
独自のノウハウにより入居者がいる古いアパートや借地・底地、再建築不可など、他の不動産会社が取り扱いづらい“お困り物件”を解決に導いてきた不動産・用地開発のスペシャリスト、株式会社エスエイアシストがお届けする“お困り物件”コラム、第132回目は「抵当権付き不動産の売却」です。
「住宅ローンが残ったままの不動産、どう売却すればいいか…」と悩んでいませんか?結論、抵当権が付いていても売却は可能です。ただし、売却代金で残りのローンを清算し、同じ日に抵当権を外す「同時決済」が一般的です。中には「親から相続した実家に抵当権が付いていた」という相談も多く、団信(住宅ローンの死亡保険)の保障範囲外であったり、追加のリフォームローンが別建てで残ったりなど、完済できないケースもあります。
今回の記事では、抵当権付き不動産を売却する基本的な仕組みと、相続についても触れつつ、売却益よりも債務が多いオーバーローン等の注意点についてもわかりやすく解説します。読み終えれば、安全に売却するための手順と、3つの選択肢が見えてくるハズです。ぜひ最後までお付き合いください。
「ローンが残っていても売却できる?」抵当権付き不動産の基礎知識!

まず、「抵当権(ていとうけん)」とは、「住宅ローンなどの借り入れの際に、金融機関がその不動産を担保に入れる権利」のことです。万が一、ローンの返済が滞ってしまった場合、金融機関はこの権利を使って不動産を差し押さえ、競売(けいばい)にかけて貸したお金を回収しようとします。
この抵当権が付いた状態の不動産は、買い手がそのリスクを負うため、事実上「抵当権を抹消(=担保を外す)」しなければ取引が成立しません。なぜなら、買い手さんからすれば、他人の借金の担保が付いた不動産を購入するリスクが高過ぎるからです。
では、ローンが残っていても売却はできるのでしょうか?
実際の不動産取引では、一般に売却代金をもらって精算する「同時決済」という方法が取られます。これは、物件の売却代金を得ると「同時」に、そのお金でローンの残債を一括返済し、抵当権の抹消手続きと所有権の移転手続きを司法書士立ち会いのもと、同日に行う仕組みです(ただし、オーバーローンでの売却には抵当権者である金融機関の事前の承諾が不可欠で、無断での所有者移転は契約違反となる可能性)。
これなら、売主さんは自己資金がなくてもローンを完済でき、買主さんも担保のない綺麗な状態で不動産を手に入れられます。
抵当権付き不動産の売却が「難しい」と言われる3つの理由!
そんな同時決済という仕組みがあるとは言え、抵当権付き不動産の売却には、「難しい」と言われるポイントがいくつか存在します。その理由を見ていきましょう。
①不動産売却益が残債を上回るとは限らない
その大前提として、抵当権を抹消するには「ローンの残債を全額返済(完済)すること」が必須なため、ローン残債を正確に把握する必要があります。その上で、不動産売買サイトや業者を通じて、所有不動産の売却相場を確認しますが、不動産売却益がローン残債を必ず上回るとは限りません。
また、その金額で売れると確約されているワケでもありません。もし、売却益よりもローン残債の方が多いオーバーローンの状態だとすれば、完済自体が困難になることがあります。
②買主にとってのリスク
この抵当権を抹消していない不動産を(完済できないオーバーローンであれ、自己資金で完済できる状態であれ)得ることは、買主さんにとってのリスク以外の何ものでもありません!
万が一、売主さんがローン返済を滞納した場合、抵当権が実行されて不動産は競売にかけられる可能性があり、買主さんはせっかく得た不動産を失うことになります。そもそも、抵当権付きの不動産は金融機関がローンを組むことを認めず、買主さんは購入資金を調達するのが不可能になります。
③相続が絡むと手続きが複雑化する
そして、抵当権付き不動産を「相続」することがあります。この場合、通常の売却手続きに加えて、相続に関連する作業が発生します。例えば、不動産の名義を亡くなった親から相続人へ変更する「相続登記」や、複数の相続人がいれば全員の合意(遺産分割協議)も必要になります。
さらに、ローン残債を遺産分割で引き継ぐと決めても、金融機関の承諾を得られなければ、他の相続人の返済義務が免除されないといった、債務継承の問題も伴います。相続財産の総額によっては、相続税も発生する場合があります。こうした手続きが複雑化すると、売却のハードルを上げてしまうワケです 。
この3点が重なると、準備不足のまま着手して「やり直し」や「想定外」が発生しがちです。
【要注意!】ローンが完済できない「オーバーローン」とは?
その中でも、抵当権付き不動産を売却する上で、最大の関門となるのが「オーバーローン(債務超過)」です。なぜ、このような事態に陥ってしまうのか、代表的な3つのケースを紹介します。
①不動産の資産価値が下落した
まず、不動産購入した当時よりも、不動産の資産価値が大きく下落してしまったケースです。例えば、不動産市況が悪くなったり、周辺の相場が相対的に下落したり、建物の老朽化が進んでしまったりすると、売却価格は下がります。
一方で、住宅ローンの元本返済が進んでいない、新築入居時の工事費用や手数料が高くついている等、その結果によって「売却価格 < ローン残債」というオーバーローン状態に陥ってしまうのです。
②住宅ローン以外の借入が担保にぶら下がっている
そして、見落としがちなのが住宅ローン以外の借入です。例えば、購入後にリフォームローンを追加で組んだり、カードローンや教育ローンなどを同じ不動産を担保(共同担保)にして借りていたりするケース。
この場合、住宅ローンだけを完済しても、他の借入が残っている限り、金融機関は原則として抵当権の抹消に応じてくれません。すべての借入を合計すると、売却益を上回ってしまうコトがあります。
③団信が「効かない」中での相続
さらに相続の場合、通常は亡くなった方が「団体信用生命保険(団信)」に加入していれば、保険金でローンが完済されるため、抵当権は問題なく抹消できます。
しかし、「そもそも任意の団信に加入していなかった」「保険料の滞納で失効していた」「別建てのリフォーム借り入れが対象外であった」などの理由で団信が機能しないケースがあります。この場合、ローンの返済義務はそのまま相続人に引き継がれるため、オーバーローン問題に直面する可能性があります。
このように、オーバーローンの状態は抵当権付き不動産の売却を、より難しいものにします。
抵当権と「根抵当権」の違いにも注意!

ときに、不動産の登記簿(登記事項証明書)を確認した際に、「抵当権」ではなく「根抵当権(ねていとうけん)」と記載されている場合があります(個人の住宅ローンでは稀)。この二つは似て非なるもので、根抵当権の方が、売却のハードルが上がることがあるため注意が必要です。その違いは以下。
①「抵当権」は1対1
通常の「抵当権」は、特定の借入(例:5,000万円の住宅ローン)と1対1で紐付いています。したがって、その5,000万円のローンを完済すれば、抵当権は抹消できます。非常にシンプルな仕組みです。
②「根抵当権」は1対「枠」
一方で、「根抵当権」は、特定の借入ではなく「極度額(きょくどがく)」と呼ばれる「利用限度額(枠)」に対して設定されます。例えば「極度額7,000万円」という枠が設定されていれば、その範囲内で繰り返し借りたり返したりが可能です。主に、事業をされている方が運転資金を借りる際に利用されるコトが多い担保です。
③根抵当権の注意点
この根抵当権が厄介なのは、一時的に残債がゼロになっても自動には消えず、元本を確定させ、枠(極度額)の範囲内で行われた借入をすべて完済しないと抹消できない点です。例えば、住宅ローンは完済していても、同じ枠で借りたリフォームローンや事業資金が残っていれば、根抵当権は外せません。
根抵当権が個人の住宅ローンで設定されるケースは稀ですが、特に相続が絡む場合、「相続開始から6ヶ月以内に所定の登記手続きを行わないと、根抵当権の元本が確定し、以後の再借入枠が使えなくなる」といった特殊なルールが存在します。
万が一、登記簿で「根抵当権」の文字を見つけたら、金融機関に借入の全容を確認した上で、専門家に相談するのが賢明といえます。
オーバーローン時の抵当権を抹消するための対策とは?
もし、売却価格よりもローン残債が多い「オーバーローン」状態になってしまった場合、抵当権を抹消するためには、不足分を穴埋めしなければなりません。そのための対策を3つご紹介します。
①自己資金を返済に充てる
最もシンプルなのは、ご自身の自己資金をローンの不足分に充てる方法です。例えば、売却価格が3,000万円、ローン残債が3,300万円だった場合のケース。不足する300万円(+売却諸費用)を現金で用意できれば、完済となり抵当権は抹消できます。ただし、まとまった資金力が必要です。
②住み替えローンを利用する
少し変化球ですが、もし売却後に新しい家を購入する(住み替える)予定があるなら、「住み替えローン」を利用できる場合があります。これは、新しい家の購入費用に、(上記の例で言えば)今回の売却で返済しきれなかったローン残債(300万円)を上乗せして借り入れできるローン商品です。ただし、借入額が大きくなるため、金融機関の審査は通常より厳しくなる傾向があります。
③任意売却を検討する
そして、「自己資金がなく、住み替えローンの審査も通らず、このままでは返済を滞納して競売にかけられる…」といった状況で検討するのが、「任意売却」。これは「完済は出来ないが競売よりはマシなので、この価格で売却させて」と債権者である金融機関と交渉し、合意を得て売却する方法です。
任意売却は、競売を避けるための最終手段の一つです。
抵当権付き不動産を売却する3つの選択肢!
ここまで見てきたように、抵当権付き不動産の売却は、ローンの残債状況によって取るべき選択肢が変わってきます。ご自身の状況に合わせて、3つの選択肢から検討しましょう。
①不動産仲介によって同時決済する
まず、ローンの残債よりも売却価格が上回るアンダーローン状態であれば、この「不動産仲介」での売却が基本。不動産仲介業者に依頼し、一般市場で買い手さんを探してもらいます。
できるだけ高く売れる可能性がある一方で、買い手さんが見つかるまで時間がかかる点がデメリットです。取引が決まれば、前述の「同時決済」で抵当権を抹消します。
②債権者の合意のもと任意売却する
つぎに、オーバーローン状態で、自己資金での穴埋めも難しい場合の選択肢が「任意売却」です。この方法は、債権者である金融機関との交渉が必須であり、競売よりは高い価格での売却が期待できます。ただし、売却後も残債務の返済義務は残ります。
また、専門知識と交渉力が求められるため、個人で進めるのは難しく、実績が豊富な不動産業者に依頼するのが一般的。
③不動産買取で早期解決する
さいごに、アンダーローンだが早期解決したい、あるいはオーバーローンだが任意売却を仲介業者を通して行う手間を避けたい、という場合に有効なのが「不動産買取」です。これは、不動産買取業者に、その不動産を直接買い取ってもらう方法です 。
一般の買い手さんを探す必要がないため、短期間(数日〜数週間程度)で売却が完了することが可能ですが、売却価格は仲介に比べて低くなりますし、オーバーローンの場合は任意売却として同様に、手続きや債権者である金融機関の合意が必要です。
「仲介」で売却活動が長引けば、その間の固定資産税や管理費はかかり続けますし、買い手さんが見つかってもローン審査(住宅ローン特約)などで契約が白紙に戻るリスクもあります。「任意売却」は、債権者との交渉が非常にシビアです。
その点、不動産買取での売却には、売主さんにとって大きなメリットがあります。
・買い手が業者であり、取引に確実性がある
・売却までのスピードが早く、すぐに現金化できる
・直接取引であり、仲介手数料がかからない場合が多い
・契約内容と違う欠陥等への責任(契約不適合責任)が免除されることが多い
・広く買い手を探さないので、売却活動が周囲に知られずに済む
抵当権の抹消手続きや、金融機関との調整も含めて相談に乗ってくれる業者も多く、売却の負担を大幅に減らすことが可能です。もし「早く手放してローン問題を解決したい」「面倒な手続きはプロに任せたい」と考えるなら、不動産買取は非常に有効な選択肢となります。
まとめ
今回の記事では、抵当権付き不動産を売却する仕組みと、相続についても触れつつ、オーバーローン等の注意点について解説してきました。
まず、「抵当権」とは、「住宅ローンなどの借り入れの際に、金融機関がその不動産を担保に入れる権利」のことで、返済が滞れば差押えや競売により回収されます。この抵当権が付いた状態の不動産は、買い手さんリスクが高過ぎて、事実上「抵当権を抹消(=担保を外す)」しなければ取引が成立しません。
ローンが残っている不動産取引では、金融機関の事前承諾の上で「同時決済」という方法が取られ、抵当権の抹消手続きが行われます。売主さんは自己資金がなくても完済でき、買主さんも他人の担保のない状態で不動産を手に入れられます。
抵当権付き不動産の売却には、「難しい」と言われるポイントが3つ。
①不動産売却益が残債を上回るとは限らない
②買主にとってのリスクは「資産を失う」「住宅ローンが通らない」
③相続が絡むと手続きが複雑化する
その中でも最大の関門となる「オーバーローン(債務超過)」という事態に陥ってしまうのか、3つの代表的なケースは以下。
①不動産の資産価値が下落した
②住宅ローン以外の借入が担保にぶら下がっている
③団信が「効かない」中での相続
ときに、不動産登記簿に「抵当権」ではなく「根抵当権(ねていとうけん)」と記載されている場合、根抵当権の方が売却のハードルが上がることがあり、その違いは以下。
①「抵当権」は1対1
②「根抵当権」は1対「枠(極度額)」
③根抵当権の注意点は、元本を確定させ、枠のすべてを完済しないと抹消できない
「オーバーローン」状態の場合に、抵当権を抹消するための対策は以下。
①自己資金を返済に充てる
②住み替えローンを利用する
③任意売却を検討する
抵当権付き不動産の売却は、ローンの残債状況によって取るべき3つの選択肢があります。
①不動産仲介によって同時決済する
②債権者の合意のもと任意売却する
③不動産買取で早期解決する
「仲介」では売却活動が長引けば固定費はかかり続け、「任意売却」では債権者との交渉が非常にシビアです。その点、不動産買取での売却にはメリットがあります。
・取引に確実性がある
・すぐに現金化できる
・仲介手数料がかからない場合が多い
・契約不適合責任が免除されることが多い
・売却活動が周囲に知られずに済む
金融機関との調整や手続きも含めて相談に乗ってくれる業者も多く、売却の負担を減らすことができる不動産買取は非常に有効な選択肢となります。
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