
独自のノウハウにより、入居者がいる古いアパートや借地・底地、再建築不可物件など、他の不動産会社では取り扱いづらい「お困り物件」を解決に導いてきた、不動産・用地開発のスペシャリスト・株式会社エスエイアシストがお届けする「お困り物件コラム」。第153回目は「区分所有法改正」についてです。
築40年、50年と経ったマンションにお住まいの方や、そうした物件を相続された方にとって、「建物の寿命」という問題は、いつかは向き合わなければならないテーマかもしれません。
「外壁の傷みが目立ってきた」「給排水管の不具合が気になる」といった物理的な経年変化に加え、「修繕積立金が不足気味である」「居住者の高齢化で、今後の話し合いが少し不安だ」といった事情に頭を悩ませている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そのような状況のなか、2026年4月に「区分所有法」が改正されました。この法改正は、老朽化マンションの再生に向けたひとつの転換点と期待されています。ただ、制度が変わったからといって、すべての物件がすぐに再生できるとは限らないのが実情です。むしろ今後は、「建て替えを目指すか、あるいは別の形での住み替えを模索するか」という方向性をどう見定めていくかが、ひとつの鍵になりそうです。
本記事では、2026年の法改正のポイントを整理しながら、将来の「住まいとしての着地点」を考えるうえでのヒントをお伝えします。ぜひ最後までお付き合いくださいね。
2026年改正のポイント:建て替えの「ハードル」はどう変わったか
これまでのルールでは、マンションを建て替えるためには、所有者の「5分の4以上(80%)」という高い賛成割合が必要でした。この数字が、計画を進めるうえでの大きな壁となっていた側面があります。
たとえば、100戸あるマンションで21人の方が反対されたり、あるいは「連絡がつかない」状況があったりするだけで、建て替えの議論は止まってしまいます。特に近年は、空き家となって所有者と連絡が取れない住戸が増える傾向もあり、一部の住民の方が熱意を持って動かれても、なかなか全体の方針が定まらないというケースも少なくなかったようです。
今回の2026年改正では、こうした状況を少しでも前に進めるため、以下のような緩和措置が講じられました。
・賛成要件の引き下げ:耐震性不足などの課題を抱えるマンションにおいて、建て替え決議に必要な賛成割合が引き下げられました。
・不明者の除外:所在がわからない所有者を、決議の母数から除外して計算できる仕組みが整えられました。
これらの見直しにより、少数の反対意見や連絡の取れない方の存在によって「方針が決まらないまま建物の老朽化が進んでしまう」といった状況は、以前に比べれば回避しやすくなったと言えるかもしれません。
手続きの緩和と「資金」という現実
とはいえ、法律上の手続きが緩和されたからといって、そのままスムーズな建て替えに直結するかというと、そうとも言い切れない実情があります。現在のマンション市場には、法律とはまた別の「資金」という高い壁が存在しているからです。
かつてのマンション建て替えでは、「今よりも規模の大きな建物を建て、増えた分の部屋を新しく販売して建築費に充てる」という手法がよく見られました。しかし、現在の老朽化マンションの多くは、すでに法律で許容される上限に近い規模(容積率)で建てられていることが珍しくありません。つまり、建て替えても部屋数を増やすことが難しく、売却益で建築費をまかなうという見通しを立てるのが難しくなっています。
その場合、新しく建てるための費用の多くを、現在の住民の方々で負担せざるを得ないケースも出てきます。
さらに悩ましいのが、近年の建築コストの上昇です。2026年現在、資材価格や人件費の動向もあり、建て替えに伴う一戸あたりの自己負担額が数千万円規模になるという試算が出ることも少なくありません。
「これからの生活を考えると、多額のローンを組むのは現実的ではない」「それだけの費用がかかるなら、別の住まいへの住み替えを検討したい」
そのように感じられる方が増えるのも、ごく自然なことだと思われます。法律上は建て替えに向けた議論がしやすくなった一方で、費用面から建て替えへのステップを踏み出せないマンションも、今後は少なからず出てくるのではないでしょうか。
あなたのマンションはどちらの方向へ?
老朽化マンションと向き合うにあたっては、現在の状況を客観的に見つめ直してみることも大切かもしれません。以下のどちらのケースに近いか、一度整理してみるのもひとつの方法です。
【建て替えという選択肢が現実的になりやすいケース】
・立地条件に恵まれている:都心部や駅前など、建て替え後の資産価値が大きく見込めるエリアである。
・資金計画に無理がない:持ち出し費用が発生しても生活への影響が少なく、投資に見合う価値があると判断できる。
・容積率に余裕がある:以前の基準で建てられており、現在の基準に照らすと階数や部屋数を増やせる余地がある。
【早めの売却・手放しが選択肢に入ってきそうなケース】
・立地的な優位性が控えめ:郊外などで、建て替え後の価値上昇と建築費用のバランスを取るのが難しい。
・合意形成に時間がかかりそう:居住者間の意見の隔たりが大きく、議論が長期化する間に建物の傷みがさらに進んでしまう懸念がある。
・修繕積立金の不足が顕著:建て替えを議論する以前に、日常的な維持管理や修繕の見通しが立ちにくい状態にある。
建物の経年変化は待ってくれません。 判断の時期が延びるにつれて、建物の評価が下がってしまったり、想定外の修繕費用が発生したりする側面もあるため、少しずつでも将来の「安心できる選択」に向けて話し合っていくことが求められそうです。
まとめ
2026年の法改正は、建て替えに向けた「手続き」の面ではひとつの後押しとなりましたが、「費用」や「合意形成の難しさ」という本質的な課題をすべて解決してくれるわけではありません。むしろ、法改正をきっかけに話し合いが本格化したことで、意見の相違や資金面での厳しい現実に直面し、お疲れになってしまう方もいらっしゃるようです。
私たちエスエイアシストは、入居者がいる古いアパートや借地・底地、再建築不可物件など、扱いが難しい「お困り物件」のご相談を数多くサポートしてきました。「管理組合での話し合いに少し疲れてしまった」「多額の負担は難しいけれど、このまま古いマンションを持ち続けることにも不安を感じる」と感じている方こそ、ひとりで抱え込まず、まずは現状をお聞かせください。お客様の状況やご希望を踏まえ、無理のない出口プランを一緒に考えます。お困りの物件でお悩みの方は、ぜひエスエイアシストまでご相談ください。
【参考エビデンス・出典】
・法務省:マンションの建て替え等に関する区分所有法の改正
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00001.html
・国土交通省:マンション建替え円滑化法について
https://www.mlit.go.jp/jutaku_fr/tatemono_000008.html
・国土交通省:マンションの再生の円滑化に向けた制度の見直し
https://www.mlit.go.jp/report/press/house06_hh_000185.html
・一般財団法人マンション管理センター:マンションの建て替え実務ガイド
https://www.mankan.or.jp/



