独自のノウハウにより入居者がいる古いアパートや借地・底地、再建築不可など、他の不動産会社が取り扱いづらい“お困り物件”を解決に導いてきた不動産・用地開発のスペシャリスト、株式会社エスエイアシストがお届けする“お困り物件”コラム、第89回目は「ホームインスペクションは必要?」です。
「この家を売ろうと思うんだけど、見えていない問題はないかな?」そんな不安を感じていませんか?雨漏りや地盤沈下といった見えない問題があると、不動産売却後にトラブルになることも考えられます!もし買主さんから責任を追求されれば、何らかの賠償をしなくてはならなくなったり、場合によっては契約の白紙撤回されたりするかもしれません。それを未然に防ぐために役立つのが「ホームインスペクション(建物現状調査)」です。簡単に言えば、住宅の健康診断ですね!
この記事では、「ホームインスペクションとは何なのか」、そもそも「費用をかけて実施する必要はあるのか」、でも「もし大きな問題が発覚したらどうするのか」、これらについて詳しく解説します。家を安心して売却するためには、その状態を正しく知ることが大変重要です。ぜひ最後まで読んでいってくださいね!
ホームインスペクションとは?
はじめに、「ホームインスペクション」とは何か。「住宅の劣化や不具合を専門家が調査し、建物の現状を把握・評価し、その結果を報告するサービス」となります。特に中古住宅の売買において、買主さんが安心して購入を検討できる材料として注目されています。住宅診断や建物検査とも呼ばれることもありますが、日本では「建物状況調査(既存住宅状況調査)」として認知されつつあります。依頼内容にもよりますが、具体的には以下のようなものを調査対象とします。
①外装部分
まず、住宅の外装部分。雨風や日差しにさらされているため劣化しやすい箇所であり、問題があれば住宅の耐久性に直結するため、慎重に確認されます。
・屋根:ひび割れ、欠け、雨漏りのリスクがある箇所
・外壁:塗装の剥がれ、ひび割れ、浸水の痕跡がないか
・基礎:ひび割れや地盤沈下の兆候はないか
②主要構造部分
つぎに、住宅を支える重要な主要構造部分も、ホームインスペクションの中核となる調査項目です。この部分に問題がある場合、高額な修繕費用がかかる可能性が高くなります。
・柱や梁:腐食やシロアリ被害、過剰な負荷がかかってないか
・耐震壁:壁の配置バランスや筋交い(斜め部材)は十分か
・床や天井:不自然な傾きやたわみ、目立つひび割れはないか
③設備の動作
また、住宅内の生活に必要不可欠な設備についても、動作確認が行われます。設備が正常に機能しなければ、買主さんが安心して住み始めることはできません。
・給排水設備:水漏れや詰まり、配管の劣化がないか
・電気設備:配線の劣化や安全性、スイッチやコンセントの動作を確認
・ガス設備:ガス漏れや安全性に問題がないか
これらについて、建築士といった専門家さんによって、主に目視や計測をもって調査していきます。そして、2018年施行の改正宅地建物取引業法では、宅建業者さんに対して以下の点を義務付けました。
・媒介契約書面に依頼者の意向があれば、インスペクション業者の斡旋の旨を記載する
・買主への重要事項説明において、インスペクションを実施したのであれば、調査結果を伝える
・建物状況を契約者間で確認し、その内容を契約書に明記する
ただ、インスペクションの実施は、売主さんの義務ではありません!
ホームインスペクションは必要か?
では、なぜホームインスペクションは必要なのか。「やる義務がないなら、やらないほうが、変にアラが出なくていいんじゃない?」となりそうですよね?ならば、わざわざ実施すべき、その重要性はどこにあるのかが知りたいところ。
昨今では不動産価格の高騰により「新築マイホームはとても手が出ない!」ということで、中古住宅市場が活性化しています。そんな中、住宅の状態が不透明だと、売買双方の不安やトラブルが生じやすくなります。ホームインスペクションは、こうした不安を解消し、以下のような効果をもたらします。
①トラブルの未然防止
ひとつ目に、売却後に住宅の不具合が発覚して起こるトラブルを、未然に防止できます。
・雨漏りが発覚し、買主から修繕費用の請求を受ける
・売主が気が付かなかった地盤沈下の兆候が、後に大きな問題となる
これらは事前に建物の状態を正確に把握し、必要に応じて修繕や告知を行うことが重要であり、ホームインスペクションを活用することで、こうしたトラブルを大幅に減らすことができます。
②信頼性の向上
ふたつ目に、ホームインスペクションの報告書を提示することで、物件の現状を正確に説明できることで、信頼性の向上が期待できます。買主さんの不安を解消することに繋がり、売買交渉もスムーズに進む可能性が高まります。
・買主が物件の状態を納得した上で購入を決められる
・売主が誠実に対応しているという印象を与え、信頼関係が築ける
③適正価格の設定
みっつ目に、住宅の状態が曖昧だと、売却価格を適切に設定することが難しくなります。ホームインスペクションを実施することで、住宅の強みと弱点を正確に把握し、適正価格を設定するための根拠を得られます。
・住宅の不具合を修繕する費用を知らなければ、買主に値引きを求められる際に不利になる
・住宅の良い点を見落とせば、本来の価値よりも低い価格で売却してしまう可能性
契約不適合責任と瑕疵担保保険とは?
もしホームインスペクションを実施せずに、万が一にも不動産の売却後に買主さんから「これは契約と違う!」と言われてしまったら、どうなってしまうのでしょうか?それは、2020年の民法改正により、「契約不適合責任」という形で、売主さんの責任が規定されました。ホームインスペクションの重要性を理解する上で、この契約不適合責任という概念は避けては通れません。
契約不適合責任とは、「売却した物件が契約書に記載された内容に適合しない場合、売主が修繕費用や損害賠償を負う責任」のことを指します。これには、建物自体の物理的な欠陥だけではなく、買主さんへの説明不足や資料不備も含まれます。もっと平たく言えば、「ソレ知ってたら購入しなかったのに…」といった状況に責任を取らなくてはなりません。
契約不適合責任を追求された場合、買主さんから求められる内容は以下。
・追完請求:契約内容に添った状態にするための修繕などを求める
・代金減額請求:追完請求に応じられないときに購入代金などの減額を求める
・損害賠償請求:契約不適合によって生じた損害の賠償を求める
・契約解除請求:追完請求に応じられないときに契約自体を解除して代金の返還を求める
これらの請求を求められて困らないためにも、住宅の状況を正確に把握した上で買主さんに事前説明を行うためには、ホームインスペクションが重要であると言えます。
ただ、しっかりと対策したハズでも、売却後の不測の事態というものは起こり得ます。そんな事態に備えるため「瑕疵担保保険」の活用も考えましょう。この保険は、売却後に発覚した隠れた瑕疵(欠陥)について、修繕費用などをカバーしてくれます。瑕疵担保保険によって、買主さんにとっては信頼性が高まり安心感は向上し、売主さんにとっては万が一の金銭的負担が軽減されることになります。
そして、実はそんな瑕疵担保保険に入るために、保険会社さんによってはホームインスペクションを実施していることが必要事項だったりするワケです。
ホームインスペクションのデメリットは?
とは言え、ホームインスペクションを実施すれば、デメリットも発生するのです。何事も裏表なので、以下に確認してみましょう。
①時間や費用がかかる
まず、ホームインスペクションには、調査費用を負担する必要があります。それは、住宅の規模や調査範囲によっては、高額になることもあります。また、調査結果が出るまでに1〜2週間かかる場合もあり、売却タイミングに影響を与えることもあります。
②調査結果がすべての瑕疵の発見を保証するものではない
また、ホームインスペクションはあくまで現状を目視や簡易な機器で確認するものであり、隠れた瑕疵(欠陥)すべてを発見することを保証するものではありません。たとえば、床下・天井裏の見えにくい部分や、調査時点では問題が顕在化していない箇所については、見落とされる可能性があります。
③値引き交渉をされる可能性がある
そして、ホームインスペクションの結果、不具合が明らかになった場合、それを告知しなくてはなりません。そうなると買主さんに値引き交渉をされる可能性があります。他方、大きな修繕が必要な場合、買主さんが購入をためらう原因になる場合も!
ちなみに、買主さん側にもホームインスペクションを実施する権利があります。住宅購入は数千万円もする一生に一度あるかないかの大きな買い物であり、多少のコストを払っても安心を買いたいと考えるのは自然なこと。売主さんがホームインスペクションを「不要!」と考えても、買主さんが独自に実施されるケースは少なくありません。買主さんがホームインスペクションを希望する場合に備えて、住宅の状態を把握し、誠実に対応する準備を整えておくことが大切です。
ホームインスペクションの流れと費用
そんなホームインスペクションの一般的な流れは以下のようになります。
・事前説明:不動産業者よりホームインスペクションの具体的な説明を受ける
・業者選定:斡旋を受ける、もしくは口コミなどを参考に自らインスペクション業者を探す
・事前打合せ:調査の範囲や方法、報告書の内容、重点的に調べたい部分などを確認する
・現地調査:専門家によって目視や機器を使って住宅の状態を調査する
・結果報告:住宅の現状・劣化箇所・不具合の有無・修繕必要箇所の報告書を受け取る
・戦略策定:報告書を基に修繕の費用対効果の検証や売却方法・価格の検討をする
ここでの注意点は「業者選定」です。媒介契約(不動産売却を依頼)を結んだ不動産業者さんから、ホームインスペクションの専門家さんを斡旋・紹介してもらうことは、手間が減って楽な反面、公正中立な調査を行ってもらえない危険性があります。利害関係から、いわゆる「忖度」をされる可能性があり、不利益が生じるかもしれません。業者さんの実績や口コミ等を調べて、しっかりと判断したいところ…。
そして、ホームインスペクションの費用相場は以下の通り。
・基本的な目視調査:外装・構造部分・設備を対象とし、5〜10万円程度
・屋根裏詳細調査:屋根裏のひび割れや雨漏り箇所の詳細調査で、2〜5万円程度
・床下詳細調査:床下のシロアリ被害や湿気の状況等の詳細調査で、3〜7万円程度
・給排水管路検査:配管の詰まりや劣化等の詳細調査で、2〜5万円程度
これらは、あくまでも参考値であり住宅の規模や構造によって違いますが、一般的な一戸建て木造住宅なら合計10〜15万円が相場といえます。また、劣化が著しい場合は耐震診断も必要になるケースもあるでしょう。耐震診断は、ホームインスペクションとは別物ですので、別途15〜25万円程度かかります。
さらに万が一、ホームインスペクション(及び耐震診断)によって不具合が発覚した場合の修繕費用は、例えば以下のような費用がかかります。
・主要部材の修繕:壁や基礎部分のひび割れを補修する費用 20~50万円程度
・地盤沈下の補修:沈下修正工事では50万~150万円程度
・雨漏り修繕:屋根や外壁からの雨漏りを修繕する場合は30万~80万円程度
これらは物件売却をする前に、その必要性をよく判断することが大切になります。
ホームインスペクションによって「もし大きな問題が発覚したら」どうする?
とは言え、ホームインスペクションを実施すれば、デメリットも発生するのです。何事も裏表なので、以下に確認してみましょう。
①時間や費用がかかる
まず、ホームインスペクションには、調査費用を負担する必要があります。それは、住宅の規模や調査範囲によっては、高額になることもあります。また、調査結果が出るまでに1〜2週間かかる場合もあり、売却タイミングに影響を与えることもあります。
②調査結果がすべての瑕疵の発見を保証するものではない
また、ホームインスペクションはあくまで現状を目視や簡易な機器で確認するものであり、隠れた瑕疵(欠陥)すべてを発見することを保証するものではありません。たとえば、床下・天井裏の見えにくい部分や、調査時点では問題が顕在化していない箇所については、見落とされる可能性があります。
③値引き交渉をされる可能性がある
そして、ホームインスペクションの結果、不具合が明らかになった場合、それを告知しなくてはなりません。そうなると買主さんに値引き交渉をされる可能性があります。他方、大きな修繕が必要な場合、買主さんが購入をためらう原因になる場合も!
ちなみに、買主さん側にもホームインスペクションを実施する権利があります。住宅購入は数千万円もする一生に一度あるかないかの大きな買い物であり、多少のコストを払っても安心を買いたいと考えるのは自然なこと。売主さんがホームインスペクションを「不要!」と考えても、買主さんが独自に実施されるケースは少なくありません。買主さんがホームインスペクションを希望する場合に備えて、住宅の状態を把握し、誠実に対応する準備を整えておくことが大切です。
まとめ
この記事では、「ホームインスペクションとは何なのか」、「もし大きな問題が発覚したらどうするのか」、これらについて詳しく解説してきました。
「ホームインスペクション」とは、「住宅の劣化や不具合を専門家が調査し、建物の現状を把握・評価し、その結果を報告するサービス」となります。特に中古住宅の売買において、買主さんが安心して購入を検討できる材料として注目されています。
具体的には以下のようなものを調査対象とします。
①外装部分:屋根・外壁・基礎など
②主要構造部分:柱や梁・耐震壁・床や天井など
③設備の動作:給排水設備・電気設備・ガス設備など
これらについて専門家さんによって、主に目視や計測をもって調査していきます。そして、2018年施行の改正宅地建物取引業法では、宅建業者さんに対して以下の点を義務付けました。
・媒介契約書面に依頼者の意向があれば、インスペクション業者の斡旋の旨を記載する
・買主への重要事項説明において、インスペクションを実施したのであれば、調査結果を伝える
・建物状況を契約者間で確認し、その内容を契約書に明記する
ただ、インスペクションの実施は、売主さんの義務ではありません!
では、なぜホームインスペクションは必要なのか。やる義務がないのにわざわざ実施するのは、以下のような効果をもたらすからです。
①トラブルの未然防止
②(買主への)信頼性の向上
③適正価格の設定
もしホームインスペクションを実施せずに、万が一にも不動産の売却後に買主さんから契約不適合責任(売却した物件が契約書に記載された内容に適合しない場合、売主が修繕費用や損害賠償を負う責任)を追求されてしまったら、追完請求・代金減額請求・損害賠償請求・契約解除請求を求められます。
また、そんな事態に備えるため「瑕疵担保保険」の活用があり、買主さんにとっては信頼性や安心感は向上し、売主さんにとっては万が一の金銭的負担が軽減されることになりますが、保険加入にはホームインスペクションを実施していることが必要事項になります。
とは言え、ホームインスペクションを実施すれば、デメリットも発生するのです。
①時間や費用がかかる
②調査結果がすべての瑕疵の発見を保証するものではない
③値引き交渉をされる可能性がある
ちなみに、買主さん側にもホームインスペクションを実施する権利があります。売主さんがホームインスペクションを「不要!」と考えても、買主さんが独自に実施されるケースは少なくありません。
そんなホームインスペクションの一般的な流れは、事前説明〜業者選定〜事前打合せ〜現地調査〜結果報告〜戦略策定となります。
ここでの注意点は「業者選定」で、媒介契約業者さんから斡旋・紹介してもらうことは、手間が減って楽な反面、公正中立な調査を行ってもらえない危険性があります。いわゆる「忖度」をされる可能性があり、不利益が生じるかもしれません。
そして、ホームインスペクションの費用相場は以下の通り。
・基本的な目視調査:5〜10万円程度
・屋根裏詳細調査:2〜5万円程度
・床下詳細調査:3〜7万円程度
・給排水管路検査:2〜5万円程度
一般的な一戸建て木造住宅なら合計10〜15万円が相場。また、劣化が著しい場合は耐震診断も必要になるケースもあり、別途15〜25万円程度かかります。
万が一、ホームインスペクション(及び耐震診断)によって不具合が発覚した場合の修繕費用は以下。
・主要部材の修繕:20~50万円程度
・地盤沈下の補修:50万~150万円程度
・雨漏り修繕:30万~80万円程度
これらは物件売却をする前に、その必要性をよく判断することが大切になります。
というワケで、ホームインスペクションを実施することによって、住宅売却後の契約不適合責任を負わされるリスクは大幅に軽減されますが、ホームインスペクションした結果、大きな問題が発覚してしまったら、問題を把握した時点で、売主には買主への告知義務が発生します。告知義務違反をすれば、大きなペナルティを負う可能性があります。
大きな問題が発覚した場合に選べる4つの選択肢。
①修繕してから売却する
メリット:買主に安心感を与え、契約不適合責任を回避しやすい
デメリット:修繕に時間と費用がかかり、売却価格でそのコストを回収できる保証がない
②仲介によって現状のまま売却する
メリット:修繕のための高額な費用の手出しがない
デメリット:告知義務違反に問われるリスクや、買主からの値引き交渉の材料になってしまう
③仲介によって古家付き土地として売却する
メリット:解体費用は不要で手出しの負担がない上、土地の価値のみでの判断になるので分かりやすい
デメリット:解体費用は売却価格に織り込まれるので、手残りが少ない
④買取によって現状のまま売却する
メリット:手間や時間や費用をかけずに、売却を急ぐ場合に最適であり、契約不適合責任にも問われにくくもなる
デメリット:市場価格よりも売却価格が低くなる
私たちエスエイアシストも不動産買取業者のひとつです。入居者がいる古いアパートや借地・底地、再建築不可など、困ってしまう“訳あり物件”のご相談を数々と解決してきた実績があります。ホームインスペクションで、もし大きな問題が発覚してしまう事態になったなら、ぜひ弊社サービスのご利用を検討してみてください。難しい物件をお持ちでお困りの方は、一度エスエイアシストにご相談を!お待ちしています。