独自のノウハウにより入居者がいる古いアパートや借地・底地、再建築不可など、他の不動産会社が取り扱いづらい“お困り物件”を解決に導いてきた不動産・用地開発のスペシャリスト、株式会社エスエイアシストがお届けする“お困り物件”コラム、第78回目は「2025年4月の建築基準法改正が与える影響」です。
「持ち家を売りたいけど、2025年の建築基準法改正が影響するかも…」そんな不安を抱えていませんか?この法改正では、耐震性能や省エネ性能が厳しく問われることになり、新築住宅のみならず、既存住宅にも大きな影響があると予想されています。特に、木造二階建て住宅の再建築不可物件といった問題を抱えた不動産所有者さんには激震とも言えるかもしれません!
今回の記事では、「2025年4月施行の建築基準法改正の背景と目的」「改正が木造二階建てに与える影響」、そして「不動産活用や売却の今後」について分かりやすく解説します。法改正後の変化に備え、今後も所有不動産を最大限活用するために、ぜひ最後まで読んでみてくださいね!
2025年建築基準法改正の背景と目的とは?
はじめに、なぜ今回2025年4月に建築基準法が改正されるのでしょうか。その背景として、時代や気候の変化に伴う日本社会の課題の深刻化があります。詳しく見ていきましょう。
①地震大国としての課題
ひとつに、日本が世界有数の地震大国であることがあります。過去にも阪神淡路大震災や東日本大震災などによって甚大な被害がもたらされる度、繰り返し法改正は行われてきました。ただ、当然ながらすぐには既存の建物が変わるワケはなく、未だに耐震性が不十分な建物が多くあり大きなリスクとなっている現実があります。特に、昭和以前に建築された建物では、耐震基準が現在ほど厳格ではなかったため、多くが地震に弱い構造となっています。
②環境負荷の増加
また、環境負荷の増加の影響です。一般的な住宅での生活の営みは、日本における日々のエネルギー消費の大部分を占めています。その多くが古い木造住宅であり、断熱性能や設備の効率性に問題を抱えています。このような状況は以下のような悪影響を及ぼします。
・温室効果ガスの増加:エネルギー効率の低い住宅ではCO₂排出量が多い
・光熱費の増大:省エネ性能が低いため住民の経済的負担も重くなる
③既存住宅の老朽化
そして、日本では築40年以上の老朽化した既存住宅が増加しています。これらの住宅は、耐震性能や省エネ性能に問題があることは先に述べた通り。人口減少や空き家問題が深刻化する中で、既存住宅(とその土地)の有効活用が重要なテーマとなっています。法改正により、古い住宅の改修やリノベーションを促進し、資源の有効活用と住環境の向上を両立させることを図ろうとしています。
これらの背景から、法改正の目的をまとめると以下。
・耐震基準を厳しくすることで、建物の倒壊リスクを軽減する
・断熱材の導入や高効率設備を義務化し、エネルギー消費を削減する
・既存住宅の長寿命化をするため、リフォームや再利用を促進させるための基準を整備する
・特例の縮小や構造計算の合理化のため、建築確認や検査の対象となる建物の見直しをする
新築のみならず大規模リフォームにも影響が!
この目的を果たすために建築基準は厳しいものとなり、新築住宅のみならず、既存住宅の大規模リフォームにも大きな影響を与えることが予想されています。以下では、法改正が既存住宅のリフォームにどのように影響するのか、具体的に解説します。
①建築確認申請の適用範囲が拡大
これまで、一般的な木造二階建て住宅(4号建築物に分類)のリフォームでは、床面積が増える増築工事や用途変更が伴う大規模リフォーム以外は、建築確認申請は不要でした。しかし、法改正後は建築確認申請を必要とするケースが増える見込みです。具体的には、主要構造部(壁、柱、床、はり、屋根、階段)の過半(二分の一)を超える範囲での修繕や模様替えが該当します。
・屋根の葺き替え
・外壁全面張り替え
・柱や梁の交換
・階段位置の変更
・大幅な間取り変更 など
該当する工事では、構造計算書や省エネ関連の書類の提出が義務付けられます。
②建築確認申請で求められる基準を満たす必要
そんな建築確認申請では、住宅の一部の工事であっても住宅全体が審査対象になるため、追加的な改修や基準に達している証明が必要になるケースが出てきます。その求められる基準とは、以下を満たすことが重要になります。
・耐震基準:建物全体の強度が基準を満たしているか
・省エネ基準:断熱材や窓の性能、設置設備が基準を満たしているか
・防火基準:火災時の被害を抑えるための基準を満たしているか
③リフォームが困難になる
そして、基準を満たさない場合には以下のような問題が表面化し、リフォームが困難になります。
・コストの増大:基準を満たすために工事内容が大幅に変更され、コストが増大する
・手続きや工期の長期化:建築確認申請の厳格化で、手続きに煩雑化と着工の遅れが生じる
・専門知識が必要:構造計算に伴う業者側の人材不足や、より高度な専門知識が必要になる
・是正命令の可能性:物件全体で法的な問題がある場合、是正命令を受ける可能性がある
再建築不可物件と既存不適格物件はどうなる?
ここでのポイントになるのは、「物件全体で法的な問題がある場合、是正命令を受ける可能性がある」というところです。今回の建築基準法改正では、「再建築不可物件」や「既存不適格物件」、そして「違法建築物件」にも大きな影響を与えることになります。それぞれの特徴と課題、対策を以下にまとめます。
①再建築不可物件
ひとつに、「再建築不可物件」があります。これは、「建築基準法に定められた接道義務(建築基準法上の幅員4m以上の道路に敷地が2m以上接していなくてはならない)を果たしていないため、新たに建物を建てることができない物件」のことを指します。法改正前なら、大規模なリフォームを行うことで新築同然の住宅にすることが出来ましたが、今回の法改正でさらに取り扱いが難しくなることが考えられます。
対策として、
・敷地と道路との境界を後退(セットバック)させて、前面道路の幅員を確保する
・隣地の土地を購入したり借りることで、前面道路との接地面を広げる
・行政手続きによって位置指定道路の指定(私道を道路として認めてもらう)を受ける
などの方法があります。
②既存不適格物件
つぎに、建築当時は法律に適合していたものの、法改正によって現法に適合しなくなった「既存不適格物件」があります。そのまま生活する分には何の問題もありません。理由はさまざまで、建ぺい率(敷地面積に対する建物面積の割合)や容積率(敷地面積に対する延床面積の割合)がオーバーしていたり、構造的に耐震・耐火基準に合わないものだったりします。
対策として、
・建物診断を実施して、正確な建物の状態を把握する
・耐震基準や耐火基準、省エネ基準を最小限の改修でクリアさせる
などを行います。
③違法建築物
さいごに、文字通り建築基準法他に違反して建てられた「違法建築」です。正しく申請をせずに増築等をして大きく構造を変えてしまったり、そもそも悪徳業者によって建築当初から違反していたりします。よくあるのが、固定した物置や屋根付きカーポートを設置してしまうケース。しかし、住人さんは違法性を認識していない場合もあります。
対策としては、違法建築部分を是正するために、工事を行う他ありません。
木造二階建て住宅の不動産売却を考える所有者には大問題?
ただ、例え是正対象でなくても、特に木造二階建て住宅の不動産売却を考える所有者さんや関連業者さんに「大問題が起きるのでは?」と言われる所以が、今回の法改正にはあります。その背景にあるのが「4号特例の縮小」です。この変更が木造二階建て住宅所有者さんにとって、どのような問題を引き起こすのか、詳しく解説します。
「4号特例」とは、建築基準法において特定の条件を満たした場合に、建築確認の審査を一部省略できる特例規定です。この特例の適用対象には、一般的な木造二階建て住宅も含まれていました。「建築士が設計を行い、工事監理者が設計図通りの施工を確認していれば、構造耐力関係規定等の審査が免除」されていました。
しかし、2025年4月の改正では、この特例が縮小され、以下の変更が行われます。
・構造計算の義務化:木造二階建て住宅でも耐震性能を証明するために構造計算が必須になる
・省エネ基準への適合審査:断熱性能やエネルギー効率が基準を満たしているかどうかを確認する必要
そんな4号特例が縮小されることで、それらの木造二階建ては特例適応外になるワケです。そもそも日本の既存住宅のほとんどは、木造二階建てです。当然、設計・施工業者側にも行政側にも、具体的には以下のような影響がでると思われます。
①設計・施工業者の問題
・業務量の増加:業務量が増えて手続きにも手間取り、工事前の準備期間が長くなる
・人材不足:工務店レベルでは構造計算や省エネ基準に精通した技術者が少ない
・経営状態悪化:建築の許可が下りずに、建築計画の変更や運転資金が焦げ付くリスク
②行政の問題
・申請審査の負担増:審査件数が増加することで、建築確認申請の処理に時間がかかる可能性
・人手不足:耐震構造などに詳しい技術職員が不足の地域格差や、審査が滞るリスク
・審査基準の厳格化:基準適合性のチェックや、是正命令の手続きが複雑化する
③木造二階建て住宅の不動産売却を考える所有者の大問題
・工事コストの増加:工事内容や人件費によって工事コストが増加する
・建築計画の変更:申請が承認されず、設計のやり直しや建築計画の変更を余儀なくされる
・売却の難航:基準を満たしていない住宅は買い手が付きにくく、売却が難しくなる
法改正の影響を受けた住宅は今後どうする?
法改正後に基準を満たしてない、もしくは基準を満たすためには大きな障害がある住宅は、今後は不動産売却や活用が難しくなる可能性があります。では、法改正の影響を受けた住宅は今後どうすればいいでしょうか?
その不動産売却や活用時の注意点は以下。
・住宅の診断を受ける:耐震性や省エネ性能が基準を満たしているか確認する
・市場動向を把握する:改正後は基準を満たした物件の需要が高まる一方で、基準を満たしていない物件は敬遠される傾向がある
・費用対効果を検討する:リフォーム費用をかけるか、現況のままで売却するかを判断する
その上で以下の戦略を取り、所有物件を有効に活用することが考えられます。
①過半に達しない改修を行い資産価値を高める
まず、改修工事を行い住み続ける場合、主要構造部(壁、柱、床、はり、屋根、階段)の「過半」に達しない範囲で修繕を行えば、建築確認申請が不要となる場合があります。この条件を活用し、必要最低限の工事で資産価値を高める方法です。
メリットとしては、
・コスト削減:改修範囲を限定することで、全体的な工事費用を抑えられる
・建築確認申請が不要:手続きが簡略化され、工期短縮が期待できる
・資産価値向上:見た目の改善や省エネ性能の向上により市場価値を上げる
デメリットとしては、
・大規模修繕はできない:過半を超える工事ができず、老朽化した建物では根本的な改善が難しい
・長期的な課題:部分的な修繕では、いつかは建物全体の耐久性や耐震性に限界がくる
②最低限の改修のみを行い賃貸に出す
つぎに、売却が難しい場合です。最低限の改修だけを行い、賃貸物件として運用することも選択肢の一つです。例えば、耐震補強や窓の断熱性能向上を行うことで、災害リスクを軽減しながら、居住者にとって快適な住環境を提供することができます。
メリットとしては、
・収益化できる:売却が難しい物件でも、賃貸運用を通じて安定した収入を得られる
・最低限の投資で運用:必要な部分のみの工事で賃貸としての利用価値を高める
・所有の維持継続:売却しなくても資産保持できるため、長期的な価値向上が見込める
デメリットとしては、
・維持管理費の負担:賃貸運用中も修繕や管理の責任を負う必要がある
・経営手腕が問われる:賃貸未経験では経営は立ち行かなくなる
③不動産買取業者に現状のまま売却する
さいごに、基準を満たすための改修が困難な場合や、費用対効果が見込めない場合は、不動産買取を利用して現状のまま売却する方法も賢明です。先述の再建築不可物件といった問題もある物件でも対応可能なケースが多いのが特徴です。
メリットとしては、
・迅速な売却:直接取引で即売却でき、改修や建築確認申請の手間を省ける
・トラブル回避:基準不適合部分の是正を求められずに売却が完了
・費用負担が軽減:改修コストをかけずにそのまま売却できる
デメリットとしては、
・売却価格が低くなる:業者は転売益を出すため、市場価格より低めの査定額になる
・業者選定が重要:信頼できない業者を選ぶと、不当に買い叩かれるリスク
ということで、木造二階建ての所有者さんで法改正の影響に不安に感じていても、適切に対処出来れば不動産を活用できるハズです!
まとめ
今回の記事では、「2025年4月施行の建築基準法改正の背景と目的」「改正が木造二階建てに与える影響」、そして「不動産活用や売却の今後」について分かりやすく解説してきました。
今回2025年4月に建築基準法が改正される背景は以下。
①地震大国としての課題
②環境負荷の増加
③既存住宅の老朽化
これらの背景から、法改正の目的をまとめると以下。
・建物の倒壊リスクを軽減する
・エネルギー消費を削減する
・既存住宅の長寿命化を図る
・建築確認や検査の対象となる建物の見直しをする
この目的を果たすために建築基準は厳しいものとなり、既存住宅の大規模リフォームにも大きな影響を与えることが予想されています。具体的には以下。
①建築確認申請の適用範囲が拡大して一般住宅にも影響
②建築確認申請で求められる基準を満たす必要がある
③大規模リフォームが困難になる
ここでのポイントになるのは、「物件全体で法的な問題がある場合、是正命令を受ける可能性がある」というところです。それぞれの特徴と課題、対策は以下。
①再建築不可物件
建築基準法に定められた接道義務を果たしていないため、新たに建物を建てることができない物件であり、今回の法改正で大規模リフォームが出来なくなり、さらに取り扱いが難しくなります。
対策として、セットバックや隣地の土地を購入したり借りる、もしくは行政手続きによって位置指定道路の指定を受けるなどの方法があります。
②既存不適格物件
建築当時は法律に適合していたものの、法改正によって現法に適合しなくなった物件は、そのまま生活する分には何の問題もありませんが、建築確認申請時に問題になります。
対策として、建物診断で正確な建物の状態を把握し、基準を最小限の改修でクリアします。
③違法建築物
建築基準法他に違反して建てられた「違法建築」です。正しく申請をされていないため、当然ながら建築確認申請は通りません。対策としては、違法建築部分を是正するために、工事を行う他ありません。
ただ、例え是正対象でなくても、今回の法改正では、木造二階建て住宅の不動産売却を考える所有者さんや関連業者さんに大問題となります。その背景にあるのが「4号特例の縮小」です。
「4号特例」とは、建築基準法において特定の条件を満たした場合に、建築確認の審査を一部省略できる特例規定です。この特例の適用対象には、一般的な木造二階建て住宅も含まれていて、建築確認審査が免除されています。
しかし、2025年4月の改正ではこの特例が縮小され、木造二階建ては特例適応外になり、以下の変更が行われます。
・構造計算の義務化
・省エネ基準への適合審査
そもそも日本の既存住宅のほとんどは、木造二階建てです。当然、設計・施工業者側にも行政側にも、具体的には以下のような影響がでると思われます。
①設計・施工業者の問題
・業務量の増加
・人材不足
・経営状態悪化
②行政の問題
・申請審査の負担増
・人手不足
・審査基準の厳格化で手間取る
③木造二階建て住宅の不動産売却を考える所有者の大問題
・工事コストの増加
・建築計画の変更のリスク
・売却の難航
法改正後に基準を満たしてない住宅は、今後は不動産売却や活用が難しくなる可能性があります。では、法改正の影響を受けた住宅は今後どうすればいいでしょうか?
その不動産売却や活用時の注意点は以下。
・住宅の診断を受ける
・市場動向を把握する
・費用対効果を検討する
その上で以下の戦略を取り、有効に活用することが考えられます。
①過半に達しない改修を行い資産価値を高める
メリット:コスト削減・建築確認申請が不要・資産価値向上
デメリット:大規模修繕はできない・長期的には課題
②最低限の改修のみを行い賃貸に出す
メリット:収益化できる・最低限の投資で運用・所有の維持継続
デメリット:維持管理費の負担・経営手腕が問われる
③不動産買取業者に現状のまま売却する
メリット:迅速な売却・トラブル回避・費用負担が軽減
デメリット:売却価格が低くなる・業者選定が重要
私たちエスエイアシストでは、入居者がいる古いアパートや借地・底地、再建築不可など、困ってしまう“訳あり物件”のご相談を数々と解決してきた実績があります。今回のように、法改正によって法的に問題を抱えてしまうと、不動産売却はとても困難になります。もし、ほかの不動産会社で難色を示されるような物件をお持ちの方であれば、ものは試しとぜひ一度エスエイアシストにご相談ください!お待ちしています。