の入居者との賃貸契約も安全に引き継ぎました。
煩雑な手続きをすべて任せられたA様は、想定より低い価格でしたが物件を早期に現金化でき、「悩みが一気に消えた」と安堵。
今では長屋部分をスケルトン改修してコワーキングスペースへ再生するプランが進行中で、A様も「古い家が街の役に立つなら嬉しい」と語っておられました。
その出口戦略を通してお客様の充足感を間近で感じられ、担当としても大変うれしい気持ちになったことを覚えています。
複合的問題で売れない家は買取で解決?
ということで、複合的な問題を抱える売れない家を最短で手放すには、下記の順です。
棚卸し:交渉に必須の資料がそろい、次のステップがブレなくなる
↓
優先順位決め:時間や手間、費用面や精神面、何を重視するか決定する
↓
手放すルート決め:下記の方法の中から比較と検討をする
各種制度を利用するためには、事前費用や審査期間を把握。国庫帰属は審査手数料や建物解体などで計100万円以上かかることも珍しくなく、相続放棄は発生からの期限がシビアです。これら制度の可否を専門家に確認してから動くと無駄な出費を防げます。
もしくは、棚卸しを経て不動産仲介に再挑戦するのも一手。仲介であれば、相場どおりの売却価格が期待できるからです。費用対効果を考えつつ修繕したり、ボロ戸建ての不動産投資家向けに収益物件として利回りを提示したりすると、これまで反響ゼロでも問い合わせが入る例もあります。時間に余裕があるなら検討の価値があります。
「制度の要件が厳しい」「手間や時間をかけられない」「回収見込みがたたない費用負担」などが不安に感じて迷ったら、現況のまま買い取る専門業者へ相談しましょう。査定は無料で、断っても費用はかかりません。
買取では、売却価格は相場より低くなりますが、利用するメリットは以下のようなものがあります。
・契約不適合責任が免責になるケースが多く、後日のトラブルの心配が少ない
・現況のままで買い取るので、測量、解体、残置物処分をする手間や持ち出しがなく、遠方に住んでいても手続きが簡単
・確実な取り引きで現金化が早く先行きが見通しやすいため、次の資金計画を立てやすい
「家の老朽化などの状況の悪さ」「条件面による需要の低さ」「共有状態などで権利関係が複雑」「入居者や近隣とのトラブル」など、複合的問題を抱えて売れない家でも、不動産買取なら解決できるかもしれません!
今日の相談が明日の問題を止める最初の一歩。ぜひご連絡ください。
まとめ
今回の記事では、売れない家の問題を棚卸しして現状を可視化し、「なぜ売れないのか」を分解してリスクを把握、家を手放す現実的なルートを解説しました。
まず、「売れない家」は何かしらの問題を抱えていて、それが複合的に絡んでいるケースも多いため、手放すことは難しいです。活用できなくても維持管理に伴う費用が大きく、経済的にも心理的にも負担。その負担の原因である問題を解決するには、家の状況を正確に把握することが大切です。
そこで、問題を棚卸しする五つの観点は以下。
・建物の状況
・土地の条件
・権利の関係
・賃貸借の問題
・コストの問題
問題の棚卸しをすることで適切な売却交渉を進めることができるようになりますが、複合的に問題が重なるほど売れにくくなるメカニズムは以下の3つ。
①融資の難しさ
②不確定コストの負担
③手間やリスクの大きさ
一方、全国的に空き家が過去最多となり、需要のミスマッチが加速。都市中心部に購入希望が偏り、需給バランス悪化で市場は年々狭く、「売れない家」は構造的要因と個別要因が相まって、売却難易度が上がっています。
とは言え、売れない家を活用せずに放置してしまうと、以下のような「三重苦」とも言える大きな負担がのしかかります。
①税負担が増大する
②法的責任のリスク
③価値が低下していく
ならば、「売れない家でも寄付できれば解決?」と考えるかもしれませんが、実際の制度には思わぬハードルがあります。
①相続放棄:期限がシビアで財産も放棄しなくてはならず、他人に引き継がれるまで一定の管理責任が残る
②無償譲渡や寄付:双方に負担があり、交渉は慎重さが求められる
③相続土地国庫帰属制度:厳格な条件をすべて満たす必要と費用負担があり、審査には時間がかかる
ということで、複合的な問題を抱える売れない家を最短で手放すには、「棚卸し→優先順位決め→手放すルート決め」の順で検討。
手放すルートのポイントは、
・各種制度を利用するためには、事前費用や審査期間を把握し、それぞれの制度の可否を専門家に確認してから動くと無駄な出費を防ぐ
・棚卸しを経て不動産仲介に再挑戦するなら、売却価格は相場どおりの可能性が高いので、費用対効果を考えつつ手間や時間や費用から検討する
・上記に不安を感じて迷ったら、売却価格は低くなることを加味しつつ、現況のまま買い取る専門業者へ相談することを検討する
買取を利用する主なメリットは以下。
・契約不適合責任が免責になるケースが多くトラブルの心配が少ない
・現況のままで手間や費用持ち出しが少なく、手続きが簡単
・確実で現金化が早く、次の資金計画を立てやすい
複合的問題を抱えて売れない家でも、不動産買取なら解決できるかもしれません!
私たちエスエイアシストも不動産買取業者のひとつです。入居者がいる古いアパートや借地・底地、再建築不可など、困ってしまう“訳あり物件”のご相談を数々解決してきた実績があります。ぜひ他社さんと比較していただければと思います。難しい物件をお持ちでお困りの方は、一度エスエイアシストにご相談ください!お待ちしています。



