
独自のノウハウにより、入居者がいる古いアパートや借地・底地、再建築不可物件など、他の不動産会社では取り扱いづらい「お困り物件」を解決に導いてきた、不動産・用地開発のスペシャリスト・株式会社エスエイアシストがお届けする「お困り物件コラム」。第140回目は「敷地権がないマンションの売却」です。
相続したマンションについて調べていく中で、「この物件、敷地権がないですね」と言われ、「敷地権がないと売却できないのでは?」「このまま税金を払い続けるしかないの?」などと、疑問や不安を感じていませんか?結論から言えば、「敷地権がない=売れない」ということはありません。しかし、一般の物件とは異なり、対応を間違えると売却活動は長期化し、「相続税評価の見直し」による思わぬ負担を抱えるリスクがあります。
今回の記事では、「敷地権がないマンション」とはどういう状態なのかを整理したうえで、その背景とリスク、先送りせずに問題を解決するための現実的な対策をわかりやすく解説します。読んでいただければ、売却による出口が見えてきます。ぜひ最後までお付き合いください。
敷地権がないマンションとは?定義と仕組みを解説

はじめに「敷地権」を整理します。それは「マンションの区分所有物件において、区分所有権(各住戸の専有部分)と敷地利用権(建物が立つ土地を利用する権利・土地の共有持分など)とがセットで登記されたもの」です。これによって、土地と建物は分けて扱われることなく、権利関係が一体化して明確になることで、所有する部屋を売却するときに土地の権利も一緒に移転されます。
なぜ、現代においても「敷地権がない」マンションがあるのか?40年以上前の法律ではこの2点が別々であったため、理論上はそれぞれ取引できてしまう状態でした。それが、1983年の区分所有法改正で「分離処分禁止」の原則が設けられ、あわせて敷地権の登記制度が導入されましたが、それ以前のマンションなどでは今でも土地と建物の登記簿謄本が別々に存在するケースが残っています。
「敷地権がない(非敷地権)」とは以下のような状態です。
・登記簿に「敷地権」の表示がない
・部屋と土地が別々に登記されている
・借地権が絡む、または土地の共有持分が複雑で名義が古いまま
ここで大切なのは、「敷地権がない=売れない」ということではありません。ただし、一般的なマンションに比べて売却の難易度が上がり、かかる手間・時間が大きく変わります。
敷地権がないマンションは2系統!深刻度を見極める
敷地権なしを掘り下げると、大きく2系統に分かれます。この「見極め」が、その後の売却戦略を左右します。
①形式的な権利問題(A型)
ひとつに、単に登記が古いだけで実態は一体運用されている状態。
・昔の登記のまま、敷地権化(合体登記)だけされていない
・土地持分は整理されていて、権利関係は比較的安定している
・法律上の原則通り「部屋と土地はセット(分離処分禁止)」として扱われている
このタイプは、資料を揃えれば仲介でも進められる余地があります。
②深刻な権利不備(B型)
もうひとつは、借地権や複雑な共有関係が絡み、権利調整が追いついていない状態。
・土地の共有持分にズレがある、または名義が古いまま
・借地権や底地、第三者権利などが絡んでいる(関係者が多い)
・金融機関の担保評価が厳しく、買主側の住宅ローンが通りにくい
このタイプは、仲介での売却には時間や手間だけでなく、高度な専門知識が必要になります。
確認方法は、建物の登記簿謄本(全部事項証明書)の「表題部(専有部分の建物の表示)」を見てください。ここに「敷地権の表示」という欄がなければ(空欄であれば)、それは「敷地権がない」状態です。その場合、土地の登記簿謄本を別途取得し、そこに自分の持分が正しく記載されているかを確認する必要があります。
まずはこの「現状把握」が、解決の第一歩となります。
敷地権がないマンションの売却が難しい3つの理由!
では、「敷地権がないだけで売却が難しい…」と言われます。その理由について解説していきます。
一般に土地と建物がセットであることが当たり前で、多くのマンションは権利関係が明確です。そんな不動産市場において、それ以外は「訳あり物件」として避けられます。
①住宅ローンの審査が通りにくい
まず、敷地権がないマンションは、金融機関から見ると「担保評価がしづらい物件」と判断され、融資を渋る傾向があります。土地と建物を別々に登記する手間がかかる上、借地や権利者不一致などにより担保価値の保全が難しい、または権利関係の説明が複雑になるためです。買主さんが住宅ローンを利用できないのであれば、購入できるのは現金一括払いの層に限られてしまうワケです。
②不動産仲介業者が取り扱いを渋る
つぎに、敷地権がないマンションは不動産仲介業者にとっても取り扱いを渋るケースがあります。買主さんに対する説明責任が重く、調査や調整に時間がかかる以上に、契約後に権利関係の不備が見つかるリスクを恐れる業者もいるでしょう。
③管理規約や権利関係が整理されていない場合がある
そして、敷地権がないような築年数の古いマンションでは、「土地と建物の分離処分禁止の登記が未了」「管理組合でも土地権利の詳細を把握していない」などと、状況の整理ができていないこともあります。こうした情報不足は、買主さんにとって大きな不安材料となります。
これらのために、不動産知識のない買主さんは、
・将来的に土地の権利を失うのではないか?
・土地の共有関係で住民間トラブルに巻き込まれるのではないか?
・そもそも、住宅ローンが組めないのではないか?
など、何が資産を毀損するリスクか分からないことを敬遠され、検討リストから真っ先に外されてしまうことになります。
敷地権がないマンションの売却を先送りは「負債の先送り」?

とはいえ、「今は売れにくそうだから様子見で…」と、敷地権がないマンションの売却を先送りしてしまうと、問題が解消されるどころか負担が増えるケースが少なくありません。
①維持管理の負担が積み上がる
売却できない間も、
・管理費
・修繕積立金
・固定資産税
といった支出は止まりません。相続したものの住んでいないとしても、所有している限り維持管理の負担は積み上がります。
②今後も税制改正によって「売れないのに増税」の恐れ
また、「敷地権がないなら評価が低いのでは?」と思われがちですが、実際には2024年改正の相続税評価の新ルールでは、敷地権の有無だけでなく実態として居住用マンションかどうかが重視(登記簿上で敷地権と表示されていなくても影響する可能性がある)され、税負担が大幅に引き上げられています。今後も増税の傾向にあり、先送りにすれば実質的な損失が膨らみ「売れないのに増税」となる恐れがあります。
③時間が経つほど権利関係が複雑になる
そして、時間が経つほど土地の共有持分を持つ他の区分所有者さんに、相続が発生する率が高まります。結果、関係者が「ねずみ算式」に増えるでしょう。いざ売却しようと思った時には、面識のない大勢の承諾が必要で権利関係がより複雑になり、手続きや調整が不可能になる恐れすらあります。
④時間の経過で「正確な情報」が失われ取引交渉に影響する
さらに、時間の経過とともに、当時の経緯を知る関係者が減ることで、正確な「権利を証明する情報」が失われていきます。客観的な証拠が出せないと、買主さんから「将来のリスクが不明瞭だから安くして当然」という強い価格交渉の口実を与えてしまいます。情報の不足は資産価値を毀損することになります。
⑤管理不全や所在不明問題が絡むと負債化する
さいごに、マンション全体で所在不明の所有者さんが増えると、建替えや大規模修繕の合意形成が困難になります。建物が老朽化しても直せないスラム化が進めば、最悪は資産価値は限りなくゼロに…。放置状態が続き、行政から「管理不全」と見なされると、もはや「負の資産」と化してしまうのです。
何もせず先送りにすることは、資産価値を下げるだけでなく、将来の家族に解決不可能な負債を押し付ける結果に繋がりかねないため、早急な決断が必要です。
マンション敷地売却制度は売却の助けになる?
と、ここで最近よく聞かれる制度に「マンション敷地売却制度」があります。この制度について、過度な期待をするのは対応遅れを招きかねないので、線引きが大切になります。
「マンション敷地売却制度」とは、「耐震不足や老朽化による劣化(外壁の剥離・配管設備の腐食等)などの一定の要件を満たしたマンションにおいて、管理組合の合意のもとで敷地全体を一括売却できる仕組み(制度)」です。 ただし、
・総会での特別多数決議による合意形成(2026年4月法改正で緩和の動きがあるも依然としてハードルは高い)
・厳格な法的要件
が必要となります。つまり、マンション全体の話であり「自助努力で何とかできる」という話ではありません。
一方で、ここは「安心材料」としての位置づけに考えることもできます。
・専門の不動産業者であれば、購入後に権利整理や再生の出口戦略を描ける
・制度や再生策まで見据えるため、個人が売りづらい物件でも買える余地がある
そのため、この制度は「個人が使う制度」ではなく、「業者が買い取る理由の裏付け(補強)」として捉えるのが現実的です。
敷地権がないマンションの売却への具体的5ステップ!
それでは、実際に「敷地権なし」のマンションを抱えた所有者さんが、売却に向けて具体的にどのようなステップを踏むべきか、その対策を整理していきましょう。
①登記事項証明書と管理規約でA/B判定をする
まずは、自分の所有するマンションが、単に登記が遅れた「形式的な権利問題(A型)」か、解決困難な「深刻な権利不備(B型)」かを判別します。司法書士などの専門家に依頼して、土地持分と建物名義の整合性や分離処分禁止の有無を、登記事項証明書と管理規約を確認してもらい見極めましょう。
②区分所有権と敷地利用権をセットにする整理
つぎに、売却時に建物と土地の権利がバラバラにならないよう、権利の「一括性」を証明するための準備を進めます。具体的には、土地の共有持分が正しく自分の名義になっているか、不足している登記手続きはないかを洗い出します。特に、専有部分と敷地利用権ともに、同時決済・同時登記申請を漏れなく司法書士に手配しなければ、将来的な法的トラブルの火種になりかねないので注意してください。
③管理組合資料を出せる範囲で揃える
また、管理費・修繕積立金の状況に問題はないか、重要事項調査報告書に敷地権に関する特記事項がないかを確認します。過去の総会議事録(特に建替えや敷地売却に関する検討状況の有無)も含め、出せる範囲でも資料が揃っているほど、買主さんや業者の不安を払拭でき、不動産取引がスムーズに進みます。
④専門家と連携できる業者に相談する
そして、土地家屋調査士や司法書士などと連携し、権利整理を前提に動ける業者を選ぶことが重要です。一般的な不動産業者ではなく、「訳あり物件」の法務整理に長けた専門業者へ相談するのが賢明です。複雑な権利関係を読み解けるプロでなければ、適切な売却戦略は立てられません。
⑤「手取り額」で比較して仲介をするなら期限を決める
さらに、仲介による高い売却価格の理想に固執しないコトも大切です。売れるまでの維持費や税金のみならず、自身の手間も見えないコストです。これらを差し引いた「正味の手取り額」で考えましょう。もし、仲介で粘るなら「3ヶ月」といった期限を決め、それまでに売れなければ買取に切り替える潔さが必要です。
権利の不備を自力で直そうとせず、現在の状態を正当に評価し、解
権利関係が複雑なマンション売却で買取の価値は大きい
さいごに、敷地権がないマンションを売却によって、現状の問題解決をする具体的な出口についてお伝えします。結論から言えば、複雑な権利関係の解消が難しいB型寄りであれば、不動産買取(業者への直接売却)を利用する価値は大きいです。
そのメリットは以下の通り。
①複雑な権利整理をせずに早期売却できる
第一に、不動産買取であれば早期売却が期待できます。権利の整理が済んでいない状況でも、そのまま手放せます。専門業者は購入後に自社で権利調整や登記手続きを行うノウハウを持っているため、所有者さんが煩雑な作業に頭を悩ませる必要はありません。
②売却後の法的トラブルを回避できる可能性がある
第二に、売却後の法的トラブルを回避する契約も可能です。一般の買主さんに売る場合、後から「登記の不備」や「権利の制限」について責任を問われるリスク(契約不適合責任)がありますが、買取ならプロがリスクを承知で購入するため、その責任を免除(免責)する契約が一般的です。売った後に不安が残ることはありません。
③内覧等の対応不要で他の住人に知られずに確実な取引ができる
第三に、他の住人に知られずに不動産取引ができます。仲介で売ると、内覧や立会い、管理組合への確認などで、どうしても周囲の目が気になる場面があります。対して買取なら、不特定多数の人への内覧対応も不要で、プライバシーを守りながら確実に売却活動を負担感なく終えられます。
もちろん、不動産仲介で売却を成功させられるなら、より高い売却価格を望むことも可能です。「売れるか分からない」「家族に迷惑をかけたくない」「手続きが不安」と、そう感じているなら専門の買取業者に「権利関係の整理込みでそのまま買取できるか」を相談してみてください。それが、肩の荷を下ろす最初の一歩になります。
まとめ
今回の記事では、「敷地権がないマンション」の売却について、先送りせずに問題を解決するための現実的な対策をわかりやすく解説してきました。
はじめに、「敷地権」とは「マンションの区分所有物件において、区分所有権(各住戸の専有部分)と敷地利用権(建物が立つ土地を利用する権利・土地の共有持分など)とがセットで登記されたもの」であり、所有する部屋を売却するときに土地の権利も一体として移転されます。
1983年の区分所有法改正(「分離処分禁止」原則の登記制度が導入)以前からあるマンションにおいては、今でも土地と建物の登記簿謄本が別々に存在しています。「敷地権がない(非敷地権)」状態とは、「登記簿に「敷地権」の表示がなく、部屋と土地が別々に登記され、借地権や土地の共有持分といった権利が複雑な状態です。
「敷地権がない=売れない」ではありませんが、一般的なマンションに比べて売却の難易度が上がり、かかる手間・時間が大きく変わります。
敷地権なしを掘り下げると、大きく2系統に分かれます。
①単に登記が古いだけで実態は一体運用されている「形式的な権利問題(A型)」
②借地権や複雑な共有関係が絡み、権利調整が追いついていない「深刻な権利不備(B型)」
とがあり、B型は仲介での売却には時間や手間だけでなく、高度な専門知識が必要になります。
では、敷地権がないマンションは売却が難しい、その理由について解説していきます。
①住宅ローンの審査が通りにくい
②不動産仲介業者が取り扱いを渋る
③管理規約や権利関係が整理されていない場合がある
これらのために、不動産知識のない買主さんは、何が資産を毀損するリスクか分からないことを嫌気し、検討リストから外されてしまいます。
とはいえ、売れにくいからと先送りしてしまうと、負担が増えるケースが少なくありません。
①維持管理の負担が積み上がる
②今後も税制改正によって「売れないのに増税」の恐れ
③時間が経つほど権利関係が複雑になる
④時間の経過で「正確な情報」が失われ取引交渉に影響する
⑤管理不全や所在不明問題が絡むと負債化する
何もせず先送りにすることは、資産価値を下げるだけでなく、将来の家族に負債を押し付けかねないため、早急な決断が必要です。
「マンション敷地売却制度」に過度な期待をするのは対応遅れになるので、線引きが大切になります。「耐震不足や老朽化による劣化(外壁の剥離・配管設備の腐食等)などの一定の要件を満たしたマンションにおいて、管理組合の合意のもとで敷地全体を一括売却できる仕組み」ですが、全体の話であり「自助努力で何とかできる」という話ではありません。
一方で、専門の不動産業者であれば、購入後に権利整理や再生の出口戦略を描けるため、個人が売りづらい物件でも買える余地があるとも言えます。「個人が使う制度」ではなく、「業者が買い取る理由の裏付け(補強)」として捉えるのが現実的です。
それでは、実際に「敷地権なし」のマンションの売却に向けた具体的な対策を整理していきましょう。
①登記事項証明書と管理規約でA/B判定をする
②区分所有権と敷地利用権をセットにする整理
③管理組合資料を出せる範囲で揃える
④専門家と連携できる業者に相談する
⑤「手取り額」で比較して仲介をするなら期限を決める
現在の状態を正当に評価し解決策を提示できるプロを見つけることが、売却への最短距離となります。
さいごに、敷地権がないマンションを売却するにあたり、複雑な権利関係の解消が難しいB型寄りであれば、不動産買取を利用する価値は大きいです。そのメリットは以下の通り。
①複雑な権利整理をせずに早期売却できる
②売却後の法的トラブルを回避できる可能性がある
③内覧等の対応不要で他の住人に知られずに確実な取引ができる
もちろん、不動産仲介でより高い売却価格を望むことも可能ですが、多くの不安を感じているなら、専門の買取業者に相談することが、肩の荷を下ろす最初の一歩になります。
私たちエスエイアシストは、入居者がいる古いアパートや借地・底地、再建築不可物件など、扱いが難しい「お困り物件」のご相談を数多くサポートしてきました。
「どこに相談すればいいか分からない」「家族に迷惑をかけたくない」と感じている方こそ、ひとりで抱え込まず、まずは現状をお聞かせください。お客様の状況やご希望を踏まえ、無理のない出口プランを一緒に考えます。お困りの物件でお悩みの方は、ぜひエスエイアシストまでご相談ください。
・敷地権/分離処分禁止(区分所有法の根拠) 建物の区分所有等に関する法律(上記ページ内で「分離処分の禁止」「敷地利用権」「敷地権」等の条文・用語を検索)



