
独自のノウハウにより入居者がいる古いアパートや借地・底地、再建築不可など、他の不動産会社が取り扱いづらい“お困り物件”を解決に導いてきた不動産・用地開発のスペシャリスト、株式会社エスエイアシストがお届けする“お困り物件”コラム、第114回目は「築50年マンションの建て替え費用が払えない!」です。
築50年を超えるマンションの区分所有者さん、こんな不安はありませんか?「管理組合の総会がまとまらない」「建て替え費用が払えないのではないか」など、先行きへの不安です。そのまま放置すれば老朽化とともに資産価値が下がり、いざ売ろうとしても買い手さんがつかなくなる…、そんな悪循環は避けたいところです。しかし今、旧耐震基準の古いマンションにおいて、修繕積立金の不足、管理組合での意見対立などで建て替え費用が賄えず途方に暮れる区分所有者さんが増えている現実があります。
今回の記事では、「なぜ建て替え費用が払えないのか?」その理由と放置リスクを整理し、その費用を抑える対策、そして区分所有権を売却する方法まで、詳しく解説していきます。読んでもらえれば、大切な住まいと資産価値を守る道筋がきっと見えてきます。ぜひ最後までお付き合いください!
築50年マンションと建て替え費用の現実!

はじめに「築50年マンション」とは、「竣工から50年以上が経過し、規制の緩い旧耐震基準(1981年5月以前の建築確認申請)で建てられたマンション」を指します。管理状況や建物にもよりますが、これらのマンションは…、
・耐震性能が低く、震度6強でも倒壊するリスクが高い(不安がある)
・給排水管や電気設備などのインフラが寿命を迎えている
・将来の設備更新やメンテナンスを十分に考えられていない設計の可能性がある
・専有面積が現在のニーズよりも狭く、容積率の余剰がほぼない
といった特徴があります。
そして、税法上・会計上のマンションの法定耐用年数は47年とされており、一般に住宅ローンの審査が厳しいものになります。そのため、新しい世帯が入りづらく、結果的に古くから住む高齢者世帯が多くなる傾向です。
もちろん、実際の使用価値としての寿命というワケではありませんが、適切な管理をしていなければ使用できなくなる期限は早まります。国土交通省のデータによれば、「除去されたマンションの平均築年数」は68年(解体時点の築年数のデータ)とも言われています。
よって築50年マンションであれば、今後の建て替えについても真剣に議論しなくてはなりません!
そんなマンションの建て替えには、以下のような費用が1戸あたりに発生します(規模や内容による)。
・既存建物の解体費用:250〜400万円(足場・重機・廃材処分など)
・新築工事費:600〜1,000万円(躯体・内装・共用設備まで)
・仮住まい費用:150〜200万円(家賃・引っ越し・家財保管を含む)
・各種設計コンサル費用:50〜100万円(基本設計・監理・測量 ほか)
現在の資材・人件費上昇を考慮すると、おおむね1000万円〜1,500万円/戸。都心部や高仕様の場合は2,000万円超の事例もあります。当然ですが、マンション一棟となると、数億円かかることも!
ところが、多くの築50年を超えるマンションでは修繕積立金は不足し、各管理組合が資金調達に苦慮、もしくは見通しも立っていないケースもあるのが現実です。
築50年マンションを放置すると起きるリスク!
そんな中で「建て替え費用が払えないから…」と追加拠出を避けるどころか、議論すら先送りにされてしまえばどうなるか…。築50年マンションを放置していると、時間とともに以下のような深刻な問題が、次々と起こるリスクがあります。
①安全性の低下
まず、最も大きな問題は安全性の低下です。1981年以前に建てられたマンションの多くは旧耐震基準のままで、耐震補強工事もされていません。もし大きな地震が起きた場合、建物が倒壊してしまう危険性があります。それは例え地震でなかったとしても、経年劣化で外壁のタイルがはがれ落ちたり、給排水管が老朽化して破裂・漏水したりと、事故やトラブルにつながることも懸念されます。
②居住環境の悪化
つぎに心配なのが、居住環境の悪化です。建物は適切に管理しなければ、外壁コンクリートの劣化によるクラック(亀裂)から雨漏りしたり、断熱機能の低下で室内に結露やカビが発生しやすくなったりします。こうした状況は、住んでいる人の健康にも悪影響を及ぼすことがあります。他方、徐々に空き部屋が増えてくると、不審者の侵入など防犯面にも不安が出てきて生活を脅かします。
③管理組合機能の低下
さらに深刻なのが、管理組合機能の低下です。築50年ともなると住民さんの高齢化が進み、役員を引き受け手がいなくなるなど、管理組合の活動が停滞。先述の通り、住宅ローンの審査が厳しく、新しい世帯が入りにくい状況にあります。その結果、修繕や建て替えといった重要な議題も話し合いが進まず、何年も決まらないまま放置されることも珍しくありません。
④管理コストの上昇
こうして管理体制が弱まってくると、管理コストの上昇も避けられません。たとえば、定期的な点検が行われず共用部分の劣化が進めば、対応が遅れた分だけ修繕費がよりかさみます。また、管理不足によって「積立金等の滞納者が多く資金不足」「清掃や点検不足で見た目も悪くなる」「住民総会自体に不備がある」などといったことが散見されれば、マンション全体としての信用も落ち、火災保険などの保険料の上昇や地震保険の引き受けを断られるケースも。
⑤資産価値の急落
そして何より見逃せないのが、資産価値の急落です。築古で修繕も行き届いていないマンションは、市場評価が大きく下がります。場合によっては、同じエリアの平均的な物件よりも大きく物件価格が低くなることがあります。区分所有者さんの状況によっては「売ろうにも借入残債が消えない」ケースや、「売却できたとしても、その後の生活の先行きが見えない」ケースもあるでしょう。
こうした状況に陥ってしまうと、マンション管理適正法に基づき、行政から「管理不全マンション」として勧告される可能性があります。そうなると、区分所有者さんには是正指導が入り、修繕や建て替えについても、いっそう厳しい条件の中で判断を迫られることになります。
だからこそ、「まだ住めるから大丈夫」とせず、今こそ一歩踏み出して事態打開へと真剣に向き合うことが大切です!
負担を抑える5つの対策!
これまでお話しした通り、建て替えにかかる高額な費用や合意形成の難しさに悩んでいる方も多いと思いますが、そんな状況でも検討の余地があります。ここでは、費用面での負担を少しでも軽くするための代表的な5つの方法をご紹介します。
①容積率緩和と余剰戸販売
ひとつ目は、容積率の緩和と余剰部分の販売です。これは、行政から「建て替えが必要な老朽化マンション」として認定されると、通常よりも高い建物を建てられる特例を使えるようになり、その分多くの部屋をつくることが可能に!増えた部屋を新たに分譲できれば、その売却益を建て替え費用に充てることができるのです。たとえば、元々の戸数から約1.3倍に増やした結果、住民の負担が約4割も軽減された事例もあります。
②一棟リノベーションで延命
つぎに、「一棟全体をリノベーションで延命する」方法もあります。もし建物の基礎部分や構造がまだしっかりしているならば、大規模な修繕や設備の入れ替えによって、マンションの寿命を延ばすことができます。特に耐震補強と共用設備の更新を行うことで、あと20年ほど安心して暮らせる環境を整えることができ、かかる費用も建て替えに比べて半分以下になることが多く、現実的な選択肢のひとつです。
③区分売渡請求制度の活用
三つ目は、区分売渡請求制度の活用です。これは、マンションの建て替えについて総会で一定の賛成が得られた後、「反対している人の住戸を時価で買い取る」ことができる制度です。たとえば、反対意見によって合意形成が進まない場合、この制度を使うことで最終的な建て替えの決断が可能になります。その買い取りにかかる費用は、建て替え事業費の中に組み込むことができるため、大きな個人負担はありません。
④低利の融資で負担を下げる
四つ目の方法は、低利の融資を活用すること。住宅金融支援機構などが行っているマンション建て替えのための融資制度を使えば、長期の融資を受けることができます。しかも、老朽化によって要除却認定(老朽化による取り壊しの必要性を特定行政庁が認める)を受けている場合は、金利優遇も受けられます。そのため、一般の住宅ローンよりも返済の負担を月に数万円軽くすることが可能です。
⑤区分所有権の売却
そして最後に、「区分所有権を売却する」という選択肢もあります。住民間の合意形成が進まず見通しが立たない場合や、そもそも費用負担が難しいと感じている場合には、自分の持ち分だけでも早めに手放すことで、リスクを避けることができます。特に今後の生活設計を見直したいのであれば、売却によってまとまった資金が手に入れば、次の住まいや老後の暮らしの資金に充てることができるメリットも大きいでしょう。
建て替え費用が払えないなら売却も検討!

というワケで、もし「建て替え費用を抑えても資金調達が難しい」のであれば、ご自身の区分所有権のみを売却することも検討すべきです。
同じ売却でも、先述の敷地全体の売却は全戸退去が前提な上、売却益には譲渡所得税・住民税計20.315%が課税され、「居住用3000万円特別控除」が使えないケースもあるため注意が必要です。税負担も含めて慎重に判断しなくてはなりません。
マンションの区分所有権を「仲介」を通じて売却するのなら、築50年マンションであっても売却益を多く得られる可能性があります。ただし、買い手さんのローン審査の厳しさから売却活動に時間がかかることや、最終的に「売れない」ケースもあることも認識する必要がありそうです。
一方、不動産「買取」によって業者さんに売却する場合、一般的な不動産市場価格よりも低くなります。ただ、築50年マンションで建物が老朽化していたり、管理が行き届いていない状態でも「現状のままで買い取ってくれる」ことが大きなメリットです。そのため、修繕やリフォームといった初期費用がかかりません。
また、売却に向けての広告活動や内覧対応といった煩雑な作業が不要な上、通常は1〜2週間で手続きが完了することが多いです。これにより、「資金繰りを急ぎたい」「将来の建て替えリスクから早めに離れたい」といった考えの方にとって、非常に大きな安心材料となります。
その他、買取では以下のようなメリットもあります。
・仲介手数料がかからないため諸費用を抑えられる
・売却後のトラブルが発生しにくい
・周囲に知られずに静かに売却できる可能性が高い
これらの利点からもわかる通り、築50年マンションの建て替え費用が払えない区分所有者さんにとっては、不動産買取は時間的・心理的コストを抑えられるため、現実的な選択肢となります!
まとめ
今回の記事では、建て替え費用が払えない理由と放置リスク、その費用を抑える対策、そして区分所有権を売却する方法までを解説していきました。
はじめに「築50年マンション」とは、「竣工から50年以上が経過し、規制の緩い旧耐震基準(1981年5月以前の建築確認申請)で建てられたマンション」を指します。これらのマンションは、「震度6強でも倒壊するリスクが高い・インフラが寿命を迎えている・将来の設備更新を考えられていない設計・容積率の余剰がほぼない」といった特徴があります。
マンションの法定耐用年数は47年とされ、住宅ローンの審査が厳しく高齢者世帯が多くなる傾向にあり、適切な管理をしていなければ使用期限は早まるため、今後の建て替えについて議論が必要。
現在の資材・人件費上昇を考慮すると、おおむね1000万円〜1,500万円/戸の費用がかかりますが、多くの築50年マンションでは修繕積立金は不足し資金調達に苦慮、見通しも立っていないのが現実です。
具体的に建て替え費用が払えない理由は大きく以下の3つ。
①建設や解体といった費用の高騰
②修繕積立金の不足と高齢住民の反対
③合意形成の難しさと負担の不公平感
そんな中で築50年マンションを放置していると、以下のようなリスクがあります。
①安全性の低下
②居住環境の悪化
③管理組合機能の低下
④管理コストの上昇
⑤資産価値の急落
こうした状況に陥れば、行政から「管理不全マンション」として是正指導が入り、建て替えについても厳しい条件の中で判断を迫られることになるため、真剣に向き合うことが大切です!
費用負担を軽くするための代表的な方法は以下。
①容積率緩和と余剰戸販売
②一棟リノベーションで延命
③区分売渡請求制度の活用
④低利の融資で負担を下げる
⑤区分所有権の売却
もし建て替え費用を抑えても資金調達が難しいなら、ご自身の区分所有権のみの売却も検討すべきです。同じ売却でも、敷地全体の売却は全戸退去が前提な上、売却益には20.315%が課税され、「居住用3000万円特別控除」が使えないケースもあるため、税負担も含めて慎重に判断しなくてはなりません。
「仲介」を通じて売却するのなら、売却益を多く得られる可能性がありますが、売却活動に時間がかかることや「売れない」ケースもあります。
一方、不動産「買取」によって売却する場合、市場価格よりも低くなりますが、以下のようなメリットもあります。
・老朽化や管理不備の状態でも現状のままで買い取ってくれる
・煩雑な作業が不要で1〜2週間で手続きが完了する
・仲介手数料がかからないため諸費用を抑えられる
・売却後のトラブルが発生しにくい
・周囲に知られずに静かに売却できる可能性が高い
これらの利点は、築50年マンションの建て替え費用が払えない区分所有者さんにとって、時間的・心理的コストを抑えられる現実的な選択肢となります!
私たちエスエイアシストも不動産買取業者のひとつです。入居者がいる古いアパートや借地・底地、再建築不可など、困ってしまう“訳あり物件”のご相談を数々と解決してきた実績があります。ぜひ他社さんと比較して頂ければと思います。難しい物件をお持ちでお困りの方は、一度エスエイアシストにご相談ください!お待ちしています。
