独自のノウハウにより入居者がいる古いアパートや借地・底地、再建築不可など、他の不動産会社が取り扱いづらい“お困り物件”を解決に導いてきた不動産・用地開発のスペシャリスト、株式会社エスエイアシストがお届けする“お困り物件”コラム、第82回目は「老朽化アパートの立ち退き」です。
老朽化したアパートを所有していて、「入居者に立ち退きをお願いしたいけれど、どうすればいいの?」と悩んでいる方はいませんか?建物が古くなり住環境が悪化していく中で、安全面や周辺地域への影響、そして資産価値の低下も気になるところです。しかし、立ち退き交渉は非常に難しいものですし、どのように進めていけば良いのか分からないことが多いと思います。それを思うように進めるためには、法律への理解や入居者さんとの信頼関係が重要になってくるのが実情です。
この記事では、立ち退きをスムーズに進めるための具体的な方法や、交渉がうまくいかない時の対処法についても分かりやすく解説していきます。これによってトラブルを避けるとともに、安心して問題を解決できるヒントになれば幸いです。ぜひ、最後まで読んでいってくださいね!
老朽化アパートの立ち退きを入居者に依頼したい!
まず、老朽化アパートの立ち退きを進めるためには、「借地借家法」への理解が大切です。この法律では、多くの場合で入居者さん(賃借人)の立場が強くなっています。何故なら万が一、不当に立ち退きを迫られたときに、容易に住居を失わせないようにするため、その権利は強固に守らなくてはならないとされているからです。よって、オーナーさんは立ち退きに際して、正当な理由やその証拠を明示する必要がありますし、適切な説明をして入居者さんの同意と理解を得ることが求められます。しっかりと法律の範囲を守りつつ、誠意をもって立ち退きを依頼しなくてはなりません!
そんな立ち退きに対する「正当な理由」とは、以下のようなものがあります。
①アパート建物の老朽化
ひとつに、老朽化によって安全性が確保できない場合。
・構造上の問題:耐震性が不足し安全に使用できない
・設備の問題:電気配線や水道水、ガス管が劣化し火災や漏水の危険性がある
・衛生上の問題:排水管がつまりやすい、カビが発生しやすいなどの問題がある
これらの問題から、立ち退きを認めてもらうための証拠として、必要に応じて建築診断を受けて明示します。それは、もし裁判にまでなったとしても、正当な理由を示しやすくなるという利点もあります。
②老朽化したアパートを取り壊して再建築
つぎに、建物を取り壊さざるを得ない状況のため、再度建て直したい場合もあります。
・既存不適格物件:現建築基準法に適合しないことで、耐震基準を満たしていない
・大規模修繕のコスト:大規模修繕コストが再建築のコストを上回るケース
などが考えられます。
③再開発に伴う使用目的の変更
さらに、公共の福祉に資する事業による、再開発に伴う使用目的の変更ということもあります。
・都市計画事業:都市計画法に基づく大規模な再開発事業
・区画整理事業:土地利用の効率化を図るための事業
公式に周辺地域の合意形成された事業によるものがあります。
といったケースがある一方で、その立ち退きがオーナーさんのごく個人的な都合である場合には、非常に難しい交渉になるでしょう。立ち退きを依頼する以上、オーナーさんは建て替え等をする客観的な証拠を示す必要があります。また、入居者さんに対して誠意をもって対応し、円満な解決を目指さなくてはなりません。
基本的に「アパートの老朽化の事実」のみでは、正当な理由として認められないケースが多いことは、認識すべき点でしょう。そのため、その事情をよく汲んだ上で、相応な立ち退き料をもって正当な理由の補完をしなくてはならず、慎重な対応が求められます。
立ち退き料の考え方!
そして、実は立ち退き料というのは、法律では明確に定められていません。ここでは、立ち退き料を決める考え方を示します。
それは、「居住用なのか?事業用なのか?」でも大きな違いがあります。特に、事業用店舗について、移転によるリスクが非常に高いと言えます。いつも利用してくれるお客様への周知や影響、立地の違いによる客層の変化など。それによる入居者さんの精神的な不安に対する配慮を安易に軽んじると、関係性悪化によって立ち退き交渉どころではなくなりますので、注意が必要です。
・居住用:入居者が次の生活に向けた準備をしやすくすることが大切
・店舗:店頭営業の停止や移転による収益の損失を補償する必要
・事務所:店舗ほどの移転リスクはないものの、営業中断の損失を考慮
立ち退き料には、具体的に以下のような費用が含まれることが考えられます。もう一度言いますが、「立ち退き料は法律で明確に決まっていません!」ので、それぞれの事情や状況によって、ケースバイケースであることをご理解くださいね!
・新居の初期費用補助:敷金や礼金、新居に必要な初期費用を補助(30〜50万円程度)
・新家賃と現家賃の差額:家賃の差額を1〜3年間にわたって補助(家賃による)
・引越し費用:引っ越しに必要な費用を補助するが、荷物量やシーズンによる(10〜20万円程度)
・心理的負担に対する補償:住み慣れた場所を移る事による心理的負担に配慮(10〜50万円程度)
・営業損失に対する補償:営業中断や移転に伴う営業損失を補償(売上実績3〜6ヶ月程度)
ということで、一般の居住用の立ち退き料の相場は、総額で150〜200万円程度。事業用店舗なら数百万円〜1千万といった場合もあり得ます。
立ち退き交渉の注意点!
そんな立ち退き交渉する際の注意点をあげます。
①立ち退きの正当な理由を明示する
まず、立ち退きを依頼する正当な理由を明示し、入居者さんに納得してもらうことが大切です。先述通りの理由、アパートの老朽化について、具体的な内容を示して丁寧に説明します。例えば、アパートの耐震性が不足しているなら、そのリスクをしっかりと伝え、安全性の観点から立ち退きの必要性を理解してもらいます。もちろん、老朽化のみならず、他の事情と合わせて「立ち退いてほしい!」理由も積み上げます。それには、誠実で透明性のある対話が必要不可欠です。信頼関係を築くことができれば、入居者さんからの協力を得やすくなります。
②立ち退きまでの期間を十分に確保しておく
また、立ち退きまでの期間を十分に確保し、入居者さんの次の生活に向けた時間の余裕を作ることで、心理的な負担を軽減してトラブルを防ぎ、協力を得やすくなります。例えば、引越しのための物件探しや手続きには時間がかかることが多いので、早めの通知によって十分な準備期間を与えることが、入居者さんにとって安心材料になるでしょう。そして、オーナーさん自身も期間を設けることで、立ち退きの交渉も落ち着いて進めることができます。
③誠実な説明と柔軟な対応を心がける
さらに、入居者さんが抱える不安や疑問に対して、誠実に説明し柔軟に対応する姿勢が重要です。具体的には、入居者さんが新しい住居を見つけるのが難しい場合に、不動産業者さんと連携して物件の紹介を行うなど、実際的なサポートを提供することが効果的となります。そうして、入居者さんの不安に寄り添い、必要なサポートを提供することで、立ち退き交渉が円滑に進みます。特に高齢者や身体が不自由な入居者さんに対しては、それぞれ個別の事情に応じた支援を行うことが望まれます。
立ち退き交渉の具体的な進め方!
では、立ち退き交渉の具体的な進め方は以下のように進めていきます。
①立ち退き問題に詳しい専門家に相談する
はじめに着手すべきは、立ち退き問題に詳しい弁護士さんや不動産業者さんに相談するところから。実績からくる知識や、法的なサポートを受けることで、入居者さんとの立ち退き交渉をスムーズに進めることができます。また、弁護士さんを介することで、非弁行為(弁護士ではない者が報酬目的で代理人として交渉を行う違法行為)を避け、法的に正しい手続きを進めることが可能になります。
②賃貸契約終了の6ヶ月以上前には通知する
つぎに前述の通り、入居者さんに十分な準備期間を与えるために、賃貸契約終了の6ヶ月以上前には通知を行います。当然な話ですが、立ち退いてもらいたい直前に、「出ていってくれ!」と突然言われるようなことがあれば、不信感しか残らずに反発を買うことでしょう。それでは、うまくいくものも、うまくいきません。
③立ち退き料の交渉をする
その上で、立ち退き料の交渉をします。この交渉は、入居者さんに立ち退きを納得してもらうために、欠かせないステップです。入居者さんの事情を考慮して事前に準備し、要望に柔軟に対応する姿勢が大切になります。特に、高齢者さんや経済的に困難な状況にある方には、手厚い補償を行うことで、円満に立ち退きの同意を得られるように努めます。
④転居手続きのフォローや引っ越しの補助をする
さらに、金銭的な補償も大切ですが、物理的・心理的な負担を軽減するために、転居手続きのフォローや、引越し業者さんの手配、荷物の梱包作業の支援といった、引っ越しの補助も検討します。立ち退き交渉時に事前に入居者さんとの約束を交わしておけば、余計な不安を掛けずにすみ、信頼関係を維持できることが期待できます。
⑤入居者との合意書を取り交わす
そうして、双方が納得のいく立ち退き料や諸条件が決まったら、賃貸契約解除の合意書を取り交わし、正式な文書として残します。それは、「言った!」「言わない!」といったトラブルを起こさないためにも重要です。キッチリと合意した詳細が記載されていれば、安心して立ち退き期日を待つことができます。間違いなく退去したことが確認とれた段階で、立ち退き料を支払うことで手続きが完了となるワケです。
立ち退き交渉がうまくいかない時の対処法!
ただ、それらの立ち退き交渉が「どうしてもうまくいかない!」とそんな時は、どう対処していけばいいのでしょうか?その場合、調停や裁判の活用を検討します。
①調停による和解
まず、調停では中立的な立場の第三者である調停委員さんが間に入り、双方の主張を聞きながら和解を目指します。これは、入居者さんとの直接の対話が難航している場合に、有効な解決方法となります。第三者が入れば、一旦は感情的になってしまったとしても、冷静な対応に立ち戻ることもできようというもの。そして調停は裁判に比べて、時間や費用の負担が少なく、比較的柔軟な解決策を見出すことができることも特徴です。
②裁判を起こす
一方で裁判では、法的な判断を通じて立ち退きの可否が決定されます。調停でも解決が難しい場合には、裁判を起こすことが選択肢に上がることになります。立ち退きにより高い正当な理由があるのであれば、裁判所が強制的な立ち退きを命じることもあります。ただし、裁判では時間と費用がかかるため、最後の手段として考えるべきでしょう。もし裁判を起こすのであれば、それなりの正当性を示す証拠をしっかりと用意することが大切です。
③不動産買取を利用する
そしてもう一つ。立ち退き交渉が難航するなら、不動産買取を利用することも有効な解決策です。不動産買取では、一連の立ち退きへの準備や交渉を行う必要がなく、老朽化したアパートを現状のまま不動産買取業者さんに売却することができます。「この土地を手放したくない!」といった考えが無いのであれば、十分に選択の余地があるのではないでしょうか?であれば、入居者さんとのトラブルを避けながらアパートを処分できるため、精神的な負担は大幅に軽減されます!
具体的に不動産買取を利用するメリットは以下のようなものがあります!
・迅速な現金化:アパートの処分に時間を使うことなく、迅速に現金化できる
・修繕不要:老朽化したアパートを修繕することなく、現状のまま売却できる
・直接取引:買取業者に仲介手数料を払うことなく、取引コストを抑えられる
・法的リスク軽減:入居者とのトラブルリスクを負うことなく、安心して任せられる
・立ち退き交渉不要:煩わしい交渉の必要なく、あとは買取業者が対応してくれる
老朽化したアパートを売却することで得られた収益によって、自由な選択肢を持つことができますね!もし立ち退き交渉がうまくいかないことがあれば、ぜひ検討してみてください。
まとめ
今回の記事では、立ち退きをスムーズに進めるための具体的な方法や、交渉がうまくいかない時の対処法についても分かりやすく解説してきました。
まず、「借地借家法」では、不当に立ち退きを迫られ容易に住居を失わせないようにするため、多くの場合で入居者さん(賃借人)の立場が強いものとなります。よって、オーナーさんは立ち退きに際して、正当な理由やその証拠を明示し、適切な説明をして入居者さんの同意と理解を得ることが求められます。
そんな立ち退きに対する「正当な理由」とは、以下のようなものがあります。
①アパート建物の老朽化
②老朽化したアパートを取り壊して再建築
③再開発に伴う使用目的の変更
一方で、その立ち退きがオーナーさん都合である場合には、非常に難しい交渉になり、正当な理由の客観的な証拠を示す必要があります。基本的に「アパートの老朽化の事実」のみでは認められないケースが多いため、事情をよく汲んだ上で相応な立ち退き料をもって、正当な理由を補完する対応が求められます。
そして、立ち退き料というのは法律では明確に定められておらず、「居住用なのか?事業用なのか?」でも大きな違いがあります。特に、事業用店舗は移転によるリスクが非常に高いと言え、入居者さんの精神的な不安に対する配慮を軽んじることのないよう注意が必要です。
・居住用:入居者が次の生活に向けた準備をしやすくすることが大切
・店舗:店頭営業の停止や移転による収益の損失を補償する必要
・事務所:店舗ほどの移転リスクはないものの、営業中断の損失を考慮
立ち退き料には、具体的に以下のような費用が含まれることが考えられます。
・新居の初期費用補助:敷金や礼金、新居に必要な初期費用を補助(30〜50万円程度)
・新家賃と現家賃の差額:家賃の差額を1〜3年間にわたって補助(家賃による)
・引越し費用:引っ越しに必要な費用を補助するが、荷物量やシーズンによる(10〜20万円程度)
・心理的負担に対する補償:住み慣れた場所を移る事による心理的負担に配慮(10〜50万円程度)
・営業損失に対する補償:営業中断や移転に伴う営業損失を補償(売上実績3〜6ヶ月程度)
ということで、立ち退き料の相場として、一般居住用での相場は総額で150〜200万円程度。事業用店舗なら数百万円〜1千万といった場合もあり得ます。
そんな立ち退き交渉する際の注意点をあげます。
①立ち退きの正当な理由を明示する
②立ち退きまでの期間を十分に確保しておく
③誠実な説明と柔軟な対応を心がける
では、立ち退き交渉の具体的な進め方は以下のように進めていきます。
①立ち退き問題に詳しい専門家に相談する
②賃貸契約終了の6ヶ月以上前には通知する
③立ち退き料の交渉をする
④転居手続きのフォローや引っ越しの補助をする
⑤入居者との合意書を取り交わす
賃貸契約解除の合意書は、「言った!」「言わない!」といったトラブルを起こさないためにも重要であり、合意した詳細が記載されていれば、安心して期日を待つことができます。退去したことを確認し、立ち退き料を支払うことで手続きが完了となります。
ただ、それらの立ち退き交渉が「どうしてもうまくいかない!」時の対処法として、調停や裁判の活用を検討します。
①調停による和解
②裁判を起こす
③不動産買取を利用する
もし立ち退き交渉が難航するなら、不動産買取を利用することも有効な解決策であり、老朽化したアパートを現状のまま不動産買取業者さんに売却することができます。入居者さんとのトラブルを避けながらアパートを処分できるため、精神的な負担は大幅に軽減されます!
具体的に不動産買取を利用するメリットは以下。
・迅速な現金化
・修繕不要
・直接取引
・法的リスク軽減
・立ち退き交渉不要
老朽化したアパートを売却で得られた収益によって、自由な選択肢を持つことができるので、もし立ち退き交渉がうまくいかないことがあれば、ぜひ検討してみてください。
私たちエスエイアシストでは、入居者がいる古いアパートや借地・底地、再建築不可など、困ってしまう“訳あり物件”のご相談を数々と解決してきた実績があります。もし老朽化したアパートについて精神的に負担感がありましたら、ご無理はせずに一度エスエイアシストにご相談ください!お待ちしています。