独自のノウハウにより入居者がいる古いアパートや借地・底地、再建築不可など、他の不動産会社が取り扱いづらい“お困り物件”を解決に導いてきた不動産・用地開発のスペシャリスト、株式会社エスエイアシストがお届けする“お困り物件”コラム、第84回目は「建ぺい率・容積率オーバー物件の売却」です。
建ぺい率や容積率を超えている物件を売却しようと考えたとき、「買い手が見つからないのでは?」と不安を感じる人も多いでしょう。確かに、こうした物件を不動産取引する際には、問題が生じやすいものです。ただ、それで売却を諦めるのでは勿体ない!
この記事では、建ぺい率・容積率オーバー物件を売却するためのポイントと、具体的な対策について解説します。売却に向けてのハードルを乗り越え、安心して売却活動に取り組むことが出来るようになります。ぜひ最後まで読んでいってくださいね!
建ぺい率・容積率とは?
まず、そもそも「建ぺい率」「容積率」って言われても分かりづらい言葉ですよね。
①建ぺい率
ひとつ目に建ぺい率とは、「敷地面積に対する建築面積の割合のこと」を指します。もっと平たく言うと、「敷地全体の広さに対して、空から見た建物の広さがどれくらいの割合を占めるか(ちなみに建物から出っ張った庇などは1mまでは算入されません)」というもの。これは、建築基準法や都市計画法で定められており、地域や用途によって異なる制限があります。例えば、建ぺい率が70%で敷地面積が100㎡の場合、建築可能な面積は70㎡ということになります。
補足として、条件によっては緩和措置もあります。
・防火地域(火災防止のために特に厳しい規制のある地域)内の耐火建築物(コンクリート造など)は建ぺい率がプラス10%加算。
・敷地のうち二辺が道路に接する角地では、建ぺい率がプラス10%加算がある場合がある
・建ぺい率80%の防火地域(商業地域や近隣商業地域)内の耐火建築物は制限がかからない(日当たりの影響が少ない・土地の有効活用の観点から)。
②容積率
ふたつ目の容積率とは、「敷地面積に対する延べ床面積の割合のこと」で、延べ床面積とは「各階の床面積を合計したもの」です。こちらも法律で制限されており、例えば、容積率が80%で敷地面積が100㎡の場合、建物の延べ床面積は80㎡までとなります。もちろん、ここには建ぺい率も関係してくるので、もし仮に建ぺい率が50%で1階が50㎡なら2階は30㎡までとなり、条件次第で希望通りの延べ床面積が使えるとは限りません。
補足として、なぜ容積率の規制があるのかというと、「建物が大きくなる可能性→住む人が増える→極所的に人口が集中→住みにくくなる」といったリスクへの懸念があります。また、建ぺい率同様に容積率にも緩和措置があり、小屋裏(ロフト)や地下室、駐車場(駐輪場)といったものは、一部不算入や除外することができます。逆に前面道路が狭い場合は、より厳しい制限がある場合もあります。
こうした制限は、建物が密集する都市部で厳しいものが多くなり、地域の特性や都市計画に応じて設定されています。それには以下のような理由があります。
・防災:建物間の空間を確保することで、火災時の延焼を防ぐ
・住環境:採光や通風を良くする
・景観:圧迫感のない景観保護の観点
なぜ建ぺい率・容積率オーバーの建物があるのか?
その建ぺい率・容積率オーバーの状態とは、文字通り「許可された建築面積や延べ床面積を超えて建物が建てられている状態」を指します。このような物件を売却しようとすると、大きな問題を抱えることになります。
と、ここで思うのは「何故、そんな建物があるの?」と疑問を持ちますね。その原因は3つ。
①違法建築
まず、そもそも建築当初から法律を守らずに建てられた建物を「違法建築」といいます。正しく建築確認申請を行わずに建てたり、故意に図面を改ざんして申請内容と異なる仕様で建てられたりすることが原因で、建ぺい率や容積率を超えてしまうケースがあります。
②違法増築
つぎに、もともとの建物に対して、許可を得ずに増築を行う「違法増築」があります。例えば、家族が増えて住むスペースを広げたいといった理由から、許可なく部屋を増築したり、勝手に物置を追加したりすることで、結果的に違法状態になることがあります。
上記2つは、法律を守らず作られているので、悪質と判断されれば「建築物の除去や使用禁止、使用制限などの措置命令」が出されることもあり、従わないと「3年以下の懲役または300万円以下の罰金」に処せられます。また、売却する際には大きなハードルがあることになり、当然ですが難航します!
③既存不適格
さいごに、「既存不適格」です。建築当初は合法的に建てられた建物が、法律や条例の改正によって現在の基準に適合しなくなった状態を指します。この場合、もちろん違法建築ではありませんが、新たに建て替えたり増改築する際には、現行法に従う必要があります。
ただ、既存不適格では、罰則はありませんし、住み続けることには問題はありません。条件により緩和措置や、ときに近年の測量技術の向上や用途地域の見直しなどで、稀なことながら再調査すると基準に適合していたケースの可能性もあり得ます。
建ぺい率・容積率オーバー物件を売却する際の課題!
そんな建ぺい率・容積率オーバー物件をそのまま売却するためには、買い手さんに違法(もしくは既存不適格)物件であることを理解し、そのリスクを受け入れてもらう必要があるため、当然ながら売却活動は難航を余儀なくされます。その際の課題となるのは以下の通り。
①住宅ローン審査の難しさ
まず、大きな問題のひとつは、買い手さんが住宅ローンの審査に通りにくくなることです。建ぺい率・容積率オーバー物件は、たとえ違法ではなく既存不適格であっても、多くの金融機関が融資を渋る可能性が高くなります。物件の担保価値が著しく低いため、万が一の場合の債務回収が難しいからです。住宅ローンを利用できない場合、買い手さんにとって負担は大きく、物件の魅力が薄れてしまいます。
②建て替え時に規模縮小は避けられない
つぎに、現状で建ぺい率や容積率を超えている以上、建て替え時には現行の規制に従う必要があるため、建物の規模は縮小せざるを得ない点です。これは、買い手さんが将来建て替えを検討する際のリスクとなり、売却活動の障害になります。もしも現在の建物の規模自体が買い手さんの最適であった場合、将来の制約はネックです。
③買い手の不安感
また、建ぺい率・容積率オーバー物件が違法建築の場合、行政指導を受けてしまう可能性があるため、買い手さんにとっては余計な不安要素と言えるでしょう。当然、リスクの大きさから購入をためらうことになります。この不安感をどう払拭することができるかが、売却成功のカギに!
④売却価格への影響
さらに、建ぺい率・容積率オーバー物件は一般的に市場での評価は低くなり、売却価格への影響があります。買い手さんは将来的なリスクを考慮して、通常の同等の物件よりも値下げを要求されるハズです。売却価格は下る傾向であると割り切った売却活動が求められます。
⑤売却後の契約不適合責任リスク
さいごに、売却後に契約不適合責任(目的物が契約通りの内容でなかったときの売主責任)を問われるリスクがあります。買い手さんが建ぺい率・容積率オーバーの理由や内容、問題点に気付かないまま購入し、その後問題が発覚した場合、売り手さんは責任を追求される可能性があり、適切な対策を講じることが重要です。
建ぺい率・容積率オーバー物件を売却する際の知るべきポイント!
これらの課題を理解した上で、建ぺい率・容積率オーバー物件を売却する際に知るべきポイントは以下です。
①既存不適格か違法建築かを確認!
まずは、その建物が既存不適格物件なのか、違反建築物なのかを判断しなくてはなりません。それには、「検査済証」を確認するのが早いです。「検査済証が見つからない!」そんな時は、各自治体で「台帳記載事項証明書」を取得します。
②告知義務を果たすことが前提!
つぎに、建ぺい率・容積率オーバー物件の状況を、正確に売買契約書に落とし込み、正しく伝えることが不可欠です。この「告知義務」を果たすことが売却の大前提となります!違法建築ないし既存不適格である状況やリスクをきちんと説明し、買い手さんの理解を得ることが大切です。告知義務を怠れば、後々のトラブルに発展する可能性があるため、注意しなくてはなりません。
③売却価格は安くなる!
そして、再三お伝えした通り、売却価格は安くなります!買い手さんにとってリスクになるので、仕方のないことです。そのため、売却活動を始める前に、市場相場と比較して適切な価格設定を行うことが必要です。また、価格を低めに設定することで、買い手さんにとっての魅力的な選択肢として認識されることもあります。
建ぺい率・容積率オーバー物件を売却するための対策5つ!
では、実際に建ぺい率・容積率オーバー物件を売却するためには、以下の対策5つがあります。
①減築を行う
1つ目に、建ぺい率・容積率オーバー物件のオーバーしている部分を、取り壊して「減築」を行う対策です。減築を行うことで、法的リスクを回避して、売却をスムーズに進めることができます。ただ、費用も手間もかかるため、事前に見積もりを取るなどの慎重な判断が必要です。
②隣地を購入して敷地を拡大する
2つ目に、隣地を購入して敷地面積を広げることで、建ぺい率や容積率を遵守させることができます。この対策なら、建ぺい率・容積率オーバーの根本から法的な問題を解消し、売却しやすくなります。ただし、都合よく隣地の敷地に余裕があるとは限らず、購入には高額な費用がかかります。
上記2つは、高額な費用を捻出する必要がある上に、最終的な売却価格と釣り合うか、費用対効果を出さないと意味がありません。
③古家付き土地として売却する
3つ目に、建物自体に価値を見出すことは諦めて、「古家付き土地」として売却することも選択肢となります。あくまでも土地としての価値を重視する買い手さんにとって、建物の法的問題はそれほど大きな障害にはならないことがあります。この場合、建物を取り壊す前提となるので、適切な売却価格の設定がキモになります。
④買い手目線でのメリットを訴求する
4つ目に、建ぺい率・容積率オーバーであっても、買い手さんにとっての建物自体に何らかのメリットがある場合、その点を強く訴求することで売却を有利に進めることができます。たとえば、趣あるたてもので古民家カフェに改装して使いたいなど、具体的なメリットを提示できるのであれば、物件の価値を再認識させることも可能です。
⑤不動産買取を利用する
5つ目に、不動産仲介で一般の買い手さんを見つけることが難しいと判断するなら、不動産買取を利用するのも有効な選択肢です。売却価格は相場より安い買取価格になることは否めませんが、不動産買取業者さんのプロ目線で物件の価値を見出してくれます。再開発・再販目的で買い取ってもらえることも多く、売却がスムーズに進みます。
不動産買取を利用するメリットは以下の通り。
①現状のままで売却可能
まずは、お金と時間と手間をかけて減築や隣地購入せずとも、現状の建ぺい率・容積率オーバーのままで売却可能のため、余計なストレスを抱えることはありません。
②法的リスクの軽減
特に、違法建築の売却には法的リスクが伴いますが、不動産買取業者さんはそのリスクを引き受けてくれます。自ら物件調査もするため、売却後の契約不適合責任を負う可能性は低く、安心して売却できます。
③迅速な対応
そして、不動産買取業者さんとの直接取引なので、仲介手数料は不要であり、通常の売却活動よりも短期間で売却が完了します。できるだけ早く物件を現金化したい場合には、非常に有効な対策になります。
これらの対策を実行して、建ぺい率・容積率オーバー物件の売却活動が、少しでもスムーズかつ安心して進められることを願っています!
まとめ
この記事では、建ぺい率・容積率オーバー物件を売却するためのポイントと、具体的な対策について解説していきました。最後にまとめます!
「建ぺい率」とは、「敷地面積に対する建築面積の割合のこと」を指します。これは、建築基準法や都市計画法で定められており、地域や用途によって異なる制限があります。
「容積率」とは、「敷地面積に対する延べ床面積の割合のこと」で、延べ床面積とは「各階の床面積を合計したもの」です。ここには建ぺい率も関係し、条件次第で希望通りの延べ床面積が使えるとは限りません。
こうした制限は、建物が密集する都市部ではより厳しいもので、防災・住環境・景観の観点から地域の特性や都市計画に応じて設定されています。
その建ぺい率・容積率オーバーの状態とは、文字通り「許可された建築面積や延べ床面積を超えて建物が建てられている状態」を指します。そういった建物がある原因は3つ。
①違法建築:そもそも建築当初から法律を守らずに建てられた建物
②違法増築:もともとの建物に対して、許可を得ずに増築を行う
③既存不適格:建築当初は合法的に建てられた建物が、法律や条例の改正によって現在の基準に適合しなくなった状態
上2つにおいて悪質と判断されれば「建築物の除去や使用禁止、使用制限などの措置命令」が出されることもあり、従わないと「3年以下の懲役または300万円以下の罰金」に処せられますが、既存不適格には罰則はなく、住み続けることには問題はありません。
そんな建ぺい率・容積率オーバー物件をそのまま売却するには、買い手さんに違法(もしくは既存不適格)物件であることを理解してもらう必要があるため、売却活動は難航します。その際の課題となるのは以下の通り。
①住宅ローン審査の難しさ
②建て替え時に規模縮小は避けられない
③買い手の不安感
④売却価格への影響
⑤売却後の契約不適合責任リスク
これらの課題を理解した上で売却する際に知るべきポイントは以下。
①「検査済証」で既存不適格か違法建築かを確認!
②「告知義務」を果たすことを前提にトラブルを回避!
③買い手にとってリスクであり売却価格は安くなる!
では、実際に建ぺい率・容積率オーバー物件を売却するための対策5つ。
①減築を行う:オーバー部分を取り壊して対策
②隣地を購入して敷地を拡大する:隣地を購入して敷地面積を広げることで法を遵守
③古家付き土地として売却する:土地としての価値を重視する買い手に売却
④買い手目線でのメリットを訴求する:具体的なメリット提示で物件の価値を再認識してもらう
⑤不動産買取を利用する:売却価格は相場より安い買取になるもプロ目線で物件の価値を見出してもらえる
不動産買取を利用するメリットは以下の通り。
①現状のままで売却可能:お金と時間と手間をかけずにオーバーのままで売却可能
②法的リスクの軽減:リスクを引き受けてくれ売却後の契約不適合責任を負う可能性は低い
③迅速な対応:直接取引で仲介手数料は不要で通常の売却活動よりも短期間に物件を現金化できる
私たちエスエイアシストでは、入居者がいる古いアパートや借地・底地、再建築不可など、困ってしまう“訳あり物件”のご相談を数々と解決してきた実績があります。その中には法的に問題を抱えたものも多くあります。もし、ほかの不動産会社で難色を示されるような物件をお持ちの方であれば、ものは試しとぜひ一度エスエイアシストにご相談ください!お待ちしています。