
独自のノウハウにより入居者がいる古いアパートや借地・底地、再建築不可など、他の不動産会社が取り扱いづらい“お困り物件”を解決に導いてきた不動産・用地開発のスペシャリスト、株式会社エスエイアシストがお届けする“お困り物件”コラム、第113回目は「無道路地の活用」です。
「相続したはいいけれど、どう扱えばいいのか分からない」「活用もできず固定資産税だけ払い続けるのはつらい」突然手にした物件が道路に接していない…、そんな無道路地を抱えた人から、そんな声がよく届きます。建物は新たに建てられず、需要も少なく、費用だけが出ていくのであれば、戸惑うのも当然です。しかし、接道義務という法的な壁を越えることができれば、無道路地でも活用することも可能です。
今回の記事では、「接道義務突破の完全ガイド」と銘打ち、接道義務の問題を解消して無道路地を活用するための道筋を示します。最後まで読んでもらえれば、活用から売却まで、負債に思えた物件であっても価値を生むルートが見えてきます。ぜひ、お付き合いください!
無道路地と接道義務の基本を押さえよう!

まず「無道路地」とは、「建築基準法上の道路に接していない、もしくは道路に接する部分が僅かな土地」のことです。建築基準法において建物を新たに建てるためには、その土地が「幅員4m以上の道路に2m以上接していなくてはならない(接道義務)」と決められていますが、無道路地はその条件を果たしておらず、活用するためには多くの問題があります。
その「接道義務」がある理由は、「災害時の避難経路の確保や、緊急車両(消防車や救急車など)の通行を妨げないため」にあります。
具体的に無道路地の例は以下。
・道路にまったく接していない土地
・道路との間に他者の土地があり、公道に出られない土地
・道路から奥へ幅が2m未満の細長い通路が続く旗竿地(はたざおち)
・接する道路が建築基準法上の道路ではない、私道や農道のみの土地
中でも、隣地を通らなければ道路に出ることのできない「袋地」の場合、周囲がすべて他人の土地で囲まれているため、敷地の出入りそのものが他人頼りに…。袋地を囲んでいる隣地を「囲繞地」といいますが、「囲繞地(いにょうち)通行権」によって隣地を通行すること自体は法律で守られています。しかし、ごく最小限の範囲のみであり、通行料が必要になることもあるとされています。
一方で、ある程度の自由のある「通行地役権」があり、その違いは「当事者間の契約によって登記簿に権利として記載でき、第三者にも主張可能」であることです。よって、分かりやすく言えば、「囲繞地通行権=最後の救済措置」、「通行地役権=契約で作る専用通路」と言い換えることができます。
このように、無道路地は多くの制限を抱えた土地といえます。
「無道路地は活用できない!?」3大お困りポイント!
そのため、多くの所有者さんが「無道路地が活用出来ない!?」と頭を抱えることになります。ここでは、無道路地における「3つの大きなお困りポイント」を、具体的に解説していきます。
①建物の再建築ができない
ひとつに、無道路地の最大の問題は、「新しく建物を建てられない」ということです。先述の通り、建築基準法における接道義務を果たしていないため、一般的に「再建築不可物件」に分類されます。たとえば、古い家を解体したら、もうその場所に新しい家は建てられず、ずっと更地(空き地)のままになる恐れがあります。
こうした制限があると、その土地の価値は大きく下がります。実際、同じエリアにある土地の相場と比べて、市場の傾向では6〜7割ほどの価格になってしまうことも珍しくありません。
②住宅ローンが通りにくい
つぎに、無道路地を活用するために建て替えようとしても、金融機関の融資は得づらい上、不動産売却でも買い手さんによる住宅ローンが通りにくくなります(もしくは、融資上限が低くなる)。金融機関は、「いざとなっても担保にならない土地=お金を回収できない」と考え、融資の審査が非常に厳しくなるのです。
そのため、購入できる層は絞られ、結果として「なかなか売れない」もしくは「再建築できない土地だから安くして」と値引きを求められるケースも多く、手元に残るお金が少なくなりがちです。
③隣地所有者との交渉が必要である
そして、四方を他人の土地に囲まれている土地である「袋地」の場合、外へ出るための隣地所有者さんとの交渉が必要になります。厄介なのは、隣地所有者さんにとっては通行する土地の活用がしにくいことで、心情的なトラブルに発展しやすいことにあります。
ときには、ただ囲繞地通行権を主張するより、通行地役権の設定による客観的な取り決めが重要になるかもしれません。
以上のように、無道路地は「建てられない」「売りにくい」「交渉が大変」と、三重の悩みを抱えがちです。
「4号特例」の縮小も追い打ちをかける?
もともと無道路地のように、建築基準法上の道路に接していない土地は、新しく建物を建てたり、大規模改修したりすることが原則として認められていません。この理由は、建築確認申請において「接道義務」を果たしていないと、そもそも審査の土俵にすら乗らないためです。
そうしたなかで、2025年4月の法改正により、「4号特例」と呼ばれていた小規模木造住宅の建築確認を一部簡略化する制度が縮小されました。これらは建築確認のうち「構造や防火性能に関する審査」が省略されており、比較的手軽に改修などができる状況でした。
ところが今回の改正により、今後は以下のような対応が必要になります
・木造住宅でも大規模改修を行うには建築確認申請が省略できなくなる
・審査では現行の耐震基準・耐火基準をクリアする必要
・耐火や耐震性能を上げるために大掛かりで高額な工事が求められる
・設計図面の提出や法的な条件の確認も不可欠となる
そして、ここで最大の壁になるのが「接道義務」です。再建築不可物件である以上、そもそも建築確認申請自体が通りません。つまり、これまでは簡略化されていた改修のハードルが一気に高くなるだけでなく、「やりたくてもできない」状況がより明確になるんです。
今回の「4号特例」の縮小は、もともと活用が難しかった無道路地に対して、さらなる追い打ちをかける制度変更であることは間違いなさそうです。
無道路地の建物を放置すれば資産価値が大きく下がる?

そんな無道路地を放置してしまうと、時間の経過とともに資産価値が大きく下がってしまうリスクがあります。使い道が限られ、管理もしづらいため、ただ所有しているだけでも将来的にさまざまな問題に発展する可能性があるんです。
①建物の使用価値すら失う
まず、活用できず誰も住んでいない家は、あっという間に傷んでいきます。特に、無道路地のように手入れしにくい場所では、そのスピードがより早まります。
たとえば、雨漏りやシロアリの被害、カビの発生などが起こると、家としての機能はどんどん失われていきます。そうなると人に貸すこともできず、住むにも修繕費が高くつき、使用価値すら失ってしまいます。
②管理コストや税金が増大する
また、無道路地は再建築ができないため、解体してしまうと「住宅用地特例」が外れて固定資産税が6倍に跳ね上がる恐れがあります。ただ、解体せずとも放置すれば、管理不足が顕著と行政から「管理不全空き家」に指定され、指導対象とされる可能性も。それを防ぐにも管理コストが毎年かかるため、何もしない状態がもっとも家計を圧迫することになります。
③建物の老朽化によるリスク
そして、さらに老朽化が進んだ空き家を放置すると、台風や地震などで倒壊し、周囲に被害を与えた場合、損害賠償責任を問われる可能性があります。もし行政から著しく危険な状態と判断されれば「特定空き家」に指定され、過料(罰金)や行政代執行による強制解体、その費用請求といった重いペナルティも!放置によるリスクは想像以上に深刻です。
無道路地物件の所有者さんとしては、これを機に「本当にこのままでよいのか?」を見直す必要があるかもしれません。
価値を生む接道義務突破の完全ガイド!
ただ、あきらめる必要はありません。次のような方法で接道義務を突破すれば、価値を生み出し活用の可能性を広げることができます。
①隣地の一部を購入・等価交換する
もっとも根本的な解決方法は、「隣地を一部買い取る」「自分の土地と隣地の一部を交換する(等価交換)」といった手段です。これにより、自分の土地が建築基準法上の道路に2m以上接するようになれば、晴れて接道義務を満たすことができます!もちろん、隣地所有者さんの協力が必要不可欠なため、日頃の関係構築や交渉が重要になります。
②通行地役権の設定や賃貸借契約をする
もし、隣地の一部を手に入れることが難しい場合には、「通行地役権」の設定や「通行部分の賃貸借契約」によって、特定行政庁からの「43条2項2号許可(ただし書き許可)」の特例許可の申請を可能にし、建築確認に必要な接道要件を満たすための道を確保できる場合があります。これは、行政との協議や隣地所有者さんの同意を得て、道路が都市計画上支障がないと認められるかどうかも重要なポイントです。ただし、あくまでも例外規定であり、必ずしも許可が得られるワケではないので注意!
③みなし道路やセットバックで許認可を受ける
そして、たとえ接しているのが私道であっても、行政により「42条2項道路(みなし道路)」として活用することで、接道義務を満たせる場合があります。この方法は、将来的に建物を再建築する際には、「セットバック(道路の境界を後退させる)」で前面道路幅を広げることが義務付けられることになります。それによって、前面道路の幅が広がり、より安全な街並み形成に寄与します。これらは行政との丁寧な協議を重ねることが必要です。
制度や仕組みを正しく使えば、活用の道は十分開けます。
無道路地を売却するための出口戦略!
とは言え、「無道路地を手放したい!」と考えることもあるでしょう。その場合、以下のような現実的な出口戦略があります。
①隣地所有者に売却する
まず有力なのが、隣地所有者さんへの売却です。隣接地を所有する人にとっては、「土地を一体的に利用できる」「広い土地として価値が上がる」などのメリットがあり、比較的スムーズに話が進むことがあります。特に、先方が建て替え等の利用を考えている場合には、購入に前向きになるケースもあります。
②再建築可能にして売却する
先述したような方法で「再建築可能な土地」に生まれ変わらせることができれば、土地としての価値は格段に上がります。新築できるか否かで市場価格が大きく変わるため、手間はかかっても再建築の道筋をつける意味があるでしょう。それによって買い手の選択肢が広がれば、思った以上の高値での売却ができる可能性があります。
③不動産買取を利用して売却する
中でも、「もう面倒な交渉は無理」「とにかく早く現金化したい」ということであれば、不動産買取を利用した売却がオススメです。買取をしてくれる不動産業者さんは、その土地に付加価値を付けて再販するため、市場相場に比べて売却価格は安くなります。
しかし、無道路地のようなお困り物件であれば、そのメリットは大きいです。
・現状のまま買取:再建築不可物件でも、そのままの状態で買い取ってくれる
・負担が少ない:煩雑な手続きや隣地交渉なども代行してくれ、負担が大きく軽減
・欠陥があっても安心:売却後の責任が軽減され、トラブルにつながりにくい
特に、無道路地をはじめとする「再建築不可物件」の取り扱いに慣れた専門業者さんなら、スムーズに話が進みます。
まとめ
今回の記事では、「接道義務突破の完全ガイド」と銘打ち、接道義務の問題を解消して無道路地を活用するための道筋を解説しました。
まず「無道路地」とは、「建築基準法上の道路に接していない、もしくは道路に接する部分が僅かな土地」のことです。建築基準法における接道義務を果たしておらず、活用するためには多くの問題があります。
具体的に無道路地の例は以下。
・道路にまったく接していない土地
・道路との間に他者の土地があり、公道に出られない土地
・道路から奥へ幅が2m未満の細長い通路が続く旗竿地(はたざおち)
・接する道路が建築基準法上の道路ではない、私道や農道のみの土地
中でも「袋地」の場合、「囲繞地通行権」や「通行地役権」によって、土地を活用しなくてはならず、無道路地は多くの制限を抱えた土地といえます。
無道路地における「3つの大きなお困りポイント」は以下。
①建物の再建築ができない
②住宅ローンが通りにくい
③隣地所有者との交渉が必要である
以上のように、無道路地は「建てられない」「売りにくい」「交渉が大変」と、三重の悩みを抱えがちです。
そうしたなかで、2025年4月の法改正により、「4号特例」と呼ばれていた小規模木造住宅の建築確認を一部簡略化する制度が縮小されました。無道路地の大規模改修においては、接道義務を果たせない以上、そもそも建築確認申請自体が通らない可能性があります。
今回の「4号特例」の縮小は、もともと活用が難しかった無道路地に対して、さらなる追い打ちをかける制度変更であることは間違いなさそうです。
そんな無道路地を放置してしまうと、時間の経過とともに資産価値が大きく下がってしまうリスクがあります。
①建物の使用価値すら失う
②管理コストや税金が増大する
③建物の老朽化によるリスク
ただ、次のような方法で接道義務を突破すれば、価値を生み出し活用の可能性を広げることができます。
①隣地の一部を購入・等価交換する
②通行地役権の設定や賃貸借契約をする
③みなし道路やセットバックで許認可を受ける
とは言え、「無道路地を手放したい!」と考えるのなら、以下のような現実的な出口戦略があります。
①隣地所有者に売却する
②再建築可能にして売却する
③不動産買取を利用して売却する
買取は市場相場よりも売却価格は低くなりますが、無道路地のようなお困り物件であれば、そのメリットは大きいです。
・即現金化
・手間がかからない
・現状のまま買取
・負担が少ない
・欠陥があっても安心
特に、無道路地をはじめとする「再建築不可物件」の取り扱いに慣れた専門業者さんなら、スムーズに話が進みますので検討してみてくださいね!
私たちエスエイアシストも、そんな不動産買取業者のひとつです。入居者がいる古いアパートや借地・底地、今回の無道路地のような再建築不可など、困ってしまう“訳あり物件”のご相談を数々と解決してきた実績があります。ぜひ他社さんと比較して頂ければと思います。難しい物件をお持ちでお困りの方は、一度エスエイアシストにご相談ください!お待ちしています。
